超短くても怖い話【ホラーショートショート集】

第274話 課題

　祖母がいなくなった。
　裏山に山菜を採りに行ったきり、帰ってこないのである。
　探しに行った祖父も、消息を絶った。
　大がかりな山狩りが行われたが、一週間たっても、結局、見つからないままだった。
　そんなある日、私は偶然、兄のスマホを見てしまった。
　そこに映っていたのは、奇妙なオブジェの画像である。
　枯れ枝に枯れ枝を接いだような複雑な物体が、白い壁を背景にして鎮座している。
「すごいだろ。俺、コンクールに入選したんだぜ」
　兄は芸術大学で現代アートとやらを専攻しているのだ。
「これってさ、じいじとばあばじゃないの？」
　祖父の木乃伊の口に、祖母の木乃伊の片足を突っ込み、オブジェ状に積み上げた。
　そうとしか思えない。
「はは、バレたか」
　照れくさそうに笑うと、兄はすぐに真顔になって、
「でも、内緒だぞ。わかるよな。口外したら、今度はおまえの…」