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第330話 息子の異変(後編)
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「何してるって…そんなの、見ればわかるでしょ」
明夫を胸に抱いたまま、義母はまったく悪びれたふうもなく言い返す。
「こうすると、明夫ちゃん、すごく落ち着くの。前は神経質で、扱いにくい子だって思ってたけど、今は…」
「やめてください!」
私は強引に義母の腕から息子を取り返した。
おぞましさで吐きそうだった。
あり得ない。
いくら義母でも、こんなことをするなんて…。
それ以来、なるべく義母とのつき合いは避けてきたつもりだった。
けれど、しょせん、夫婦共働きの身。
残念ながら、完全に関係を断ち切ることはできなかった。
特に夫。
明夫に会いたいという義母の要求を断り切れなかった、ということもあるのだろう。
私に隠れて、夫が明夫をこっそりと義母に会わせていたのである。
私たち夫婦がそのことを否が応でも後悔する羽目に陥ったのは、それから10年ほど経ってからのことだった。
きっかけは、警察からの電話。
実家で、義母の死体が発見されたという。
駆けつけてみると、血まみれの義母の死体の脇には、10歳になる明夫が立っていた。
目の前で人が死んでいるというのに、口を動かし、何やらくちゃくちゃ噛んでいる。
「明夫、あんた、こんなところで何してるの?」
叱咤するようにたずねると、明夫がペッと口の中のものを手のひらの上に吐き出した。
それを見た私は、次の瞬間、背筋が凍るような悪寒に襲われて、思わず叫び出しそうになった。
上を向けた明夫の手のひらの中にあるものー。
干しぶどうのようなそれは、黒ずみ、萎びた、義母の片方の乳首だったのである。
明夫を胸に抱いたまま、義母はまったく悪びれたふうもなく言い返す。
「こうすると、明夫ちゃん、すごく落ち着くの。前は神経質で、扱いにくい子だって思ってたけど、今は…」
「やめてください!」
私は強引に義母の腕から息子を取り返した。
おぞましさで吐きそうだった。
あり得ない。
いくら義母でも、こんなことをするなんて…。
それ以来、なるべく義母とのつき合いは避けてきたつもりだった。
けれど、しょせん、夫婦共働きの身。
残念ながら、完全に関係を断ち切ることはできなかった。
特に夫。
明夫に会いたいという義母の要求を断り切れなかった、ということもあるのだろう。
私に隠れて、夫が明夫をこっそりと義母に会わせていたのである。
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きっかけは、警察からの電話。
実家で、義母の死体が発見されたという。
駆けつけてみると、血まみれの義母の死体の脇には、10歳になる明夫が立っていた。
目の前で人が死んでいるというのに、口を動かし、何やらくちゃくちゃ噛んでいる。
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叱咤するようにたずねると、明夫がペッと口の中のものを手のひらの上に吐き出した。
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