超短くても怖い話【ホラーショートショート集】

第75話 チートスキル

　もうすぐ夏休みというある日、うちの高校に突然転校生がやってきた。

　自己紹介の時、やつは言った。

「俺さあ、実は異世界転生しちゃってさあ、いわゆる召喚ってやつ？　だからガチで何でもできるわけ」

「ホラ吹いてんじゃねーよ！」

「証拠見せろよ」

「なめんじゃねーぞ！　嘘だったらぶっ殺す！」

　当然、クラスは騒然となった。

「嘘じゃないって。なら、好きなもん、言ってみろ。俺が現実にしてやるからさあ」

　へらへら笑う転校生。

　この民度の低い連中を前に、なかなかいい度胸している。

「俺、言いたい」

「ワイも」

「あたしも」

　一斉に手が挙がる。

「あ、そこのかわいこちゃん、どう？　ボクが君の望みをかなえてあげるよ。好きなモノ言ってみてごらん。お金かな、それとも車かな？」

　挙手の嵐の中、転校生が指名したのは、なぜか教科書の陰でうたたねしかけていたこの私だった。

　うっとーしいったらありゃしない。

「じゃ、今から言うの、出して見せてよ」

　投げやりに私は言った。

「何かな？　ボクのチートスキルに感動したら、カノジョになってくれるかな」

　にやけるバカ転校生。

　そのふざけた顔に向かって、私は叩きつけるように言った。

「足の臭い宇宙人」

「は？」

　転校生の目が、点になる。

「ただの宇宙人じゃない。足の臭い宇宙人だよ。出せるなら、さっさと出してみろよ。この野郎！」






　翌朝、トーストを齧りながらテレビを見ていると、ニュースキャスターが言った。

「大変です。都民の皆さん、至急避難してください。足の臭い宇宙人の地球侵略が始まりました」