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#25 殺処分①
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全員の鑑定が終わるのに、1時間ほどしかかからなかった。
100人余りが3つのエリアに分かれた結果、『殺処分』に該当した者は、玉を含め、わずかふたりだった。
終了間際まで誰も上がってこなかったので、ますます絶望的な気分に陥っていると、
「俺、速水涼ってんだけど。よろしく」
そう言いながら、約1名の男子生徒がもっさりと姿を現して、玉の前で頭を下げたのだ。
速水涼は、その涼しげなイケメンチックな名前とは裏腹に、ゴリラそっくりの容貌の持ち主だった。
なのに背が低いので、その違和感ときたら半端ない。
玉同様、『殺処分』もむべなるかな、というレベルのご面相である。
「た、玉井、玉です」
噛まれるのではないかと一瞬警戒した玉だったが、涼は意外にやさしかった。
「ごめんなあ、俺と同じレベルなんて、女の子なのに傷つくよなあ」
心底からすまなさそうな口調で、玉に向かってそう言ったのだ。
むろん、玉がここに来たのは涼のせいではない。
しいて言えば、自分の顔のせいである。
「違うよ。それは私がブスだから」
気弱に笑って首を振ると、涼がまぶしそうにそんな玉を見つめて、こう言った。
「そうかなあ。あんた、けっこう、可愛いと思うけど」
玉はぽかんと涼のゴリラ顔を見つめ返した。
だが、涼はいたって真面目である。
「なんで?」
玉は詰問するように訊き返した。
「私、そんなこと、これまで誰にも言われたことないよ」
「可愛いとか、美人とかって、人それぞれの主観だと思うんだよなあ。少なくとも、あんな機械で測れるものじゃない気がする。まあ、俺くらい人間離れしてるのは、論外にしても」
「それを言うなら、私だっておたまじゃくしとウーパールーパーに似てるって言われるよ」
「そのふたつは、まあ、可愛いだろ? 少なくとも、寸足らずのゴリラよりもさ」
「ゴリラも悪くないと思うよ。愛嬌あるし、頼もしいし」
「ありがとう」
涼が顔を皺だらけにして笑った。
「俺も、そんなこと言われたの、生まれて初めてだ」
玉はじいんと胸の奥が温まるのを感じていた。
この子、いい子だ。
どうしてもっと早く出会えなかったのだろう?
せめて、殺処分なんかに認定される前に…。
だが、玉の思いもむなしく、再び壇上に上がり、マイクを取ったメルがしゃべり始めた。
「では、振り分けが終わったところで、皆さんにはしかるべき場所に移動していただきます。外には、移動手段も用意してあります。行く先ですが、『エステ」と『整形』の2グループは、『長沢美容クリニック』、『殺処分』のふたりは、『保健所』です。それでは、レディ・ゴー!」
「保健所…?」
涼の顔が感しげに歪んだ。
その瞬間、グイーンと音を立てて、ふいに床が下降し始めた。
100人余りが3つのエリアに分かれた結果、『殺処分』に該当した者は、玉を含め、わずかふたりだった。
終了間際まで誰も上がってこなかったので、ますます絶望的な気分に陥っていると、
「俺、速水涼ってんだけど。よろしく」
そう言いながら、約1名の男子生徒がもっさりと姿を現して、玉の前で頭を下げたのだ。
速水涼は、その涼しげなイケメンチックな名前とは裏腹に、ゴリラそっくりの容貌の持ち主だった。
なのに背が低いので、その違和感ときたら半端ない。
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「た、玉井、玉です」
噛まれるのではないかと一瞬警戒した玉だったが、涼は意外にやさしかった。
「ごめんなあ、俺と同じレベルなんて、女の子なのに傷つくよなあ」
心底からすまなさそうな口調で、玉に向かってそう言ったのだ。
むろん、玉がここに来たのは涼のせいではない。
しいて言えば、自分の顔のせいである。
「違うよ。それは私がブスだから」
気弱に笑って首を振ると、涼がまぶしそうにそんな玉を見つめて、こう言った。
「そうかなあ。あんた、けっこう、可愛いと思うけど」
玉はぽかんと涼のゴリラ顔を見つめ返した。
だが、涼はいたって真面目である。
「なんで?」
玉は詰問するように訊き返した。
「私、そんなこと、これまで誰にも言われたことないよ」
「可愛いとか、美人とかって、人それぞれの主観だと思うんだよなあ。少なくとも、あんな機械で測れるものじゃない気がする。まあ、俺くらい人間離れしてるのは、論外にしても」
「それを言うなら、私だっておたまじゃくしとウーパールーパーに似てるって言われるよ」
「そのふたつは、まあ、可愛いだろ? 少なくとも、寸足らずのゴリラよりもさ」
「ゴリラも悪くないと思うよ。愛嬌あるし、頼もしいし」
「ありがとう」
涼が顔を皺だらけにして笑った。
「俺も、そんなこと言われたの、生まれて初めてだ」
玉はじいんと胸の奥が温まるのを感じていた。
この子、いい子だ。
どうしてもっと早く出会えなかったのだろう?
せめて、殺処分なんかに認定される前に…。
だが、玉の思いもむなしく、再び壇上に上がり、マイクを取ったメルがしゃべり始めた。
「では、振り分けが終わったところで、皆さんにはしかるべき場所に移動していただきます。外には、移動手段も用意してあります。行く先ですが、『エステ」と『整形』の2グループは、『長沢美容クリニック』、『殺処分』のふたりは、『保健所』です。それでは、レディ・ゴー!」
「保健所…?」
涼の顔が感しげに歪んだ。
その瞬間、グイーンと音を立てて、ふいに床が下降し始めた。
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