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第276話 W不倫
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「母と同居することにしたよ」
突然、夫が母親を連れてきた。
60代には見えない、気の強そうな美人である。
夫とは駆け落ち同然に結婚したので、会うのは初めてだった。
なのに、顔を合わせた瞬間、妙な感じがした。
その整った顔立ちに、どこか見覚えがあったのである。
向こうも同じだったようで、形のいい眉をわずかにひそめるのがわかった。
「どうして相談してくれなかったのよ」
「だって相談したら絶対反対するだろ」
その夜、義母が寝入った後、そう夫に詰め寄ったけれど、まったくとりつく島がなかった。
「いいだろ。部屋だって余ってるし」
余ってるといっても、中古の3LDKである。
ほとんど赤の他人といっていい義母と同居するのは窮屈なこと限りない。
案の定、義母は私には冷たかった。
起きるのが遅い、食事の味付けが濃い、掃除が雑、主婦のくせにゲームや動画配信に夢中。
やることなすことすべてにケチをつけられた。
1か月と経たないうちに、私はうんざりしてしまった。
不快なのは、それだけではなかった。
私が知らなかった夫のある性癖。
それが徐々に明らかになってきたのである。
夫は極度のマザコンだったのだ。
頻繁なボデイタッチから始まって、出勤時、帰宅時のキス。
食事は義母の手から食べさせてもらい、あまつさえ私の目を盗んでは時々風呂にも一緒に入るようになったのだ。
気持ち悪くて吐きそうだった。
離婚を決意し、決定的な証拠を得るために、寝室や居間に隠しカメラを設置した。
そうしてある日、私がパートで家を空けている間に、ついにそれは起こった。
深夜、録画を確認してみると、裸でベッドに横たわり、互いの身体を貪り合うふたりの姿が映っていたのである。
「なんですか? これは」
怒りのあまり、義母をたたき起こして、問い詰めた。
「近親相姦なんて、最低のクズのやることですよね」
「は?」
義母の美しい顔に怒りの表情が浮かんだ。
「あんただけには、それを言われる筋合いはないわね」
「どうしてですか?」
「相変わらず、記憶障害が残ってるみたいだけど」
噛んで含めるような口調で、義母が話し始めた。
「あんたはあの子の実の姉。あんたたちの結婚ごっこをやめさせるために、あたしはここに来たんだけど」
突然、夫が母親を連れてきた。
60代には見えない、気の強そうな美人である。
夫とは駆け落ち同然に結婚したので、会うのは初めてだった。
なのに、顔を合わせた瞬間、妙な感じがした。
その整った顔立ちに、どこか見覚えがあったのである。
向こうも同じだったようで、形のいい眉をわずかにひそめるのがわかった。
「どうして相談してくれなかったのよ」
「だって相談したら絶対反対するだろ」
その夜、義母が寝入った後、そう夫に詰め寄ったけれど、まったくとりつく島がなかった。
「いいだろ。部屋だって余ってるし」
余ってるといっても、中古の3LDKである。
ほとんど赤の他人といっていい義母と同居するのは窮屈なこと限りない。
案の定、義母は私には冷たかった。
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1か月と経たないうちに、私はうんざりしてしまった。
不快なのは、それだけではなかった。
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それが徐々に明らかになってきたのである。
夫は極度のマザコンだったのだ。
頻繁なボデイタッチから始まって、出勤時、帰宅時のキス。
食事は義母の手から食べさせてもらい、あまつさえ私の目を盗んでは時々風呂にも一緒に入るようになったのだ。
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深夜、録画を確認してみると、裸でベッドに横たわり、互いの身体を貪り合うふたりの姿が映っていたのである。
「なんですか? これは」
怒りのあまり、義母をたたき起こして、問い詰めた。
「近親相姦なんて、最低のクズのやることですよね」
「は?」
義母の美しい顔に怒りの表情が浮かんだ。
「あんただけには、それを言われる筋合いはないわね」
「どうしてですか?」
「相変わらず、記憶障害が残ってるみたいだけど」
噛んで含めるような口調で、義母が話し始めた。
「あんたはあの子の実の姉。あんたたちの結婚ごっこをやめさせるために、あたしはここに来たんだけど」
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