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第12話 松茸狩り

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「どうしても行かなきゃダメ?」
 美優が言った。
「私、習い事があるんだけど」
 おびえた小動物のような目であたしを見つめている。
「そんなの休みな。逆らったらどうなるかわかってるだろ」
「…」
 泣きべそをかく美憂を連れてあたしが向かったのは、学校の裏の私有地にある里山である。
 この季節になるとこの山には松茸が生える。
 それも太くて長い、高品質のやつだ。
 JKと松茸とは妙な組み合わせと思われるかもしれないけど、あたしが毎年松茸の密漁に赴くのは、お金のためである。
 大きいのなら1本5,000円で売れるのだ。
 援助交際なんかに比べればずっと楽だし、実入りもいい。
 これはいわば、田舎住まいのJKだけが享受できる特権なのだ。

「あったあった。これだけ獲ればもう十分だよ」
 十何本目かの松茸をゲットして、あたしは美憂のほうを振り返った。
 美憂は少し離れたところで、木の根元にしゃがみこんでいる。
「何してんのさ?」
 声をかけると、
「すごく大きいの見つけたんだけど、これ、なかなかとれなくて」
 なんだか、複雑な表情を顔に浮かべて美憂が答えた。
「そんなに大物なの?」
 近寄ると、不気味なものが大木の根元からそびえたっていた。
 形はたしかに松茸そっくりである。
 でも、色が違う。
 肌色をしているのだ。
「それに、触ってると、なんだかどんどん固く大きくなってくるの」
「美優、それ、松茸じゃない」
 あたしは息を呑んだ。
 この形状。
 触ると大きくなるその性質。
 いつかうちのバカ兄貴があたしを犯そうと襲ってきた時、裸の股倉から生えていたあれと同じである。
「いこ。それ、ろくなもんじゃないから」
「でも…」
 手を引っ張ると、美憂はさも未練たっぷりにそれを見た。
 うちの村きっての生け花の家元が美憂の生家である。
 お嬢様育ちの美優には、それが何なのか今いちピンとこないらしい。





 美優が神隠しに遭ったのは、翌日のことである。
 村は当然大騒ぎになり、消防団に加え、県警も出動しての大捜索が行われた。
 そして3日目。
 里山の沢で美優は発見された。
 とろんとした表情で、木の股にまたがっていたのだという。
 翌日、病院にお見舞いに行くと、私を見るなり、美優は言った。
「どうしよう。私、妊娠しちゃったみたい」


 

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