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第203話 休憩室にて

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 お昼休み。
 食事の後、そのまま休憩室に居座ってだべっていると、ヨーコ先輩が悲鳴を上げた。
「きっもーっ! なにこれ?」
「どうしたんですか?」
 あたしたちは一斉に先輩が手にしているスマホをのぞきこんだ。
 画面には薄暗い部屋が映っていて、男がこちらに背を向けて立っている。
 やばいのは、そいつがズボンと下着をずり下ろしていて、下半身を露出していることだ。
 それだけではない。
 うしろを向いているからよくわからないが、右手が高速で動いている。
 どうやら露出した性器を扱いているらしい。
 そしてさらにー。
 小声でうめいてビクンと跳ね上がると、男は一瞬動きを止め、やがて右手で股間を押さえ、横を向いた。
 男の前にはテーブルがあり、ふたをはずしたカラフルな水筒がいくつか並んでいる。
 まず手前のピンクの水筒を左手に取ると、右手で押さえた股間に口を近づけた。
 男が握った右手を緩め、水筒の中に何かを注ぎ込む。
 何かー。
 ミルクみたいな、白っぽい液体だ。
 それを全部の水筒に入れ終えると、液体で汚れた指をひと舐めし、ズボンと下着を引き上げる。
 動画はそこで、途切れていた。
「えぐ…」
 誰かがつぶやいた。
「これって、完全にダメなやつだよね」
「水筒に入れたのって、もしかして…」
「まさかと思うけど、精液?」
「マジで犯罪じゃん」
「警察に知らせたほうがいいよ」
「ていうか、SNSならもう”特定班”が動いてるんじゃない?」
「だよね。あ、さっそくポスト来た」
「なになに、映ってる場所、見覚えがあります、だって」
「ヤマダ物産の本社配送部の控室、後ろのロッカーの傷からわかるって」
「ちょっと待って」
 先輩の声にみんな、凍りついた。
「それって、うちじゃない」
「てことは」
 みんな、おそるおそる目の前のテーブルに視線を向ける。
 そこには、フタをコップ代わりにお茶を注いだ水筒が並んでいる。
「げえっ」
 誰かが嘔吐した。
 蛙を踏み潰したような声が立て続けに響き渡り…。
 休憩室はたちまちゲロの海と化してしまった。
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