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第30話 離島怪異譚②
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私の名は今村圭。
民間の探偵社に勤めるアラサー女子である。
今回の調査は、この多胡島で2番目に殺された浅井瑞希の夫、俊介の依頼による。
俊介が激高したのは、妻の死に対してというより、彼女の死体に残されていた情交の痕跡に対してだった。
「絶対相手を突き止めてください。僕は瑞希が許せません。まさかあいつが不倫してただなんて」
「不倫とは限りませんよ。なんせ奥様は、その後バラバラに解体されているのですから。レイプの可能性も十分あるのでは?」
「どっちも同じです。とにかくあいつは僕を裏切った。その相手がだれか知りたいんです!」
うちの女社長がいくらなだめてもそう言い張るだけ。
お金はいくらでも出すからというので、社長もしぶしぶ依頼を引き受けることにしたらしい。
それで今、私はこの島の波止場に立っている。
汽笛を鳴らして、連絡船が港を出ていく。
青い空には綿菓子のような雲が浮かび、空の青に染まった海の上をカモメが気持ちよさそうに飛んでいる。
「警察もさんざん調べたでしょうに、今更手掛かりなんて出るんですかねえ」
カモメを視線で追っていた助手の野崎が、やる気のない口調でつぶやいた。
野崎は私より3つ下。
ようやくフリーターを卒業して、今年からうちの探偵社に勤め出した新米である。
「やってみなきゃわかんないでしょ。犯人はまだこの島にいるかもしれないわ。ぐだぐだ言ってないで、行くよ」
先に立って歩き出す私に、呆れたように野崎が言った。
「はいはい、ケイ先輩こそ第3の犠牲者になんないように、気をつけてくださいよ」
民間の探偵社に勤めるアラサー女子である。
今回の調査は、この多胡島で2番目に殺された浅井瑞希の夫、俊介の依頼による。
俊介が激高したのは、妻の死に対してというより、彼女の死体に残されていた情交の痕跡に対してだった。
「絶対相手を突き止めてください。僕は瑞希が許せません。まさかあいつが不倫してただなんて」
「不倫とは限りませんよ。なんせ奥様は、その後バラバラに解体されているのですから。レイプの可能性も十分あるのでは?」
「どっちも同じです。とにかくあいつは僕を裏切った。その相手がだれか知りたいんです!」
うちの女社長がいくらなだめてもそう言い張るだけ。
お金はいくらでも出すからというので、社長もしぶしぶ依頼を引き受けることにしたらしい。
それで今、私はこの島の波止場に立っている。
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