リバース醜少女戦士 玉 

戸影絵麻

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#9 魔女狩り②

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「以上の3人は、授業後すぐに、体育館に集合してください」
 メルが3人の生徒の名を告げ、朝のホームルームは終わった。
 もちろん、一番最初に呼ばれたのは、玉である。
 玉が呼ばれたこと自体には、本人も含め、誰も驚かなかったのだが、収まらないのは残りのふたりだった。
 男子ひとり、女子ひとりのその生贄候補たちは、玉と同列に扱われたのがよほどショックだったらしく、名前を呼ばれた瞬間、悲鳴のような声を上げ、顔面蒼白になってその場に崩れ落ちてしまったのだ。
 体育館に呼び出して、何をするつもりなんだろう?
 身震いするような恐怖とともに、玉は考えた。
 玉自身、毎日お風呂には入っているし、身だしなみにも気を使っているつもりだ。
 不潔と言われる筋合いはない。
 ただ、顔となると話は別だった。
 生まれながらのこの顔は、直せと言われて直せるものではない。
 改善の余地のない者にはペナルティを課す、とメルは言った。
 ペナルティって、何なんだろう?
 何もしていないのに、どうして私、こんな目に遭わないといけないのだろう…?
 それに、と思う。
 憂鬱のタネはそれだけじゃないのに。
 今日という日が特に気が重いのには、理由があった。
 2時間目の体育である。
 朝、体操着をリュックに入れながら、玉は絶望的な気分に陥ったものだ。
 前回の体育の授業では、特になにもされなかった記憶がある。
 となると、きょうは何かされる可能性が高いのだ。
 制服を隠されるか、裸に剥かれるか…。
 でも、と切に思う。
 きょうだけはやめてほしい。
 だって、そんなことをしたら、このしっぽのことがばれてしまう。
 それは、想像するだに恐ろしいことだった。
 ただでさえブスな玉に、しっぽが生えてしまったのだ。
 それもただのしっぽではない。
 脱肛が悪化して出てきた大腸の一部である。
 それを見られたら、教室中はおそらく珍獣でも発見した時のように、ハチの巣をつついたみたいな大騒ぎになるに違いない。
 そこまで考えると、もう授業に身が入らなくなった。
 尾てい骨のあたりにしっぽの感触を感じながら、玉は机にしがみつくように、ますます小さく縮こまった。
 きのう河原で会った、あの猫型生物の言葉を、ふと思い出す。
 リバースって、何だろう?
 このしっぽと、どういう関係があるんだろう?
 ていうか、私、全然強くなった気がしない。
 こんなんで、半年後に地球を滅ぼしに来る”破滅の天使”とやらに立ち向かえるの?
 
 憂鬱に沈み込む玉をあざ笑うように、終業のチャイムが鳴った。
 いつのまにか、1時間目の授業が終わってしまったのだ。

 
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