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第10部 姦禁のリリス
#89 対決⑨
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「ふんっ、いつまで女王様を気取ってるつもりなの? 今のあなたに何ができるっていうの? 恥を知りなさい、恥を!」
片目を潰されたことが、よほど腹に据えかねているのだろう。
ルナの口調には、言いようのない怒りが滲んでいた。
「ルナ、零を下に落とせ。おまえの念動力であいつを動けなくしてくれれば、後はうちが」
由羅がルナのそばに這い寄った。
腰から下がねじ曲がり、足はほとんど動かないようだが、両腕はまだ無事らしい。
「下ろせ! おまえこそ、サイキックだからって、うぬぼれるんじゃない!」
天井にはりつけにされた零がわめいた。
ルナが由羅に小さくうなずいてみせると、大きく首を打ち振った。
それと同時に、突然無重力状態を解かれた宇宙飛行士のように、零の裸体が落下した。
手足を広げたまま、鈍い音を立てて今度は床に叩きつけられた。
受け身も取らず、そのままの格好で落下するなんて、身体能力に秀でた零らしくない、と杏里は思った。
おそらく、由羅の求めに応じて、ルナが念動力で零の手足の動きを封じてしまっているのに違いない。
その杏里は、血だらけになったいずなを胸に抱いていた。
ちょうど、腹の傷口からはみ出た内臓を体内に戻してやったところだった。
本来なら、あとはいずな自身の治癒能力で、徐々に回復していくはずである。
杏里のように、瞬時にして治るとまではいかないが、数十日時間をかければなんとかなるはずだった。
が、重人が指摘した通り、いかんせん、現時点での出血が多すぎる。
すぐにでもこれを止めないことには、いずなの命が危ないのだ。
唾液を、それでも足りなくて、膣の中を探ってすくい出した愛液をいずなの傷に塗りこんだ。
いずなの傷は腹に開けられた穴だけではなく、全身に及んでいる。
零の爪で全身の皮膚をすだれのように切り裂かれているためだった。
「いずなちゃん、しっかりして」
乳房を搾り、乳腺から分泌する分も動員して、杏里はいずなの裸体に己のエキスを塗り広げていく。
が、いくら呼びかけても、いずなは反応しない。
零に腹をぶち抜かれた時でさえ悲鳴ひとつ上げなかったのだから、その前から相当量の出血で重篤に陥っていたということなのだろう。
「だめ・・・エキスが足りない」
杏里は泣き声を漏らした。
目の前で零を相手に、ルナと由羅が戦っている。
床に伸びた零を見えない手でルナが押さえつけ、由羅がその頭部を鷲掴みにして握りつぶそうとしているのだ。
こんな緊迫した状況を前に、とても気持ちよくなんてなれない。
ああ、いったい、どうしたら・・・。
動かないいずなを抱きしめて、途方に暮れていた時である。
「手伝おうかの」
思いもよらぬほど近くでしわがれた声がして、杏里は危うく叫び出しそうになった。
振り返ると、すくそばに老婆がちょこんと座っていた。
老婆といっても、杏里のエキスをたっぷり浴びたおかげで、五十路ぐらいに見えないこともない。
百戦錬磨の元娼婦、りつだった。
「おばあさん・・・生きてたの?」
杏里の率直な感想に、りつが破顔した。
「勝手に殺さないでおくれよ。それよりあんた、エキスをたくさん出したいんだろ?」
「え、ええ、まあ」
「じゃ、うちらに任せなよ。戦いはあの子たちに任せて、うちらはあんたを援助してその子を助けるよ」
「うちらって?」
「あの兄ちゃんだよ。犬ッコロは2匹とも殺されちゃったけどさ、兄ちゃんはまだ生きてる」
りつが顎で示したのは、ベッドにもたれ、放心状態で座り込んでいる百足丸だった。
「おうい、兄ちゃん、こっちに来な」
