リバース醜少女戦士 玉 

戸影絵麻

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#7 変化②

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 翌朝。
 下半身に奇妙な違和感を覚えて目覚めた玉は、パジャマの上から尻に手を当てて絶句した。
 何かある。
 お尻の間に、何か大きなものが挟まってる。
 びっくりしてベッドから飛び出し、おそるおそるパンツを下げてみた。
 X脚気味の太腿の間に、だらんとひも状のものが垂れ下がった。
「やだ。なにこれ? しっぽ?」
 手に取ってみると、それはしっぽというより、理科の教科書で見た、大腸に似た形状をしていた。
 長さは10センチほど。
 尻の割れ目から生えたそれは、節くれだったチューブ状の形で、先がおちょぼ口みたいに細くなっている。
 どうやら、脱肛が悪化してしまったらしい。
 なんとか元に戻そうと躍起になってみたが、無理だった。
「どうしよう…」
 下半身丸出しのまま半べそをかいていると、
「こら、玉ったら、いつまで寝てるの? あと5秒で降りてこないと、飯抜きだよ!」
 鬼のような母のだみ声が飛んできた。
 仕方なく、パンツの後ろの部分を少し下げ、そこから腸を外に出しておくことにした。
 腸はいっこうに内蔵らしくなく、べたべたしておらず、すっかり乾いている。
 少し慣れてくると、大腸というより、感覚としてはやっぱりしっぽに近い。
 表面も意外と頑丈そうで、パンツから外に出しておいても大して支障はなさそうだった。
 問題は排便の時どうするかだが、もとより玉は便秘がちなので、しばらくはそれで悩む必要はなかった。
 大あわてで階段を駆け下りると、家族全員がテーブルについていた。
 母と祖母、そして姉と兄の4人である。
 玉の一家は、祖母の年金と離婚した父からの慰謝料、そして兄と姉のバイト代で暮らしている。
 そこにごくたまに、競馬やパチンコで勝った母の臨時収入が加わる程度である。
 家は父を追い出す時、母が分捕ったものだ。
 自分の不倫が離婚のきっかけだったため、父としては母の言いなりになるほかなかったらしい。
 姉の瑠美と兄の悠斗は、ともに高校を卒業してフリーターをしている。
 瑠美はコンビニ、悠斗は運送会社のアルバイトだ。
 どっちも母に似て派手な外見の持ち主で、ただひとり父親似の玉とは似ても似つかない。
「相変わらず不細工だねえ、玉は」
 ネイルの具合を見ながら声をかけてきたのは、瑠美だった。
 バチバチのつけ睫毛に濃い化粧と、まるで今から出勤するキャバクラのお姉さんみたいだ。
 兄の悠斗は、ただ黙々と味噌汁をかけたご飯をかきこんでいるだけだった。
 元ニートで玉以上にコミュ障の兄は、顔つきこそ濃いものの、性格は超がつくほど内向的で、めったに言葉を発しない。
 やっと働き始めた運送屋は、母のパチンコ友達が経営する会社らしい。
「ほんと、誰に似たのかねえ」
 ぼそりとつぶやいたのは、祖母だった。
 娘を捨てて出て行った父を祖母は毛虫のように忌み嫌っており、そのせいで玉への風当たりも強いのだ。
「玉、5分で食べなよ。みんな、忙しいんだから」
 競馬新聞を目を皿のようにして読みながら、母が床の一角を顎でしゃくった。
 キッチンの隅っこ。
 じかに床に置かれたひとり用簡易テーブルが、玉専用の食事席だ。
 上に乗っているのは、白米を盛った茶碗と味噌汁のお椀だけ。
 ほかの4人の席に出ているおかず類は、玉の食卓には一切乗っていない。
 が、いつものことなので、玉は何も感じない。
 少食だから、朝はむしろこれで十分だ。
「いただきます」
 手を合わせて一礼すると、箸を手に取った。
 その時、お尻の間で、あの”しっぽ”がぴくりと動いた気がした。




 
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