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#1 醜少女の受難
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『おったま』
これが、玉井玉のあだ名である。
あだ名の由来は、正面から見ると、顔がオタマジャクシそっくりだからだ。
玉は、自他ともに認めるブスである。
正真正銘のブス、というものが世の中に存在するとすれば、それが玉だった。
まだ15歳なのに髪は薄く、ところどころ地肌が透けている。
更に両目が両生類か爬虫類のように顔の側面近くについているため、ぱっと見、ウーパールーパーにも瓜二つ。
ウーパールーパーとは、メキシコサンショウウオの幼生成熟体で、ペットショップでよく見かける白い生物である。
それ自体は可愛くて女性にも人気があるのだが、ウーパールーパーに似た人間となるとそうは問屋が卸さない。
はっきり言ってキモいのだ。
だから玉はみんなから嫌われる。
玉の机はいつも落書きとメモ用紙だらけ。
『帰れ』『化け物』『妖怪』『死ね』『まだ生きてんの?』『殺す』
そんな罵詈雑言を書き連ねたメモが、机中に何層にもわたって貼り付けてある。
もちろん、いじめはそれだけでは済まない。
机の中に犬の糞や芋虫を仕込まれるなんてことはザラ。
玉に触れると誰もが「妖怪菌がついた!」と大騒ぎ。
「寄るな!」「うぜえんだよこのブス!」
そうなじられて足蹴にされたりグーパンチされたりするのはいつものことだ。
テストの点数が悪く、反応も鈍い玉は教師たちからも疎まれている。
だからクラスメートたちが玉をどんなにいじめても、教師たちは知らんぷり。
それはみな『おふざけの範囲内』と認定されてしまうからだ。
体育の授業時がまた玉の憂鬱のタネである。
二回に一回は下着や制服を隠される。
誰も玉のヌードなんか見たくないくせに、困り果てて裸でおろおろする彼女を見るのが楽しいのだ。
そんなわけで玉にとって中学校は、地獄だった。
なのに休めないのは、母がうるさいから。
けど、その母にしたって、玉を毛嫌いしている点では、クラスメートたちと大差ない。
家族で外食の時、玉は必ず留守番である。
恥ずかしくて連れていけないという理由で、ひとり自宅でカップ麺を食べるよう命じられる。
兄や姉はみんな連れて行ってもらえるのに、物心ついた時からずっとそう。
同じ団地の主婦たちの井戸端会議で漏れ聞いたところによると、玉が生まれた時、母は悲鳴を上げてわが子をくびり殺そうとしたらしい。
つまり、その時医師や看護師が止めなかったら、玉はこの世にいなかったはずなのだ。
でも、そのほうがよかったかも。
通学路を家に向かってとぼとぼ歩きながら、玉は深いため息をついた。
私、何のために生きてるんだろう…?
いや、そもそも、どうして生まれてきたりしたのだろう?
それはこれまで、玉が何百万、何千万回とわが身に問うた疑問だった。
「死にたい…」
しかし、そうつぶやいた5秒後。
さえない玉の人生は、大きく転換することになる。
これが、玉井玉のあだ名である。
あだ名の由来は、正面から見ると、顔がオタマジャクシそっくりだからだ。
玉は、自他ともに認めるブスである。
正真正銘のブス、というものが世の中に存在するとすれば、それが玉だった。
まだ15歳なのに髪は薄く、ところどころ地肌が透けている。
更に両目が両生類か爬虫類のように顔の側面近くについているため、ぱっと見、ウーパールーパーにも瓜二つ。
ウーパールーパーとは、メキシコサンショウウオの幼生成熟体で、ペットショップでよく見かける白い生物である。
それ自体は可愛くて女性にも人気があるのだが、ウーパールーパーに似た人間となるとそうは問屋が卸さない。
はっきり言ってキモいのだ。
だから玉はみんなから嫌われる。
玉の机はいつも落書きとメモ用紙だらけ。
『帰れ』『化け物』『妖怪』『死ね』『まだ生きてんの?』『殺す』
そんな罵詈雑言を書き連ねたメモが、机中に何層にもわたって貼り付けてある。
もちろん、いじめはそれだけでは済まない。
机の中に犬の糞や芋虫を仕込まれるなんてことはザラ。
玉に触れると誰もが「妖怪菌がついた!」と大騒ぎ。
「寄るな!」「うぜえんだよこのブス!」
そうなじられて足蹴にされたりグーパンチされたりするのはいつものことだ。
テストの点数が悪く、反応も鈍い玉は教師たちからも疎まれている。
だからクラスメートたちが玉をどんなにいじめても、教師たちは知らんぷり。
それはみな『おふざけの範囲内』と認定されてしまうからだ。
体育の授業時がまた玉の憂鬱のタネである。
二回に一回は下着や制服を隠される。
誰も玉のヌードなんか見たくないくせに、困り果てて裸でおろおろする彼女を見るのが楽しいのだ。
そんなわけで玉にとって中学校は、地獄だった。
なのに休めないのは、母がうるさいから。
けど、その母にしたって、玉を毛嫌いしている点では、クラスメートたちと大差ない。
家族で外食の時、玉は必ず留守番である。
恥ずかしくて連れていけないという理由で、ひとり自宅でカップ麺を食べるよう命じられる。
兄や姉はみんな連れて行ってもらえるのに、物心ついた時からずっとそう。
同じ団地の主婦たちの井戸端会議で漏れ聞いたところによると、玉が生まれた時、母は悲鳴を上げてわが子をくびり殺そうとしたらしい。
つまり、その時医師や看護師が止めなかったら、玉はこの世にいなかったはずなのだ。
でも、そのほうがよかったかも。
通学路を家に向かってとぼとぼ歩きながら、玉は深いため息をついた。
私、何のために生きてるんだろう…?
いや、そもそも、どうして生まれてきたりしたのだろう?
それはこれまで、玉が何百万、何千万回とわが身に問うた疑問だった。
「死にたい…」
しかし、そうつぶやいた5秒後。
さえない玉の人生は、大きく転換することになる。
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