リバース醜少女戦士 玉 

戸影絵麻

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#14 リバーシブル②

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 謎の宇宙生命体が玉に与えた能力、リバース。
 そのリバースが起動するまでにこれほど時間がかかったのには、理由があった。
 地球人である玉の肉体に適合するために、さまざまな調整が必要だったからである。
 だが、準備はすでに整っていた。
 リバースとは、裏を新たな表にして、その不足分を補う力である。
 従来の玉の”表”側は、あまりにもエントロピーが低かった。
 そのため、”裏”を新たな”表”として構成し直すには、かなりの高エントロピー体を創り出す必要がある。
 つまり、元の”表”がしょぼければしょぼいほど、その裏側から創造される新たな”表”は強力なものとなる。
 そのコーティング作業で、リバースが必要とするのは、空間それ自体に蓄積された”情報”だ。
 この場合、”情報”とは、いわゆる残留思念を指す。
 周囲に漂う残留思念のうち、もっとも強力なものを取り入れて、リバースは新たな”表面”の創出に使う。
 玉の場合もそうだった。
 しかも、彼女の場合、心の中の願望とその”情報”が一致するという僥倖をも併せ持っていた。
 だから、身の危険を感じるや否や、リバース機能の働きは促進され、焼かれる前に間一髪、見事なリバーシブル体を創り出すのに間に合ったのである。

「なんじゃあ? 変な音がするのう。ネズミでも紛れ込んだかのう」
 希望が丘中学校用務員、鬼河原権蔵(73)がそうつぶやいて、焼却炉の蓋を開けた時である。
「あち」
 がさごそと音がして、ごみの山の中から少女の頭が現れた。
 続いて這い出してきたのは、輝くばかりの裸身である。
「な、なんじゃ、おまえは」
 権蔵は目を剥いた。
「あ」
 焼却炉から飛び出して、軽く頭を振ってごみを落とすと、少女がキョロキョロあたりを見回した。
「すみません。ここ、どこですか?」
 尻もちをついて震える鬼河原権蔵(73)のしわだらけの顔を見下ろして、寝ぼけまなこで、少女が言った。
 
 
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