115 / 432
第115話 ルッキズム(前編)
しおりを挟む
人間は顔じゃない、とよく言われるけど、私は顔だと思う。
その証拠に、テレビやネットで持ち上げられるのは相変わらずイケメンや美少女ばかりだ。
映画もアニメの主人公は絶対美男美女だし、こと我が国に関しては間違ってもブスやブサイクが主役の座を勝ち取ることはない。
現実の生活でもその通りで、学校一の美少女のあたしにはみんな優しいのに、逆の立場のカナエには鬼のように冷たい。カナエなんてその場にいないかのようにガン無視するし、二人一組になる組体操では彼女はいつもひとりボッチなのだ。
そんなわけだから、あたしはせいぜいカナエと仲良くすることにしている。
カナエは引き立て役にもってこいだし、学校一の美少女であるあたしの優越感をちょうどいいぐらいにくすぐってくれるからである。
ある日のこと、あたしはいつものようにカナエと歩いていた。
下校時刻で、片側が森に面した通学路だ。
田舎だから、『熊出没注意!』と大書された看板があちこちに立っている。
「百合ちゃんはいいね。顔もかわいくて、スタイルもいいし」
ため息混じりにカナエが言った。
カナエは人前ではめったに口を利かないが、あたしに対してだけは別である。
あたしのことを友達と思っているらしく、よせばいいのに心を開いてくるのだ。
こっちはなんとも思ってないってのに、ある意味、いい迷惑。
「高校卒業したら、上京するの? そしたらさびしくなるね」
暗い表情でとぼとぼ歩きながら、カナエが続けた。
「モデルの話とか、芸能事務所からのお誘いとか、ま、いろいろ来てるけど、まだわかんないな」
気のないふりして答えるあたし。
正直、クマが出るようなこんな田舎、早くオサラバしたくてたまらない。
「あーあ、せめて百合ちゃんの10分の1でも可愛かったら、私もついてくのに」
カナエが深いため息をついた時である。
ガサッ。
木々が揺れて、
ガオーッ!
雄たけびとともに、大きな黒いものが目の前に飛び出してきた。
その証拠に、テレビやネットで持ち上げられるのは相変わらずイケメンや美少女ばかりだ。
映画もアニメの主人公は絶対美男美女だし、こと我が国に関しては間違ってもブスやブサイクが主役の座を勝ち取ることはない。
現実の生活でもその通りで、学校一の美少女のあたしにはみんな優しいのに、逆の立場のカナエには鬼のように冷たい。カナエなんてその場にいないかのようにガン無視するし、二人一組になる組体操では彼女はいつもひとりボッチなのだ。
そんなわけだから、あたしはせいぜいカナエと仲良くすることにしている。
カナエは引き立て役にもってこいだし、学校一の美少女であるあたしの優越感をちょうどいいぐらいにくすぐってくれるからである。
ある日のこと、あたしはいつものようにカナエと歩いていた。
下校時刻で、片側が森に面した通学路だ。
田舎だから、『熊出没注意!』と大書された看板があちこちに立っている。
「百合ちゃんはいいね。顔もかわいくて、スタイルもいいし」
ため息混じりにカナエが言った。
カナエは人前ではめったに口を利かないが、あたしに対してだけは別である。
あたしのことを友達と思っているらしく、よせばいいのに心を開いてくるのだ。
こっちはなんとも思ってないってのに、ある意味、いい迷惑。
「高校卒業したら、上京するの? そしたらさびしくなるね」
暗い表情でとぼとぼ歩きながら、カナエが続けた。
「モデルの話とか、芸能事務所からのお誘いとか、ま、いろいろ来てるけど、まだわかんないな」
気のないふりして答えるあたし。
正直、クマが出るようなこんな田舎、早くオサラバしたくてたまらない。
「あーあ、せめて百合ちゃんの10分の1でも可愛かったら、私もついてくのに」
カナエが深いため息をついた時である。
ガサッ。
木々が揺れて、
ガオーッ!
雄たけびとともに、大きな黒いものが目の前に飛び出してきた。
0
お気に入りに追加
73
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
10秒で読めるちょっと怖い話。
絢郷水沙
ホラー
ほんのりと不条理な『ギャグ』が香るホラーテイスト・ショートショートです。意味怖的要素も含んでおりますので、意味怖好きならぜひ読んでみてください。(毎日昼頃1話更新中!)
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる