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第253話 その後の黄金仮面(前編)
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ーここはJR真砂駅西口に隣接するショッピングセンター1階フロアです。見ての通り、2階へのエスカレーター付近に多量の汚物がぶちまけられ、大変なことになっています。原因は、腸詰帝国の怪人と戦闘中に、我らがヒーロー黄金仮面が、体調不良からなのか、突然脱糞したことのようです。あまりの悪臭に帝国の怪人が窒息死したのは不幸中の幸いでしたが、SNS上では早くも黄金仮面に対する非難が殺到しています。ヒーローのくせにクソ過ぎる。これからはヤツのこと、黄土色仮面と呼ぼう! そんな声が渦巻いているようですー
ビルの側面の巨大モニターでニュースキャスターの女性が顔をしかめている。
その背後では、ボデイスーツの中に脱糞し、風船のように膨らむ僕の映像が大写しになっている。
映像は糞便の内圧に耐えられなくなったスーツが破裂し、ケツに開いた穴から黄土色の液体が噴出するところまで行くと、最初に戻る。
最初というのは、僕が鞭攻撃で腹部を打擲され、脱糞する瞬間である。
脱糞から噴出までの無限ループ。
最悪だった。
僕の惨状は、テレビ放送とSNSで、全国にライブ中継されているのである。
それは、お漏らしなどといった生易しいものではなかった。
超人的な力を備えたヒーローは、便の量も多い。
エネルギー補給のために常人の10倍は食べるから、排出される大小便も10倍だ。
だから出始めると止まらなくなる。
そういった弊害もあるほどだ。
どうやって家へ帰ったのか、覚えていない。
通行人たちの嫌悪の視線に耐えかねて、穴の開いたボデイスーツを途中で脱ぎ捨て、全裸で空を飛んだことだけは覚えている。
そうしてアパートの一室に帰るなり、僕はひきこもった。
もう世間へは二度と顔を出せない。
黄金仮面ならぬ、黄土色仮面か。
まあ、それもいいだろう。
素顔がバレていないのがせめてもの慰めだ。
腸詰帝国なんて、もうどうでもいい。
こんな世界、勝手に滅びてしまえ。
やんぬるかな。
勇者に不似合いなふてくされた根性が、僕の中に巣くっていた。
『走れメロス』の心境だった。
そうでありながら、脱糞するところを不特定多数の者に見られたという事実に、奇妙に性的興奮を覚える自分も居たのが、不思議といえば不思議だった。
あの時僕は確かに烈しく勃起していたのだ。
空を飛ぶ時、股間のアレが重さでメトロノームみたいに左右に揺れるほど。
もしや僕は、極めつけの変態なのだろうか…。
10日ほど経った頃のことである。
炎上も収まりかけたある日、僕のSNSに見知らぬ女性からDMが届いた。
スマホは見ないように放ってあったのだが、運命の導きだったのだろうか、その時だけ偶然、画面に浮かんだメッセージが目に入ってしまったのである。
ー突然のDM、お許しください。
黄金仮面様、この度のご不幸、ネットで拝見いたしました。
とても他人事とは思えず、心が痛かったです。
私は20代後半の、営業職に就くOLです。
実は私も、貴方と同様の苦い経験があります。
そのことで、ぜひ一度お会いしたいと思うのですが、ご都合、いかがでしょうかー
ビルの側面の巨大モニターでニュースキャスターの女性が顔をしかめている。
その背後では、ボデイスーツの中に脱糞し、風船のように膨らむ僕の映像が大写しになっている。
映像は糞便の内圧に耐えられなくなったスーツが破裂し、ケツに開いた穴から黄土色の液体が噴出するところまで行くと、最初に戻る。
最初というのは、僕が鞭攻撃で腹部を打擲され、脱糞する瞬間である。
脱糞から噴出までの無限ループ。
最悪だった。
僕の惨状は、テレビ放送とSNSで、全国にライブ中継されているのである。
それは、お漏らしなどといった生易しいものではなかった。
超人的な力を備えたヒーローは、便の量も多い。
エネルギー補給のために常人の10倍は食べるから、排出される大小便も10倍だ。
だから出始めると止まらなくなる。
そういった弊害もあるほどだ。
どうやって家へ帰ったのか、覚えていない。
通行人たちの嫌悪の視線に耐えかねて、穴の開いたボデイスーツを途中で脱ぎ捨て、全裸で空を飛んだことだけは覚えている。
そうしてアパートの一室に帰るなり、僕はひきこもった。
もう世間へは二度と顔を出せない。
黄金仮面ならぬ、黄土色仮面か。
まあ、それもいいだろう。
素顔がバレていないのがせめてもの慰めだ。
腸詰帝国なんて、もうどうでもいい。
こんな世界、勝手に滅びてしまえ。
やんぬるかな。
勇者に不似合いなふてくされた根性が、僕の中に巣くっていた。
『走れメロス』の心境だった。
そうでありながら、脱糞するところを不特定多数の者に見られたという事実に、奇妙に性的興奮を覚える自分も居たのが、不思議といえば不思議だった。
あの時僕は確かに烈しく勃起していたのだ。
空を飛ぶ時、股間のアレが重さでメトロノームみたいに左右に揺れるほど。
もしや僕は、極めつけの変態なのだろうか…。
10日ほど経った頃のことである。
炎上も収まりかけたある日、僕のSNSに見知らぬ女性からDMが届いた。
スマホは見ないように放ってあったのだが、運命の導きだったのだろうか、その時だけ偶然、画面に浮かんだメッセージが目に入ってしまったのである。
ー突然のDM、お許しください。
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とても他人事とは思えず、心が痛かったです。
私は20代後半の、営業職に就くOLです。
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そのことで、ぜひ一度お会いしたいと思うのですが、ご都合、いかがでしょうかー
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