超短くても怖い話【ホラーショートショート集】

戸影絵麻

文字の大きさ
上 下
125 / 458

第125話 究極ののぞき

しおりを挟む
 ニュースを見て、これだ、と思った。
 これぞ、究極の”のぞき”。
 この方法なら、女子高生のスカートの中が見放題じゃないか。
 そのニュースは、歩道際の側溝に潜んで通行人の女性たちの下着をスマホで盗撮していた若者が捕まった、というものだった。
 側溝の中に潜む、か。
 なるほど、そいつはいい。
 俺は感動した。
 気がつかなかった。
 そんな効率の良い窃視法があったとは。

 早速試してみることにした。
 家の近くにも女子中学生や女子高生の通学路があり、車道との間にはもちろん側溝も設置されている。
 むろん、先駆者のあの変態みたいに捕まっては元も子もないから、工夫が必要だ。
 早朝、古着屋で買った迷彩服を着て、スマホ片手に家を出ると、俺は問題の場所に向かった。
 思った通り、側溝を覆う金属の格子は清掃用に所々外してあり、そこから中に入ることが可能になっていた。
 周囲に人の気配がないことを確かめ、側溝の中に降り、仰向けに寝そべった。
 これも予想通り、秋という季節柄、側溝の底は落葉でいっぱいだ。
 俺はカモフラージュのために落葉をたっぷり身体の上にかけ、目元以外は見えないようにした。
 準備完了である。
 これであとは獲物が通りかかるのを待つだけだ。

 ほどなくして、少女たちの小鳥のさえずりみたいな笑い声が近づいてきた。
 来た!
 興奮で下半身がカッと熱くなる。
 ズボンの前のふくらみが枯葉を持ち上げて山を作った。
 軽やかな足音とともに、かわいらしい笑い声がどんどん大きくなる。
 来い、さあ、来い!
 俺は枯葉の下から両手だけを出して、胸の所でスマホを構えた。
 こんなチャンス、めったにない。
 当然、記録に残しておくべきだろう。
 俺の立場なら、男なら誰でも、きっとそう思うに違いない。
 頭の上のほうで、白いソックスとスニーカーの底が、ちらりと見えた、その時だった。
 ーきゃああっ!
 突然、少女たちの悲鳴が上がったかと思うと、
 キキキキッ!
 タイヤの軋むような音が鳴り響いた。
 な、なんだ?
 飛び起きようとして、俺はしたたかに側溝の鉄格子に額を打ち付けた。
「いててて…」
 涙にかすむ目に、信じられない光景が飛び込んできたのは、その時だ。
 タンクローリーが、倒れてくる。
 その回転するタンクが車体から外れ、中の生コンをまき散らしながら、俺の真上にー。
「ぎゃああああ! 助けてくれえ!」
 格子の隙間からなだれ込む熱いコンクリートに溺れながら、俺は喉も枯れよとばかりに絶叫した。

 
 
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

意味がわかると怖い話

邪神 白猫
ホラー
【意味がわかると怖い話】解説付き 基本的には読めば誰でも分かるお話になっていますが、たまに激ムズが混ざっています。 ※完結としますが、追加次第随時更新※ YouTubeにて、朗読始めました(*'ω'*) お休み前や何かの作業のお供に、耳から読書はいかがですか?📕 https://youtube.com/@yuachanRio

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
よくよく考えると ん? となるようなお話を書いてゆくつもりです 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

自習室の机の下で。

カゲ
恋愛
とある自習室の机の下での話。

10秒で読めるちょっと怖い話。

絢郷水沙
ホラー
 ほんのりと不条理な『ギャグ』が香るホラーテイスト・ショートショートです。意味怖的要素も含んでおりますので、意味怖好きならぜひ読んでみてください。(毎日昼頃1話更新中!)

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

処理中です...