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#36 いじめられっ子、世にはばかる①
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「ちょっと、向こう向いてて」
路駐してあるワンボックスカーの陰に隠れると、玉は急いで制服とスカートを脱ぎ、着直した。
「な、なんだい。それ?」
着換えを終えて出てきた玉を一目見るなり、涼が仰天した。
無理もない。
玉はスカートを頭からかぶり、セーラー服を下に穿いているのだ。
まるでお祭りのチンドン屋さながらである。
「こうしておけば、変身した後が楽でしょ。さ、行くよ。ほら、しっぽ持って。私が合図したら、思いっきり引いてね」
異様な格好をした玉が近づいていくと、正門を固めた美化委員たちの間から、どっとばかりに笑い声が上がった。
「なにあれ?」
「ただでさえブスなのに、なんて恰好してんの?」
「ブスすぎて、頭おかしくなったんじゃない?」
それでも、ひるむことなく歩み寄る玉。
後ろには、しっぽの先を握ったゴリラ顔の涼が、申し訳なさそうに付き従っている。
玉が正門から校内に一歩足を踏み入れた時だった。
香水の匂いをさせて、長沢メルがその前に立ちふさがった。
「ちょっと、おったま、あなた、やってくれたわね」
典型的な美少女顔が、怒りで赤く染まっている。
「どうやったか知らないけれど、うちの精肉工場、ぶっ壊すなんて」
「ブスだってね、生きる権利はあるんだよ」
自分より頭一つ背の高いメルを見上げて、玉は言った。
「なのにいきなり殺処分なんて、ひどいと思う」
「人権なんてものはね。並み以上の人間にしか、与えられていないのよ。ブスは犬猫以下。それがまだわからないの?」
「じゃ、ブスじゃなくなれば、いいんだね?」
玉は涼に合図した。
「やって」
「あ、ああ」
モーターボートの発動機を起動させるように、涼が力任せにしっぽを引いた。
「ちょ、ちょっと、な、何これ?」
メルが腰を抜かし、ぺたんと地面に尻もちをつく。
「お待たせ」
逆立ちの姿勢から、ゆっくりと体制を立て直し、うーんと背筋を伸ばすと、玉は言った。
路駐してあるワンボックスカーの陰に隠れると、玉は急いで制服とスカートを脱ぎ、着直した。
「な、なんだい。それ?」
着換えを終えて出てきた玉を一目見るなり、涼が仰天した。
無理もない。
玉はスカートを頭からかぶり、セーラー服を下に穿いているのだ。
まるでお祭りのチンドン屋さながらである。
「こうしておけば、変身した後が楽でしょ。さ、行くよ。ほら、しっぽ持って。私が合図したら、思いっきり引いてね」
異様な格好をした玉が近づいていくと、正門を固めた美化委員たちの間から、どっとばかりに笑い声が上がった。
「なにあれ?」
「ただでさえブスなのに、なんて恰好してんの?」
「ブスすぎて、頭おかしくなったんじゃない?」
それでも、ひるむことなく歩み寄る玉。
後ろには、しっぽの先を握ったゴリラ顔の涼が、申し訳なさそうに付き従っている。
玉が正門から校内に一歩足を踏み入れた時だった。
香水の匂いをさせて、長沢メルがその前に立ちふさがった。
「ちょっと、おったま、あなた、やってくれたわね」
典型的な美少女顔が、怒りで赤く染まっている。
「どうやったか知らないけれど、うちの精肉工場、ぶっ壊すなんて」
「ブスだってね、生きる権利はあるんだよ」
自分より頭一つ背の高いメルを見上げて、玉は言った。
「なのにいきなり殺処分なんて、ひどいと思う」
「人権なんてものはね。並み以上の人間にしか、与えられていないのよ。ブスは犬猫以下。それがまだわからないの?」
「じゃ、ブスじゃなくなれば、いいんだね?」
玉は涼に合図した。
「やって」
「あ、ああ」
モーターボートの発動機を起動させるように、涼が力任せにしっぽを引いた。
「ちょ、ちょっと、な、何これ?」
メルが腰を抜かし、ぺたんと地面に尻もちをつく。
「お待たせ」
逆立ちの姿勢から、ゆっくりと体制を立て直し、うーんと背筋を伸ばすと、玉は言った。
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