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第10部 姦禁のリリス
#105 女王と魔少女⑤
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ブチブチと細い触手が千切れる音が響く。
引きちぎられた触手たちは、精子が卵巣を目指すように、杏里の毛穴から体内に潜り込んでくる。
それがとてつもない快感を生み出し、杏里は嬌声を発しながら由羅の腕の中に倒れ込んだ。
「しっかりしろ、杏里。逃げるなら、今だ」
杏里の頬を叩いて、由羅が言った。
「ううん・・・」
眼を開くと、異様な光景が視界に飛び込んできた。
天井まで膨れ上がった肉塊は、杏里を吐き出した女陰そっくりの口を今しも閉じようとしている。
不気味なのは、肉塊の表面に無数に浮き上がった顏だった。
さっきまではみな杏里のコピーだったのに、今は別の顔がその中に混じっている。
日本人形を連想させるその細面の顔立ちは、間違いなく零のものだった。
零の属性が表面に現れて、杏里の属性と拮抗しているのだ。
顏だけではなかった。
手も足も、そうだった。
二種類の手足が、互いに相手を殺そうとでもするかのように、肉塊のあちこちで複雑に絡み合っている。
その人体パーツレベルの闘争が、肉塊の存在それ自体を不安定にしているのか、ガスタンクのように膨張した”それ”は、あたかも爆発寸前のようにぶるぶる震えている。
「行くよ。杏里、由羅、立てる?」
身体が無事なルナを真ん中にして、なんとか3人、立ち上がる。
二人三脚のようなぎこちない足取りで、部屋を出た。
出口に着くまで、途方もなく長い時間がかかったような気がした。
施設の外に出ると、日が暮れかけていた。
汗ばんだ肌に、晩秋の風がひどく冷たかった。
ジオラマの間の舗道を、小田切がやってくるのが見えた。
「無事だったか。”あれ”はどうした?」
「よくわからない。零を取り込んで、逆に狂い出したみたい。どんどんでかくなって、爆発しかけてる」
額の汗を手の甲で拭い、由羅が説明する。
「委員会の処理班を呼んでおいた。もうすぐ専門部隊がここを焼き払いにやってくる。それまでに、逃げるんだ」
小田切の思いがけない台詞に、杏里はハッと顏を上げた。
「私たち、委員会に出頭しなくていいの? そんなことしたら、勇次の立場がないんじゃない?」
「平気さ。余計な心配は無用だ。冬美はあの通り腑抜け状態で、何があったかろくに覚えていない。なんとでもごまかしは利く」
なるほど、あずまやの屋根の下、ベンチに座った冬美は放心状態で、ただ池の水面を眺めているだけだ。
ここに残る、という小田切と別れ、冠木門を出た。
ワゴン車はまだ、そこに止まっていた。
窓から老婆たちが、杏里たちに向けて呑気に手を振った。
百足丸の姿はないようだ。
さすがに敵同士、同席するのは気が引けたのだろう。
井沢の死体でも探しに行ったのかもしれなかた。
「くそ、まったくとんでもない目に遭ったぜ」
後部座席に乗り込むと、由羅がぼやいた。
「うちもルナも、回復するまでしばらくパトス休業だ。その間、杏里、おまえ、頼むから面倒に巻き込まれないでくれよな」
引きちぎられた触手たちは、精子が卵巣を目指すように、杏里の毛穴から体内に潜り込んでくる。
それがとてつもない快感を生み出し、杏里は嬌声を発しながら由羅の腕の中に倒れ込んだ。
「しっかりしろ、杏里。逃げるなら、今だ」
杏里の頬を叩いて、由羅が言った。
「ううん・・・」
眼を開くと、異様な光景が視界に飛び込んできた。
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不気味なのは、肉塊の表面に無数に浮き上がった顏だった。
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顏だけではなかった。
手も足も、そうだった。
二種類の手足が、互いに相手を殺そうとでもするかのように、肉塊のあちこちで複雑に絡み合っている。
その人体パーツレベルの闘争が、肉塊の存在それ自体を不安定にしているのか、ガスタンクのように膨張した”それ”は、あたかも爆発寸前のようにぶるぶる震えている。
「行くよ。杏里、由羅、立てる?」
身体が無事なルナを真ん中にして、なんとか3人、立ち上がる。
二人三脚のようなぎこちない足取りで、部屋を出た。
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施設の外に出ると、日が暮れかけていた。
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「無事だったか。”あれ”はどうした?」
「よくわからない。零を取り込んで、逆に狂い出したみたい。どんどんでかくなって、爆発しかけてる」
額の汗を手の甲で拭い、由羅が説明する。
「委員会の処理班を呼んでおいた。もうすぐ専門部隊がここを焼き払いにやってくる。それまでに、逃げるんだ」
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「私たち、委員会に出頭しなくていいの? そんなことしたら、勇次の立場がないんじゃない?」
「平気さ。余計な心配は無用だ。冬美はあの通り腑抜け状態で、何があったかろくに覚えていない。なんとでもごまかしは利く」
なるほど、あずまやの屋根の下、ベンチに座った冬美は放心状態で、ただ池の水面を眺めているだけだ。
ここに残る、という小田切と別れ、冠木門を出た。
ワゴン車はまだ、そこに止まっていた。
窓から老婆たちが、杏里たちに向けて呑気に手を振った。
百足丸の姿はないようだ。
さすがに敵同士、同席するのは気が引けたのだろう。
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後部座席に乗り込むと、由羅がぼやいた。
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