437 / 463
第10部 姦禁のリリス
#83 対決③
しおりを挟む
「何か来たって、なんだよ! 零のほかにもヤバいやつがいるっていうのかよ」
通路の天井を見上げて、苛立たしげに由羅が言った。
「よ、よくわからない・・・。でも、感じるんだ。すっごく邪悪な意志を・・・世界中のすべてを呪ってるみたいな」
「それが何なのかはわからないけど、だったら尚更早く済ませないと」
怯えて立ちすくむ重人を、杏里が促した。
通路の右手はちょっとしたレストルームになっていて、丸テーブルや自動販売機が備えられている。
だが、今、テーブルは派手にひっくり返り、床には防弾チョッキ姿の男たちの死体がいくつも転がっていた。
その間には、銃器を握ったままの腕や、根元から引き抜かれた脚などが乱雑に放置されている。
血しぶきは天井にまで迷彩模様を描き、ここでいかに激しい戦闘が行われたのかを暗示していた。
破壊された防御扉をまたぎ超えると、通路の突き当りに両開きの扉が現れた。
セキュリティロックのかかるICUのドアに似ているが、これも半ば捻じ曲げられ、隙間が開いていた。
「ここね」
ミニワンピースの裾をなびかせて杏里の前へ出ると、低いがよく通る声でルナが言った。
「ええ。私の記憶が正しければ」
杏里はうなずいた。
「あの様子だと、中に零がいるのはまず間違いない。気をつけて」
「下がってて」
ルナが心持ち両足を開き、碧い眼でねじれたドアを睨みつけた。
次の瞬間、まるで見えない巨人の手で引きはがされたかのように、片方の金属扉が手前に倒れ込んできた。
耳を聾する轟音が収まると、異様な光景が杏里の視界に飛びこんできた。
いくつものベッドが並ぶ、縦に長い部屋である。
その中央で、真っ裸の少女が、血まみれになって宙吊りになっている。
未成熟の少女の肢体からは乳房がふたつともえぐり取られ、その後に血みどろの丸い穴が開いている。
少女の斜め後ろの壁際に、奇妙な角度に首を折られた巨大な黒い犬が2頭、折り重なるようにして死んでいる。
皮一枚でかろうじてつながった頭部は、顔面を潰され、ぐちゃぐちゃの肉塊と化していた。
「来たね」
血塗れのいずなの背後から、ハスキーな女の声がした。
「零・・・」
杏里はうめいた。
いずなの後頭部を左手で鷲掴みにして、全裸の零が立っている。
零のほうが頭一つ分背が高いので、掴み上げられたいずなのつま先は、完全に床から浮いてしまっているのだ。
「この子、まだ生きてるけど」
口角を三日月形に吊り上げて、零が言った。
「おまえたちの出方次第では、この頭、握り潰すから」
通路の天井を見上げて、苛立たしげに由羅が言った。
「よ、よくわからない・・・。でも、感じるんだ。すっごく邪悪な意志を・・・世界中のすべてを呪ってるみたいな」
「それが何なのかはわからないけど、だったら尚更早く済ませないと」
怯えて立ちすくむ重人を、杏里が促した。
通路の右手はちょっとしたレストルームになっていて、丸テーブルや自動販売機が備えられている。
だが、今、テーブルは派手にひっくり返り、床には防弾チョッキ姿の男たちの死体がいくつも転がっていた。
その間には、銃器を握ったままの腕や、根元から引き抜かれた脚などが乱雑に放置されている。
血しぶきは天井にまで迷彩模様を描き、ここでいかに激しい戦闘が行われたのかを暗示していた。
破壊された防御扉をまたぎ超えると、通路の突き当りに両開きの扉が現れた。
セキュリティロックのかかるICUのドアに似ているが、これも半ば捻じ曲げられ、隙間が開いていた。
「ここね」
ミニワンピースの裾をなびかせて杏里の前へ出ると、低いがよく通る声でルナが言った。
「ええ。私の記憶が正しければ」
杏里はうなずいた。
「あの様子だと、中に零がいるのはまず間違いない。気をつけて」
「下がってて」
ルナが心持ち両足を開き、碧い眼でねじれたドアを睨みつけた。
次の瞬間、まるで見えない巨人の手で引きはがされたかのように、片方の金属扉が手前に倒れ込んできた。
耳を聾する轟音が収まると、異様な光景が杏里の視界に飛びこんできた。
いくつものベッドが並ぶ、縦に長い部屋である。
その中央で、真っ裸の少女が、血まみれになって宙吊りになっている。
未成熟の少女の肢体からは乳房がふたつともえぐり取られ、その後に血みどろの丸い穴が開いている。
少女の斜め後ろの壁際に、奇妙な角度に首を折られた巨大な黒い犬が2頭、折り重なるようにして死んでいる。
皮一枚でかろうじてつながった頭部は、顔面を潰され、ぐちゃぐちゃの肉塊と化していた。
「来たね」
血塗れのいずなの背後から、ハスキーな女の声がした。
「零・・・」
杏里はうめいた。
いずなの後頭部を左手で鷲掴みにして、全裸の零が立っている。
零のほうが頭一つ分背が高いので、掴み上げられたいずなのつま先は、完全に床から浮いてしまっているのだ。
「この子、まだ生きてるけど」
口角を三日月形に吊り上げて、零が言った。
「おまえたちの出方次第では、この頭、握り潰すから」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
32
1 / 4
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる