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#13 リバーシブル①
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顎が鎖骨につかえて止まると、今度は内側から、頭のてっぺんが引かれ始めた。
「わあ、すごいすごい! 伸びる伸びる!」
亜美のかけ声に呼応するかのように、メリメリと玉の華奢な頭蓋が内側に向かってひしゃげ始めた、
どういうこと?
異様な感覚に襲われながら、玉は思った。
あのしっぽ。
あれは、大腸などではなかったのだろうか。
これじゃ、まるで、体の中を貫いて、頭蓋骨の内側に直接つながってるみたい…。
だが、そんなことを考えていられたのも、ほんの数秒のことだった、
次の瞬間、恐ろしい現象が起こって、玉の意識はスイッチを切ったかのように途切れてしまったのである。
そう。
身体が、一気に裏返ってしまったのだ。
「ひえええ、どうしよう」
足元に転がる異様な物体を見下ろして、亜美が泣き声を上げた。
「どうしようったって、おめえ…」
さしもの桃山も、あまりのことに、すっかり途方に暮れてしまっている。
ふたりの足元に転がっているのは、見るもおぞましい物体だった。
体操着に包まれた、臓物の塊…。
表と裏が入れ替わってしまった、哀れな少女、玉。
そのなれの果てである。
「まさか、こんなことになるなんて、思わなかったのよう! 桃君、なんとかしてよう!」
まだ手に握っていた玉のしっぽを、気味悪げに放り出して、亜美が桃山にすがりついた。
「死んでるのか…?」
真っ青な顔で、桃山が訊く。
「こんなになって、生きてられるはずないでしょ? うえっ、きもすぎて、吐きそう」
「捨てるしか、ないな…」
ややあって、苦渋に満ちた声でつぶやく桃山。
「捨てるって、どこに?」
網の表情が少し明るくなる。
「確か、体育館の裏に、焼却炉があったはずだろ? あそこに運んで捨てるんだよ。そうすれば、用務員のおっさんが、ごみと一緒に燃やしてくれるさ」
「うんっ! それいい! 名案! 言い出したついでに、桃君、やってくれる?」
小躍りして喜ぶ亜美。
「ちぇ、そうくると思ったぜ」
桃山が嫌そうに首を振った。
「その代わり、きょうこそ最後までやらせろよ」
「いいよっ! これがうまくいったら、前も後ろも桃君のものっ!」
「約束だぞ」
桃山が、臓物がみっしりつまった体操着とブルマを、中身が落ちないよう、慎重に抱え上げる。
「だけど、亜美、このことは誰にも言うなよ。これ、考えようによっては、立派な殺人なんだからな」
「もちろん言わないけどさあ。でもねえ、玉って人間って言えるのかなあ。死んでもきっと、誰も悲しまないよ」
「はは、まあな」
そんな残酷な会話も、玉にはもはや聞こえない。
身体がオモテウラ逆転し、内臓が外に飛び出してしまった玉は、さながら肉でできたブドウの房だった。
だが、まだ死んではいなかった。
それどころか、醜い青虫がさなぎを経て腸になるように、玉の体内では、ある変化が起き始めていた。
そんな玉が次に目覚めたのは、焼却炉に放り込まれ、ほかのごみと一緒に火をつけられた時である。
「わあ、すごいすごい! 伸びる伸びる!」
亜美のかけ声に呼応するかのように、メリメリと玉の華奢な頭蓋が内側に向かってひしゃげ始めた、
どういうこと?
異様な感覚に襲われながら、玉は思った。
あのしっぽ。
あれは、大腸などではなかったのだろうか。
これじゃ、まるで、体の中を貫いて、頭蓋骨の内側に直接つながってるみたい…。
だが、そんなことを考えていられたのも、ほんの数秒のことだった、
次の瞬間、恐ろしい現象が起こって、玉の意識はスイッチを切ったかのように途切れてしまったのである。
そう。
身体が、一気に裏返ってしまったのだ。
「ひえええ、どうしよう」
足元に転がる異様な物体を見下ろして、亜美が泣き声を上げた。
「どうしようったって、おめえ…」
さしもの桃山も、あまりのことに、すっかり途方に暮れてしまっている。
ふたりの足元に転がっているのは、見るもおぞましい物体だった。
体操着に包まれた、臓物の塊…。
表と裏が入れ替わってしまった、哀れな少女、玉。
そのなれの果てである。
「まさか、こんなことになるなんて、思わなかったのよう! 桃君、なんとかしてよう!」
まだ手に握っていた玉のしっぽを、気味悪げに放り出して、亜美が桃山にすがりついた。
「死んでるのか…?」
真っ青な顔で、桃山が訊く。
「こんなになって、生きてられるはずないでしょ? うえっ、きもすぎて、吐きそう」
「捨てるしか、ないな…」
ややあって、苦渋に満ちた声でつぶやく桃山。
「捨てるって、どこに?」
網の表情が少し明るくなる。
「確か、体育館の裏に、焼却炉があったはずだろ? あそこに運んで捨てるんだよ。そうすれば、用務員のおっさんが、ごみと一緒に燃やしてくれるさ」
「うんっ! それいい! 名案! 言い出したついでに、桃君、やってくれる?」
小躍りして喜ぶ亜美。
「ちぇ、そうくると思ったぜ」
桃山が嫌そうに首を振った。
「その代わり、きょうこそ最後までやらせろよ」
「いいよっ! これがうまくいったら、前も後ろも桃君のものっ!」
「約束だぞ」
桃山が、臓物がみっしりつまった体操着とブルマを、中身が落ちないよう、慎重に抱え上げる。
「だけど、亜美、このことは誰にも言うなよ。これ、考えようによっては、立派な殺人なんだからな」
「もちろん言わないけどさあ。でもねえ、玉って人間って言えるのかなあ。死んでもきっと、誰も悲しまないよ」
「はは、まあな」
そんな残酷な会話も、玉にはもはや聞こえない。
身体がオモテウラ逆転し、内臓が外に飛び出してしまった玉は、さながら肉でできたブドウの房だった。
だが、まだ死んではいなかった。
それどころか、醜い青虫がさなぎを経て腸になるように、玉の体内では、ある変化が起き始めていた。
そんな玉が次に目覚めたのは、焼却炉に放り込まれ、ほかのごみと一緒に火をつけられた時である。
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