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第189話 うしろの正面
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バイト代が入ったので、親友のヤスオを誘って焼肉屋へ行った。
コスパがいいことで有名な、近所のこじんまりした店である。
店はそこそこ繁盛していて、店内には香ばしい焼き肉のたれの匂いが漂っていた。
「よーし、食うぞ!」
ビールで祝杯をあげ、早速焼きにかかった。
がー。
少し目を離したとたん、網の上にのせていた肉がなくなっていた。
「おい、俺の分まで食うなよ」
ヤスオに文句を言うと、
「おまえこそ、俺が焼いてた分まで、食べやがって」
目を三角にして、そう言い返してきた。
「馬鹿野郎、俺まだひと切れも食ってないぞ」
「俺だって」
「どういうことだよ」
「うーん」
店内にはテレビがついていて、ちょうどサッカーの試合の中継をやっている。
そっちに気をとられているうちに、誰かが焼けた肉をかすめ取ったとしか思えない。
「ひとつ実験してみよう」
俺は網の上に生肉を並べ直した。
「こうしておいて、わざと肉から目をそらすんだ」
「了解」
ふたりしてテレビのほうに目を向ける。
だが、今度は視界の隅に焼き肉を収めておくのを忘れない。
結果はすぐに出た。
何か黒いものが視界の隅を横切ったかと思うと、
「あっ!」
ヤスオが目をまん丸にして、俺の後ろを指差したのだ。
「ん?」
振り向いた俺は、奇怪な光景を目の当たりにして仰天しないではいられなかった。
すぐ後ろの席に髪の長い女性が座っているのだが、その髪の毛が触手のように動いて、箸と取り皿を持っている。
そして、後頭部に開いた大きな口に、俺たちの焼き肉を今しも放り込もうとしているのだ。
「よ、妖怪…」
ヤスオがうめくように言った。
そう。
俺たちの肉をかすめ取っていたのは、妖怪ふた口女だったのだ。
その1時間後、俺たち3人はラブホテルの一室にいた。
女が「お詫びの印に」と誘ってきたのである。
全裸になってシャワーを浴び、俺が女の前、ヤスオが女の後ろに立つ。
そしてー。
「行くわよ」
「あふっ」
「ひいっ」
二つの口に同時に咥えられ、俺たちは一気に涅槃の境地へと上り詰めるのだった。
コスパがいいことで有名な、近所のこじんまりした店である。
店はそこそこ繁盛していて、店内には香ばしい焼き肉のたれの匂いが漂っていた。
「よーし、食うぞ!」
ビールで祝杯をあげ、早速焼きにかかった。
がー。
少し目を離したとたん、網の上にのせていた肉がなくなっていた。
「おい、俺の分まで食うなよ」
ヤスオに文句を言うと、
「おまえこそ、俺が焼いてた分まで、食べやがって」
目を三角にして、そう言い返してきた。
「馬鹿野郎、俺まだひと切れも食ってないぞ」
「俺だって」
「どういうことだよ」
「うーん」
店内にはテレビがついていて、ちょうどサッカーの試合の中継をやっている。
そっちに気をとられているうちに、誰かが焼けた肉をかすめ取ったとしか思えない。
「ひとつ実験してみよう」
俺は網の上に生肉を並べ直した。
「こうしておいて、わざと肉から目をそらすんだ」
「了解」
ふたりしてテレビのほうに目を向ける。
だが、今度は視界の隅に焼き肉を収めておくのを忘れない。
結果はすぐに出た。
何か黒いものが視界の隅を横切ったかと思うと、
「あっ!」
ヤスオが目をまん丸にして、俺の後ろを指差したのだ。
「ん?」
振り向いた俺は、奇怪な光景を目の当たりにして仰天しないではいられなかった。
すぐ後ろの席に髪の長い女性が座っているのだが、その髪の毛が触手のように動いて、箸と取り皿を持っている。
そして、後頭部に開いた大きな口に、俺たちの焼き肉を今しも放り込もうとしているのだ。
「よ、妖怪…」
ヤスオがうめくように言った。
そう。
俺たちの肉をかすめ取っていたのは、妖怪ふた口女だったのだ。
その1時間後、俺たち3人はラブホテルの一室にいた。
女が「お詫びの印に」と誘ってきたのである。
全裸になってシャワーを浴び、俺が女の前、ヤスオが女の後ろに立つ。
そしてー。
「行くわよ」
「あふっ」
「ひいっ」
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