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第155話 ブサメン

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 僕は学校一のブサメンだ。
 当然スクールカーストの最下層で、あだ名はチー牛。
 だから、授業中も無事ではいられない。
「早く死ねよ、カス」
 後ろの席のアヤカなどは、そうささやいてはしょっちゅうシャーペンで背中を刺してくる。
 でも、僕はめげたりはしない。
 なぜって、僕には秘密があるからだ。
 告白しよう。
 僕は普通の人間とは違う。
 僕の一族は、15歳になるまでは不細工だけど、15の誕生日を境に、生まれ変わることができるのだ。
 二年前に変身して、今は東京でモデルをやっている姉もそうだった。
 どうしようもなく哀れないじめられっ子が、ある日を境にアイドル顔負けの美少女に変貌する。
 姉さんは、僕に手本を示すように、それを実地でやってのけたのである。
 そして、僕にもその日がやってきた。
 数学の授業中、突然それは始まった。
 身体が固まって、動かない。
 背中が瘤のように盛り上がり、カッターシャツが破れていく。
「何こいつ、きっしょ!」
 アヤカが叫ぶのが聴こえた。
 けど僕は、その時すでに歓喜の絶頂にいた。
 やった!
 待ちに待った蛹化が始まったのだ!
 角質化した皮膚の下で肉体が融けていく。
 僕の身体はサナギの中で、いったんドロドロに溶けて、細胞レベルでの再構成される。
 おそらく、Kポップの少年アイドルにも負けないくらい、すごい美形に。
 羽化した時の周囲の反応が楽しみだった。
 特にアヤカ。
 アヤカには真っ先に僕の変わりようを見せつけてやり、今まで苛めたことを後悔させてやる!
 性的興奮にも似た涅槃の境地の中、陶然とそんなことを考えている、その時だった。
「ば、化け物!」
 悲鳴とともに、ふいに背中の真ん中あたりに痛みが走った。
 ぶちゅう。
 何かが漏れる音。
 まずい。
 全身から血の気が引いていくのがわかった。
 あろうことか、アヤカが、僕の背中にシャーペンを突き立ててきたのだ!
 ーや、やめろ!
 最悪の事態に気づいて、僕は叫ぼうとした。
 でも、半ば蛹と化し、声帯を失った僕は、声を出せなくなっていた。
 溶けた身体の成分が、角質化した表皮に空いた穴から漏れ出していく。

 数分後ー。
 椅子と机に挟まれ、しわしわに干乾びた蛹がひとつ、教室に残った。
 
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