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第10部 姦禁のリリス
#102 女王と魔少女②
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「くう、参ったな」
由羅がひとりごち、両腕で上半身を起こした。
小田切たちは部屋を出た後で、残されたのは杏里たち3人だけだ。
なんとか背骨は繋がったらしいが、由羅は胡坐をかくのも大儀そうだった。
「由羅? 気づいたのね? よかった」
杏里の顔に喜色が戻る。
「ちっともよくねーよ。くそ、零の野郎、卑怯な真似しやがって」
由羅がゆるゆるとかぶりを振って、憤懣やるかたないといった口調でつぶやいた。
零が、いずなの身体を盾にして、由羅の腹をぶち抜いたことを怒っているのだろう。
その時、小さなうめき声とともに、ルナが無事なほうの片目を開けた。
潰されたほうの眼はなんとか出血も止まり、まぶたの下に眼球が再生されかけているのが外からも見て取れる。
「ごめんね、ふたりとも。私が不甲斐ないばっかりに」
「何殊勝なこと言ってんだよ。そんなん似合わないよ、ツンデレハーフには」
珍しく気弱げなルナの言葉に、さっそく由羅が噛みついた。
「だいたいこれ、おまえのせいじゃないし。ただ運が悪かったんだ、お互いにさ」
「ふたりとも、立てる?」
杏里が言うと、
「肩を貸してくれれば。自力じゃまだ無理だ」
由羅が自嘲気味に笑ってみせた。
「わかったわ」
杏里とルナが由羅の両肩を支え、なんとか立ち上がらせた。
「それにしても、ありゃなんだ? 何が起こってる?」
由羅が呆れたようにつぶやいたのは、ふたりに支えられてようやく立ち上がった時だった。
「わからない・・・。私そっくりの女の子が現れて、いきなり零を呑み込んじゃったの」
応えたものの、由羅の視線を追って、驚愕に杏里は目を見開いた。
元杏里そっくりの少女だったモノは、今や奇怪な物体に変貌を遂げていた。
天井まで届くほどの、巨大な肉の袋である。
時折その表面が不規則に波打つのは、中に取り込まれた零が暴れているからだろう。
「気味が悪い・・・」
ルナがつぶやいた。
杏里も同感だった。
肉塊の表面に、無数の人体の部位が生えてきているのだ。
しかもそれは、すべて、杏里のものだった。
無数の顔、無数の腕、無数の脚、そして乳房、性器・・・。
「どうなってるんだ? あいつは何者なんだ? なんで杏里、おまえの躰のパーツがあんなに・・・」
「見て。なんだか様子が変」
由羅のうめきを、ルナが遮った。
「私には、あれが苦しんでるように見えるんだけど・・・」
ルナの言う通りだった。
肉塊の表面に浮かび上がった杏里そっくりの顔。
そのどれもが苦痛に頬を歪め、軋むような音を発している。
「中で零が、抵抗してるのかも」
ふと思いついて、杏里は言った。
「あれに取り込まれないように、あの中で・・・」
「とにかくここは、いったん退却だな」
緊張にかすれた声で、由羅が言う。
「このままじゃ、杏里の言う通り、ヤバいことになりそうな気がする。あいつ、どんどんでかくなってるし」
杏里の躰のパーツをあちこちから生やした肉の塊は、部屋の半ばを占拠するほど巨大化している。
そして、杏里は感じていた。
肉塊が発する目に見えない波動を。
杏里の性感帯をダイレクトに刺激する、恐ろしく淫猥なバイブレーションを・・・。
由羅がひとりごち、両腕で上半身を起こした。
小田切たちは部屋を出た後で、残されたのは杏里たち3人だけだ。
なんとか背骨は繋がったらしいが、由羅は胡坐をかくのも大儀そうだった。
「由羅? 気づいたのね? よかった」
杏里の顔に喜色が戻る。
「ちっともよくねーよ。くそ、零の野郎、卑怯な真似しやがって」
由羅がゆるゆるとかぶりを振って、憤懣やるかたないといった口調でつぶやいた。
零が、いずなの身体を盾にして、由羅の腹をぶち抜いたことを怒っているのだろう。
その時、小さなうめき声とともに、ルナが無事なほうの片目を開けた。
潰されたほうの眼はなんとか出血も止まり、まぶたの下に眼球が再生されかけているのが外からも見て取れる。
「ごめんね、ふたりとも。私が不甲斐ないばっかりに」
「何殊勝なこと言ってんだよ。そんなん似合わないよ、ツンデレハーフには」
珍しく気弱げなルナの言葉に、さっそく由羅が噛みついた。
「だいたいこれ、おまえのせいじゃないし。ただ運が悪かったんだ、お互いにさ」
「ふたりとも、立てる?」
杏里が言うと、
「肩を貸してくれれば。自力じゃまだ無理だ」
由羅が自嘲気味に笑ってみせた。
「わかったわ」
杏里とルナが由羅の両肩を支え、なんとか立ち上がらせた。
「それにしても、ありゃなんだ? 何が起こってる?」
由羅が呆れたようにつぶやいたのは、ふたりに支えられてようやく立ち上がった時だった。
「わからない・・・。私そっくりの女の子が現れて、いきなり零を呑み込んじゃったの」
応えたものの、由羅の視線を追って、驚愕に杏里は目を見開いた。
元杏里そっくりの少女だったモノは、今や奇怪な物体に変貌を遂げていた。
天井まで届くほどの、巨大な肉の袋である。
時折その表面が不規則に波打つのは、中に取り込まれた零が暴れているからだろう。
「気味が悪い・・・」
ルナがつぶやいた。
杏里も同感だった。
肉塊の表面に、無数の人体の部位が生えてきているのだ。
しかもそれは、すべて、杏里のものだった。
無数の顔、無数の腕、無数の脚、そして乳房、性器・・・。
「どうなってるんだ? あいつは何者なんだ? なんで杏里、おまえの躰のパーツがあんなに・・・」
「見て。なんだか様子が変」
由羅のうめきを、ルナが遮った。
「私には、あれが苦しんでるように見えるんだけど・・・」
ルナの言う通りだった。
肉塊の表面に浮かび上がった杏里そっくりの顔。
そのどれもが苦痛に頬を歪め、軋むような音を発している。
「中で零が、抵抗してるのかも」
ふと思いついて、杏里は言った。
「あれに取り込まれないように、あの中で・・・」
「とにかくここは、いったん退却だな」
緊張にかすれた声で、由羅が言う。
「このままじゃ、杏里の言う通り、ヤバいことになりそうな気がする。あいつ、どんどんでかくなってるし」
杏里の躰のパーツをあちこちから生やした肉の塊は、部屋の半ばを占拠するほど巨大化している。
そして、杏里は感じていた。
肉塊が発する目に見えない波動を。
杏里の性感帯をダイレクトに刺激する、恐ろしく淫猥なバイブレーションを・・・。
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