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第300話 死神のいる街(解決編)
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わわわ、どうしよう。
こんな時、私は本当に無力だ。
武器もないし、腕力もない。
路面に倒れた零の上にかがみこんだ四体の死神たち。
フードの蔭から現れたあれは?
違和感に目を凝らした、その瞬間だった。
死んだように動かなかった零が突然体を起こし、ライダースーツの胸元から何かを取り出して死神たちに向けた。
しゅうううううっ。
零の手に握られているのは、白い煙を噴出するスプレー缶だ。
あんなもの、いったい何の役に立つというのだろう?
が、効果は敵面だった。
悲鳴、というか、声にならぬ複数の波動が交差点をつんざきー。
次の瞬間、バサバサとマントを翻して、一斉に死神たちが逃げ出したのだ。
死にかけたカラスみたいに飛んだり跳ねたりしながら、近くの路地へと逃げ込んでいく。
「大丈夫?」
駈け寄った私に、ひっくり返ったバイクを顎で示して、零が言った。
「これ、レンタルだから、修理費、杏里のほうでお願いね」
「そ、それはいいけど…。で、その秘密兵器は、いったい何なの?」
「こんなの秘密兵器でもなんでもない。ほら」
零が放ってよこしたスプレー缶をあわててキャッチした私は、手元のそれを見て目を丸くした。
「え? なんで?」
「見ればわかる。こっち」
零が私を導いたのは、死神の一体が逃げ込んだ狭い路地だった。
突き当りが行き止まりのゴミ捨て場になっていて、そこに、居た。
棘だらけの六本の脚。
頭から突き出た二本の触角。
身体中を痙攣させて死に瀕しているのは、成人の男性ほどもある黒光りした巨大なゴキブリだ。
「死神の正体は、これ。人間に擬態した育ち過ぎのG。だから言ったでしょ。これはあたしの案件じゃないって」
しなやかな長い髪を背中に流し、どこか不機嫌そうな表情で零が言った。
彼女が使ったのは、業務用の強力殺虫剤。
今回に限り、外道退治の際に着る露出度高めの和風コスでなく、顔以外をすべて覆うボデイスーツを着ているのも、相手がある意味外道よりおぞましいGだったからだ。
「あとは保健所の仕事だね。あたしは帰って寝るから後始末よろしく」
抜群のプロポーションを誇示するかのように、大股に立ち去る零。
「ひえ~、勘弁してよォ」
死にかけの巨大ゴキブリとともに取り残された私は、自分の肩を抱いてそうぼやくしかなかった。
ー了ー
こんな時、私は本当に無力だ。
武器もないし、腕力もない。
路面に倒れた零の上にかがみこんだ四体の死神たち。
フードの蔭から現れたあれは?
違和感に目を凝らした、その瞬間だった。
死んだように動かなかった零が突然体を起こし、ライダースーツの胸元から何かを取り出して死神たちに向けた。
しゅうううううっ。
零の手に握られているのは、白い煙を噴出するスプレー缶だ。
あんなもの、いったい何の役に立つというのだろう?
が、効果は敵面だった。
悲鳴、というか、声にならぬ複数の波動が交差点をつんざきー。
次の瞬間、バサバサとマントを翻して、一斉に死神たちが逃げ出したのだ。
死にかけたカラスみたいに飛んだり跳ねたりしながら、近くの路地へと逃げ込んでいく。
「大丈夫?」
駈け寄った私に、ひっくり返ったバイクを顎で示して、零が言った。
「これ、レンタルだから、修理費、杏里のほうでお願いね」
「そ、それはいいけど…。で、その秘密兵器は、いったい何なの?」
「こんなの秘密兵器でもなんでもない。ほら」
零が放ってよこしたスプレー缶をあわててキャッチした私は、手元のそれを見て目を丸くした。
「え? なんで?」
「見ればわかる。こっち」
零が私を導いたのは、死神の一体が逃げ込んだ狭い路地だった。
突き当りが行き止まりのゴミ捨て場になっていて、そこに、居た。
棘だらけの六本の脚。
頭から突き出た二本の触角。
身体中を痙攣させて死に瀕しているのは、成人の男性ほどもある黒光りした巨大なゴキブリだ。
「死神の正体は、これ。人間に擬態した育ち過ぎのG。だから言ったでしょ。これはあたしの案件じゃないって」
しなやかな長い髪を背中に流し、どこか不機嫌そうな表情で零が言った。
彼女が使ったのは、業務用の強力殺虫剤。
今回に限り、外道退治の際に着る露出度高めの和風コスでなく、顔以外をすべて覆うボデイスーツを着ているのも、相手がある意味外道よりおぞましいGだったからだ。
「あとは保健所の仕事だね。あたしは帰って寝るから後始末よろしく」
抜群のプロポーションを誇示するかのように、大股に立ち去る零。
「ひえ~、勘弁してよォ」
死にかけの巨大ゴキブリとともに取り残された私は、自分の肩を抱いてそうぼやくしかなかった。
ー了ー
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