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第19話 婚約破棄の代償
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「マリア=ブロークンハート、そなたとの婚約はなかったことにする!」
ロンバルディア王国第一王子、ハリス=ペリーの声に、園内は騒然とした空気に包まれた。
「王子、何をおっしゃるのです!」
私は息を切らしながら言った。
自室でうたたねしていた私のところに、王子の侍従がやってきたのはつい先ほどのこと。
何か重要な話があるからと、王子がお呼びだという。
着替えもそこそこに、あわてて王宮に駆け込んだところなのだ。
まだ化粧すら整えていないというのに、この展開はいったい?
「理由はおまえが一番よく知っているはずだ。きのう、サンフローレンスの駄菓子屋で、ガリガリ君ペペロンチーノ味を万引きしただろう。しらを切っても無駄だ。防犯カメラの映像におまえの姿が映っていた」
防犯カメラだって?
私は絶句した。
まさかあの潰れかけた駄菓子屋の店内に、そんなハイカラなものが仕掛けてあろうとは。
「しかもそのガリガリ君ペペロンチーノ味を、こともあろうに従妹のアンネ=フランクフルトの愛猫、小次郎に食わせて殺害を図るとは…。悪役令嬢とは、まさしくおまえのことだな」
「ち、違うんです。あ、あれは…」
言いかけて、私は言葉に詰まった。
あの時は、地球を守るために、どうしてもそうせざるを得なかったのだ。
小次郎には悪の宇宙人、ニトロン星人が憑りついていた。ニトロン星人を駆除できる物質は、この地球上にはガリガリ君ペペロンチーノ味しかない。
宇宙警察から派遣された隠密捜査官たる私としては、そうするしかなかったのだ。
だが、それを口にすることは禁じられている。
隠密捜査官は、己の身分がバレたが最後、その場で自爆させられてしまうのだから。
「言い訳無用だ。私はおまえの代わりに、アンネと婚約するつもりだ。ついでに言えば、おまえの好物、ガリガリ君ペペロンチーノ味は製造会社に生産中止を申し渡した。在庫もすべて破棄するようにとな。そして、マリア、おまえは国外追放だ。妖魔が棲むという氷の大陸の森に放置してやるから、そのつもりでいるように」
「だ、だめです! そんなことをしたら、この地球はやつらに…」
が、私の抗議の声は、高慢ちきな従妹の哄笑に遮られた。
「ざまあないわね、従姉さま。これもおっぱいだけで王子を釣ろうとした罰じゃありませんこと? おほほほ」
勝ち誇ったそのキツネ顔を、私はじっとにらみつけた。
さては全部、おまえの策略だな。
何がおほほほだ、この貧乳め!
翌日、ニトロン星人の大船団が地球に飛来し、あっという間に地上はがれきの山と化してしまった。
ガリガリ君ペペロンチーノ味の存在しない地球など、彼らにとって児童公園の砂場並みに無力だったからである。
ロンバルディア王国第一王子、ハリス=ペリーの声に、園内は騒然とした空気に包まれた。
「王子、何をおっしゃるのです!」
私は息を切らしながら言った。
自室でうたたねしていた私のところに、王子の侍従がやってきたのはつい先ほどのこと。
何か重要な話があるからと、王子がお呼びだという。
着替えもそこそこに、あわてて王宮に駆け込んだところなのだ。
まだ化粧すら整えていないというのに、この展開はいったい?
「理由はおまえが一番よく知っているはずだ。きのう、サンフローレンスの駄菓子屋で、ガリガリ君ペペロンチーノ味を万引きしただろう。しらを切っても無駄だ。防犯カメラの映像におまえの姿が映っていた」
防犯カメラだって?
私は絶句した。
まさかあの潰れかけた駄菓子屋の店内に、そんなハイカラなものが仕掛けてあろうとは。
「しかもそのガリガリ君ペペロンチーノ味を、こともあろうに従妹のアンネ=フランクフルトの愛猫、小次郎に食わせて殺害を図るとは…。悪役令嬢とは、まさしくおまえのことだな」
「ち、違うんです。あ、あれは…」
言いかけて、私は言葉に詰まった。
あの時は、地球を守るために、どうしてもそうせざるを得なかったのだ。
小次郎には悪の宇宙人、ニトロン星人が憑りついていた。ニトロン星人を駆除できる物質は、この地球上にはガリガリ君ペペロンチーノ味しかない。
宇宙警察から派遣された隠密捜査官たる私としては、そうするしかなかったのだ。
だが、それを口にすることは禁じられている。
隠密捜査官は、己の身分がバレたが最後、その場で自爆させられてしまうのだから。
「言い訳無用だ。私はおまえの代わりに、アンネと婚約するつもりだ。ついでに言えば、おまえの好物、ガリガリ君ペペロンチーノ味は製造会社に生産中止を申し渡した。在庫もすべて破棄するようにとな。そして、マリア、おまえは国外追放だ。妖魔が棲むという氷の大陸の森に放置してやるから、そのつもりでいるように」
「だ、だめです! そんなことをしたら、この地球はやつらに…」
が、私の抗議の声は、高慢ちきな従妹の哄笑に遮られた。
「ざまあないわね、従姉さま。これもおっぱいだけで王子を釣ろうとした罰じゃありませんこと? おほほほ」
勝ち誇ったそのキツネ顔を、私はじっとにらみつけた。
さては全部、おまえの策略だな。
何がおほほほだ、この貧乳め!
翌日、ニトロン星人の大船団が地球に飛来し、あっという間に地上はがれきの山と化してしまった。
ガリガリ君ペペロンチーノ味の存在しない地球など、彼らにとって児童公園の砂場並みに無力だったからである。
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