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第10部 姦禁のリリス

#87 対決⑦

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 いつのまにか気を失っていたらしい。
 百足丸の意識を呼び覚ましたのは、大気を引き裂いて響き渡った少女の絶叫だった。
 ん?
 誰の声だ?
 身を起こそうとして、身体の上に重いものが覆い被さっていることに気づいて、ぞっとなる。
 血にまみれたりつと2頭のドーベルマンが、折り重なるようにして百足丸の上に倒れているのだ。
 俺が気を失っている間に、零にやられたのか。
 股間がずきずき痛んだ。
 確かめてみるまでもなく、ペニスが中途からへし折られているのがわかった。
 万力のような零の膣に締めつけられたせいで、真ん中から先が踏み潰されたように潰れてしまっている。
 整形手術を受けても、元に戻るとはとても思えなかった。
 俺は男として、もうおしまいなのかー。
 そう思うと、改めて怒りが湧いてきた。
 くそっ、零のやつ。
 幸い、ペニス以外は無事だった。
 見くびられたものだと思う。
 零がとどめを刺さなかったのは、百足丸の存在を気にも留めていない証拠なのだ。
 身体を起こすと、「うーん」とうめいて、りつの老いさらばえた身体が上から転げ落ちた。
 首を捩じ切られて犬たちは死んでいるようだが、どうやら老婆はまだ息があるらしい。
 犬たちの死体を押しのけ、りつの身体の下から這い出すと、百足丸は腹ばいになったまま、そっと顔を上げた。
 だしぬけに、異様な光景が視界に飛びこんできた。
 目と鼻の先の床に、3人の少女が倒れている。
 ひとりは、顏を血だらけにしたワンピース姿の長身の少女。
 ブロンドの髪からして、これがサイキックのパトス、富樫ルナだろう。
 もうひとりは、裂かれた腹から湯気の上がる臓器を溢れ出させた、凄絶極まりない姿のいずなである。
 いずなも眼は完全に裏返り、すでに呼吸も止まってしまっているようだ。
 そのいずなの下敷きになるようにして、パンクファッションの少女が奇妙に捩じれた格好で倒れ伏している。
 特徴的な髪型をした、気の強そうな面立ちの少女である。
 おそらくこの娘が、以前の杏里のパートナー、榊由羅に違いない。
 しかし、小悪魔めいたメイクを施した由羅の顔は、いずなと同じでまるで生気がない。
 よく見ると、破裂した腹を支点にして、身体が背中側にふたつ折りになりかかっている。
 腹の裂傷から飛び出していずなの背中に突き刺さっているのは、どうやら由羅の折れた背骨のようだ。
 無茶苦茶やりやがるー。
 百足丸は、血の気が引くような恐怖と同時に、改めて激しい怒りの炎が噴き上がるのを感じていた。
 これは虐殺だ。
 人間であろうと優生種であろうと、およそ命あるものが、このような悲惨な姿にされていいはずがないー。
 その元凶となる零は、倒れた少女たちの間に仁王立ちになり、今しも杏里の股を引き裂こうとしていた。
 水平に開いた杏里の太腿を両手でがっしりと掴み、剥き出しになった性器に歯を突き立てているのだ。
 そう。
 まるで、無抵抗な獲物に齧りつく肉食獣のように・・・。
 だらりと両手を下げ、髪を垂らした杏里は放心したような表情をしている。
 とても10代半ばの少女のものとは思えない重量感のあるふたつの乳房が下顎のあたりにまで垂れ下がり、隠花植物の茎のように白いその裏側を見せている。
 真下を向いた乳首が両方とも勃起しているように見えるのは、百足丸の気のせいだろうか。
 零は杏里をいたぶるのに夢中になっている。
 蛇のように長い舌を性器の中に突っ込み、溢れ出す淫汁をうまそうに啜っている。
 反撃を加えるなら、今だった。
 百足丸はそっと右手の手の平を開いて軽く2、3度振ると、人差し指の先から伸びた鋭い鍼を舌先で湿らせた。

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