りつが呼んだ。
「あんた、戦いには向かないけど、その鍼はまだ使えるんだろ? だったらひとつくらい、役に立つことしなよ」
片目を潰されたことが、よほど腹に据えかねているのだろう。
ルナの口調には、言いようのない怒りが滲んでいた。
「ルナ、零を下に落とせ。おまえの念動力であいつを動けなくしてくれれば、後はうちが」
由羅がルナのそばに這い寄った。
腰から下がねじ曲がり、足はほとんど動かないようだが、両腕はまだ無事らしい。
「下ろせ! おまえこそ、サイキックだからって、うぬぼれるんじゃない!」
天井にはりつけにされた零がわめいた。
ルナが由羅に小さくうなずいてみせると、大きく首を打ち振った。
それと同時に、突然無重力状態を解かれた宇宙飛行士のように、零の裸体が落下した。
手足を広げたまま、鈍い音を立てて今度は床に叩きつけられた。
受け身も取らず、そのままの格好で落下するなんて、身体能力に秀でた零らしくない、と杏里は思った。
おそらく、由羅の求めに応じて、ルナが念動力で零の手足の動きを封じてしまっているのに違いない。
その杏里は、血だらけになったいずなを胸に抱いていた。
ちょうど、腹の傷口からはみ出た内臓を体内に戻してやったところだった。
本来なら、あとはいずな自身の治癒能力で、徐々に回復していくはずである。
杏里のように、瞬時にして治るとまではいかないが、数十日時間をかければなんとかなるはずだった。
が、重人が指摘した通り、いかんせん、現時点での出血が多すぎる。
すぐにでもこれを止めないことには、いずなの命が危ないのだ。
唾液を、それでも足りなくて、膣の中を探ってすくい出した愛液をいずなの傷に塗りこんだ。
いずなの傷は腹に開けられた穴だけではなく、全身に及んでいる。
零の爪で全身の皮膚をすだれのように切り裂かれているためだった。
「いずなちゃん、しっかりして」
乳房を搾り、乳腺から分泌する分も動員して、杏里はいずなの裸体に己のエキスを塗り広げていく。
が、いくら呼びかけても、いずなは反応しない。
零に腹をぶち抜かれた時でさえ悲鳴ひとつ上げなかったのだから、その前から相当量の出血で重篤に陥っていたということなのだろう。
「だめ・・・エキスが足りない」
杏里は泣き声を漏らした。
目の前で零を相手に、ルナと由羅が戦っている。
床に伸びた零を見えない手でルナが押さえつけ、由羅がその頭部を鷲掴みにして握りつぶそうとしているのだ。
こんな緊迫した状況を前に、とても気持ちよくなんてなれない。
ああ、いったい、どうしたら・・・。
動かないいずなを抱きしめて、途方に暮れていた時である。
「手伝おうかの」
思いもよらぬほど近くでしわがれた声がして、杏里は危うく叫び出しそうになった。
振り返ると、すくそばに老婆がちょこんと座っていた。
老婆といっても、杏里のエキスをたっぷり浴びたおかげで、五十路ぐらいに見えないこともない。
百戦錬磨の元娼婦、りつだった。
「おばあさん・・・生きてたの?」
杏里の率直な感想に、りつが破顔した。
「勝手に殺さないでおくれよ。それよりあんた、エキスをたくさん出したいんだろ?」
「え、ええ、まあ」
「じゃ、うちらに任せなよ。戦いはあの子たちに任せて、うちらはあんたを援助してその子を助けるよ」
「うちらって?」
「あの兄ちゃんだよ。犬ッコロは2匹とも殺されちゃったけどさ、兄ちゃんはまだ生きてる」
りつが顎で示したのは、ベッドにもたれ、放心状態で座り込んでいる百足丸だった。
「おうい、兄ちゃん、こっちに来な」
りつが呼んだ。
「あんた、戦いには向かないけど、その鍼はまだ使えるんだろ? だったらひとつくらい、役に立つことしなよ」
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