超短くても怖い話【ホラーショートショート集】

第261話 僕の妹飼育日記（25）

　僕が向かったのは、姉の部屋である。
　調教に必要なものは、すべてここにそろっているからだ。
　机の引き出しを探ると、すぐに見つかった。
　裁縫用の木綿糸。
　それから、布を裁断するのに使う、中型のハサミである。
　部屋を出ようとした時、ふと窓際のベッドが目に入った。
　姉は、和室にベッドを置いて、洋間のようにして使っていたのだ。
　一瞬、幻がベッドの上に浮かび上がった。
　全裸で絡み合う、ひと組の男女。
　1年前までの、僕と姉の姿である。
　あのただれた日々。
　始まりは、やはりきょうのような夏の暑い午後だった。
　汗と体液でぬめる生白い女体。
　その下に組み伏せられ、悶え、痙攣する少年の肢体…。
　首を大きく振ると、幻は消えた。
　裸の下半身で、ペニスが震えるのがわかった。
　ほかの男の許に逃げた姉。
　自分からしかけておいて、罪の重さに耐えきれなくなったのだ。
　だが、そんな姉を、僕は責めようとは思わない。
　数時間前、縁側で昼寝している水着姿の妹を目に留めた時、封印していた姉との情事がよみがえった。
　そしてそれと同時に、僕は決めたのだ。
　姉にされたことを、今度は僕がこいつにしてやればいい。
　それに耐えうるだけの身体に成長した、この僕の妹に…。

　小道具を手に広間に戻ると、バイブとローターの振動音に混じって、妹の喘ぎ声が聞こえてきた。
　妹は卓袱台の上に足を投げ出し、股間に両手でバイブを突っ込んでいた。
　かなり奥まで突っ込んだまま、両手で舟を漕ぐようにこねまわしている。
　卓袱台の天板には、妹の蜜壺から溢れた愛液が水たまりをつくっている。
　はあはあはあはあはあ…。
　盛んに喘ぎながら、時折、
　－お兄ちゃん、好きー
　－もっと、ちんちん、ちょうだいー
　そんなうわ言めいたことばを口走っているようだ。
「気持ち、いいか？」
　足音を忍ばせて近寄り、耳元でささやいてやる。
　妹がびくっと顔を上げて僕を見た。
「うん…でも、これ、機械だから」
　のたうつバイブに目を落とし、ぽつんと言った。
「お兄ちゃんのは、まだお預けだ。おまえが本当に心の底からほしくなるまでな」
「うん…」
「一度、アダルトグッズをはずしてやろう。次の段階に進むための、準備をする」
　ローターとバイブのスイッチを切り、脇に置く。
　ハサミを手にして。妹の水着の胸に近づけた。
「それ、お姉ちゃんの…」
「そうだ」
「お姉ちゃんのお部屋に行ってたの？」
「ああ」
「お姉ちゃんのお部屋には、何があるの？　お兄ちゃんと、お姉ちゃんって、まさか…」
　妹の顔に猜疑心の影がよぎった。
「すべてさ」
　僕は頬をひきつらせた。
「彼女は俺の師匠みたいなものだったから」