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第324話 ある日の出来事
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「姉ちゃん、姉ちゃん」
散歩していると、突然、後ろから声をかけっれた。
驚いて振り向くと、自転車にまたがった老人が、ニコニコ顔で何か差し出している。
「あげるよ」
知らないおじいさんだったけど、見るからに親切そう。
いつものことだった。
田舎に引っ越してきてから、よくものをもらう。
近所の人たちはほとんどお年寄りばかりなのだが、みんな優しいのだ。
会えば必ず畑で採れたばかりの野菜をくれる。
玉ねぎだったり、ニンジンだったり、じゃがいもだったり、キャベツだったり…。
だから、ここへ来てから食費がすごく安上がりになった。
おじいさんは右腕を突き出している。
その手からぶら下がっているのは、大きなレジ袋だ。
「あ、ありがとうございます」
反射的に受け取っていた。
持つと、意外に重い。
危うく取り落としそうになった。
「早く食べなよ。この季節、生ものは足が早いから」
言うまでもないことだけど、足が早いとは、腐りやすい、ということである。
なんせ、まだ梅雨が明けたばかりなのだ。
おじいさんと別れ、家に帰り、台所に立った。
なんだろう?
ドキドキしながら中身をまな板の上に出すと、それは首の所で綺麗に切断された老婆の頭部だった。
「うーん」
恨めしげにこちらを睨んでくる血まみれの顔を前に、腕組みしながら私は考え込んだ。
この食材は初めてだ。
おじいさんは早く食べろって言ったけどー。
これ…。
いったい、どうやって調理したらいいのだろう?
散歩していると、突然、後ろから声をかけっれた。
驚いて振り向くと、自転車にまたがった老人が、ニコニコ顔で何か差し出している。
「あげるよ」
知らないおじいさんだったけど、見るからに親切そう。
いつものことだった。
田舎に引っ越してきてから、よくものをもらう。
近所の人たちはほとんどお年寄りばかりなのだが、みんな優しいのだ。
会えば必ず畑で採れたばかりの野菜をくれる。
玉ねぎだったり、ニンジンだったり、じゃがいもだったり、キャベツだったり…。
だから、ここへ来てから食費がすごく安上がりになった。
おじいさんは右腕を突き出している。
その手からぶら下がっているのは、大きなレジ袋だ。
「あ、ありがとうございます」
反射的に受け取っていた。
持つと、意外に重い。
危うく取り落としそうになった。
「早く食べなよ。この季節、生ものは足が早いから」
言うまでもないことだけど、足が早いとは、腐りやすい、ということである。
なんせ、まだ梅雨が明けたばかりなのだ。
おじいさんと別れ、家に帰り、台所に立った。
なんだろう?
ドキドキしながら中身をまな板の上に出すと、それは首の所で綺麗に切断された老婆の頭部だった。
「うーん」
恨めしげにこちらを睨んでくる血まみれの顔を前に、腕組みしながら私は考え込んだ。
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おじいさんは早く食べろって言ったけどー。
これ…。
いったい、どうやって調理したらいいのだろう?
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