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第314話 離島怪異譚(22)
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黒光りする、いかにも鋼鉄製といった”それ”は、さながら椅子に座った巨人といったフォルムをしていた。
ただの巨人と違うのは、身体の両側面から肋骨が槍のように突き出ていることと、下顎が欠けていることだ。
どうやら患者はあの肋骨の檻で身体を拘束され、頭を巨人の顎の下に入れるということらしい。
アイアンメイデンー鋼鉄の処女。
その雰囲気は、いつかどこかで見た、そんな名前の中世ヨーロッパの拷問器具にそっくりだ。
嫌悪感で胃液が込み上げてきた。
歯を食いしばりながら、服を脱ぐ。
「全部ですよ、全部。全裸になってもらわないと」
下着姿になってためらっている私に、髑髏男が言う。
ギョロリとしたその目は完全に変質者のものだ。
私はさっき、この男が妊娠検査薬に付着した私の尿を舐めていたことを思い出し、危うく吐きそうになった。
大丈夫だろうか、と不安になる。
いくら緊急事態だからといって、こんな変態に身体の大事な部分を任せてよいものだろうか。
あるいは最初からこの男の見立てはでたらめで、単に私を身動きできなくしてレイプしようとしているのでは?
けれど、いつのまにか下腹の張りは無視し難いものになっていた。
下痢などとは明らかに異質の鈍痛が、身体の芯で疼いている。
その震源は、胃や腸ではなく、もっと深い所ー。
たとえば、子宮といったような、そんな深淵にあるような気がしてならないのだ。
私の身体の中で、何か異変が起こっている。
それはもう、疑いのない事実だった。
セーラー服のスカートの中から蛸の脚が生えた少女。
頭からかぶる仮装用のゴムマスクみたいに首から下がなくなって、皮だけがひれのように広がっていた野崎。
私もあんなふうになってしまうのだろうか。
嫌だ。
それだけは、絶対に。
だからここはぐっと我慢して、悪いものの種子を胎内から取り除いてもらうしかない。
いくら産科医が気色の悪い風貌の変態男だとしても…。
思い切ってブラジャーを取る。
「素晴らしい」
つんと上を向いた私の胸乳を見て髑髏男が感嘆の声を上げるが、1ミリもうれしくはない。
ショーツはクロッチ部分が変色して黄ばみ、見るに堪えないありさまだった。
昨夜の淫夢の際分泌された愛液と、体調不良からくるおりものとが混ざって布に沁みついているのだ。
髑髏男と魚面女に背を向けてわからないように脱いだつもりだったが、
「ああ、たまらなくいい匂いだ。それ、よかったらいただけませんか? 診察料、無料にしますから」
かがみこむ私の前に回り込み、髑髏男がとんでもないことを言い出した。
「君、近くのコンビニへ行って、新しいパンテイを買ってきてあげて。このお嬢さんに、いくらなんでも君のお古は似合わないだろうから」
「先生は相変わらず、お好きですねえ」
軽口を叩きながら魚面女が出ていくと、
「さあ、乗って。両足を大きく開いて、アソコを正面に向けてくださいね」
イヒイヒ笑いながら、髑髏男が拷問器具のほうへと私をエスコートした。
ただの巨人と違うのは、身体の両側面から肋骨が槍のように突き出ていることと、下顎が欠けていることだ。
どうやら患者はあの肋骨の檻で身体を拘束され、頭を巨人の顎の下に入れるということらしい。
アイアンメイデンー鋼鉄の処女。
その雰囲気は、いつかどこかで見た、そんな名前の中世ヨーロッパの拷問器具にそっくりだ。
嫌悪感で胃液が込み上げてきた。
歯を食いしばりながら、服を脱ぐ。
「全部ですよ、全部。全裸になってもらわないと」
下着姿になってためらっている私に、髑髏男が言う。
ギョロリとしたその目は完全に変質者のものだ。
私はさっき、この男が妊娠検査薬に付着した私の尿を舐めていたことを思い出し、危うく吐きそうになった。
大丈夫だろうか、と不安になる。
いくら緊急事態だからといって、こんな変態に身体の大事な部分を任せてよいものだろうか。
あるいは最初からこの男の見立てはでたらめで、単に私を身動きできなくしてレイプしようとしているのでは?
けれど、いつのまにか下腹の張りは無視し難いものになっていた。
下痢などとは明らかに異質の鈍痛が、身体の芯で疼いている。
その震源は、胃や腸ではなく、もっと深い所ー。
たとえば、子宮といったような、そんな深淵にあるような気がしてならないのだ。
私の身体の中で、何か異変が起こっている。
それはもう、疑いのない事実だった。
セーラー服のスカートの中から蛸の脚が生えた少女。
頭からかぶる仮装用のゴムマスクみたいに首から下がなくなって、皮だけがひれのように広がっていた野崎。
私もあんなふうになってしまうのだろうか。
嫌だ。
それだけは、絶対に。
だからここはぐっと我慢して、悪いものの種子を胎内から取り除いてもらうしかない。
いくら産科医が気色の悪い風貌の変態男だとしても…。
思い切ってブラジャーを取る。
「素晴らしい」
つんと上を向いた私の胸乳を見て髑髏男が感嘆の声を上げるが、1ミリもうれしくはない。
ショーツはクロッチ部分が変色して黄ばみ、見るに堪えないありさまだった。
昨夜の淫夢の際分泌された愛液と、体調不良からくるおりものとが混ざって布に沁みついているのだ。
髑髏男と魚面女に背を向けてわからないように脱いだつもりだったが、
「ああ、たまらなくいい匂いだ。それ、よかったらいただけませんか? 診察料、無料にしますから」
かがみこむ私の前に回り込み、髑髏男がとんでもないことを言い出した。
「君、近くのコンビニへ行って、新しいパンテイを買ってきてあげて。このお嬢さんに、いくらなんでも君のお古は似合わないだろうから」
「先生は相変わらず、お好きですねえ」
軽口を叩きながら魚面女が出ていくと、
「さあ、乗って。両足を大きく開いて、アソコを正面に向けてくださいね」
イヒイヒ笑いながら、髑髏男が拷問器具のほうへと私をエスコートした。
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