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第182話 離島怪異譚⑦

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 妙なものを見たせいか、ビール1杯でけっこう酔いが回ってしまったようだ。
 私は隣の部屋に野崎を追い返すと、浴衣に着替えるなり、はやばやと布団に倒れ込んだ。
 そして、夢を見た。
 いや、それが本当に夢だったのかどうか、今となっては自信がない。
 ともかくー。
 気がつくと、庭に面した引き戸が開いていた。
 格子に障子紙を貼った和風の引き戸が全開になっていて、海に面した庭から潮風が入ってくる。
 群青色の空にはお盆のような大きな月が浮かび、低い生垣に囲まれた狭い庭を照らしている。
 その庭で、何かがうごめいていた。
 銀色にぬめる、波のようなもの。
 それが、何本も何本も、縁側を這いあがってくる。
 月の光に照らされて銀色に光るそれは、ひどく気味の悪いフォルムをしていた。
 最初、
 蛇?
 かと思った。
 が、布団から状態だけ起こして目を凝らすと、どうやらその正体は、触手のようなものだとわかってきた。
 間違いない。
 蛸の脚である。
 とてつもなく長い蛸の脚が何本も縁側から這い上がって、私の部屋に入ってくる。
 ーだ、だれか!
 声を出そうとしたけど、喉からかすれた音が漏れただけだった。
 逃げようにも、金縛りに遭ったように体が動かない。
 わらわらと這い込んできた触手が掛け布団をめくり、私の下半身を露出させた。
 浴衣の前がはだけ、裸にショーツを履いただけの身体が丸見えになる。
「や、やめて」
 ようやく声が出た。
「こ、来ないで」
 必死で身体をずり上げようとした。
 が、無駄だった。
 金縛りが解けるより早く、両足首にそれぞれ触手が巻きついていた。
 股裂きされるように、ぎりぎりと両脚が左右に開いていく。
 無防備に晒されるショーツの股間。
 それを狙うかのように、別の触手が鎌首をもたげ、ゆらゆらと揺れている。
「や、やめて…お、お願い・・・」
 本能的な恐怖に、私は泣き声になった。
 高校生の頃、通学電車の中で痴漢に遭った時のおぞましさが、数百倍になって戻ってきていた。
 レイプされる…。
 しかも、相手は人間じゃない。
 薄闇に紛れて本体は見えないが、何か途方もなく巨大な、蛸の化け物に…。
 股間を狙う触手に気をとられていたのが間違いだった。
 ふと我に返ると、他の触手たちが四方八方から伸び出して、私の上半身から浴衣をはぎ取っていた。
 ブラをしていなかったことが悔やまれた。
 月光に照らされた胸元の双丘。
 大きくはないけど、それなりに整った形をしたふたつの乳房に、それぞれ触手が巻きついている。
 触手たちは私のおわん型の乳房を搾乳するかのように絞り上げると、頂点に突き出た一対の乳首に吸いついた。
 その瞬間ー。
 うずくような快感が脊髄を駆け上がり、私は無意識のうちにぶるっと身震いしていた。
 それが合図だった。
 股間を狙っていた触手が動きを再開したかと思うと、いきなりショーツの隙間にもぐり込んできた。
 いつの間にやら湿りを帯びていた陰部に異物がめり込む感触に、私は小さく叫び声を上げてしまったようだ。
 後のことは、ほとんど覚えていない。
 頭の中に薄桃色の霧がかかり、何も考えられなくなった。
 何かひどく熱いものが身体の芯からマグマのように湧き出し、全身を覆っていった。
 その涅槃の境地の中で、私は何度も何度も嬌声を上げながら海老のように跳ね、そのたびに烈しく達していたー・
 
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