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第143話 究極の目的
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奈衣は元猫である。
身体は人間の少女だが、猫の脳を移植されたからだ。
なぜそんなことになったのかというと、きっかけは3年前の交通事故。
10歳の時、父親が運転する車に乗っていて高速道路で多重衝突に巻き込まれ、脳を損傷してしまったのだ。
幸いなことに父親は軽傷で済み、即座に娘の手術に取りかかった。
これも幸運としか言いようがないのだが、たまたま彼は優秀な脳外科医だったのである。
彼ー斎藤泰三は、脳死状態に陥っていた娘を自分の勤務する病院に運び込み、極秘で手術をおこなった。
手術は成功し、奈衣は無事意識を取り戻したのだが、それからが大変だった。
なんせ、奈衣の頭蓋骨の中に入っているのは、泰三が拾ってきた野良猫の脳なのだ。
いくら動物の中でも賢いほうだとはいえ、所詮、猫である。
最初の1年は何を教えても「にゃあ」としか言わず、リハビリは困難を極めた。
それでも泰三があきらめなかったのは、この手術にある重要な目的があったからである。
そして、3年が経った。
泰三の涙ぐましい努力が実り、15歳の美少女に成長した奈衣は、ワンフレーズだけ人語を発することができるようになっていた。
それを見極め、自ら進んで改名したうえ、泰三は記者会見を開いた。
当然、記者たちから質問が飛びかった。
「浜田教授、教えてください」
ある記者が口火を切った。
「なぜイルカやチンパンジーではなく、猫の脳だったのですか?」
遅れてはならじと、他の記者たちも質問の矢を飛ばす。
「免疫機能の問題でしょうか?」
「それとも、ご自分のお子さんを、”猫娘”にしたかったとか?」
「手術と前後して改名されたのは、縁起かつぎか何かでしょうか?」
「違います」
泰三はにやりと笑った。
今だ。
この瞬間のために、私は困難な手術をやり遂げ、更に困難な猫人間のリハビリに成功したのだ。
私の究極の目的、それは…。
「奈衣、自己紹介しなさい」
満を持して、隣に座った娘に声をかける。
猫目の美少女が顔を上げ、そして言った。
何度も練習させられた台詞だった。
「わがはい、は、ねこ、である。なまえ、はまだ、ない」
身体は人間の少女だが、猫の脳を移植されたからだ。
なぜそんなことになったのかというと、きっかけは3年前の交通事故。
10歳の時、父親が運転する車に乗っていて高速道路で多重衝突に巻き込まれ、脳を損傷してしまったのだ。
幸いなことに父親は軽傷で済み、即座に娘の手術に取りかかった。
これも幸運としか言いようがないのだが、たまたま彼は優秀な脳外科医だったのである。
彼ー斎藤泰三は、脳死状態に陥っていた娘を自分の勤務する病院に運び込み、極秘で手術をおこなった。
手術は成功し、奈衣は無事意識を取り戻したのだが、それからが大変だった。
なんせ、奈衣の頭蓋骨の中に入っているのは、泰三が拾ってきた野良猫の脳なのだ。
いくら動物の中でも賢いほうだとはいえ、所詮、猫である。
最初の1年は何を教えても「にゃあ」としか言わず、リハビリは困難を極めた。
それでも泰三があきらめなかったのは、この手術にある重要な目的があったからである。
そして、3年が経った。
泰三の涙ぐましい努力が実り、15歳の美少女に成長した奈衣は、ワンフレーズだけ人語を発することができるようになっていた。
それを見極め、自ら進んで改名したうえ、泰三は記者会見を開いた。
当然、記者たちから質問が飛びかった。
「浜田教授、教えてください」
ある記者が口火を切った。
「なぜイルカやチンパンジーではなく、猫の脳だったのですか?」
遅れてはならじと、他の記者たちも質問の矢を飛ばす。
「免疫機能の問題でしょうか?」
「それとも、ご自分のお子さんを、”猫娘”にしたかったとか?」
「手術と前後して改名されたのは、縁起かつぎか何かでしょうか?」
「違います」
泰三はにやりと笑った。
今だ。
この瞬間のために、私は困難な手術をやり遂げ、更に困難な猫人間のリハビリに成功したのだ。
私の究極の目的、それは…。
「奈衣、自己紹介しなさい」
満を持して、隣に座った娘に声をかける。
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