412 / 463
第10部 姦禁のリリス
#58 追撃④
しおりを挟む
「だけど、杏里を護送するのに護衛の車もつけないなんて、裏委員会もずいぶん人材不足なんだね」
車はあと20メートルほどに迫っている。
スモークガラスで中は見えないが、重人には杏里の”気配”がありありと伝わってくる。
由羅はスライドドアを手動で開け、飛び移る準備万端だ。
アクション映画さながらのシーンだが、スーパーパワーを秘めた由羅ならやりかねない。
というより、疾走する車から車へ飛び移るなど、朝飯前に違いない。
「だけど、由羅、気をつけて。あのミラーグラスの男は危険だ。絶対に裸眼を見ちゃいけない。あいつは、おそらく僕と同じ、いやそれ以上の能力者だと思う。あいつの眼にやられて、ルナもヤチカさんもおかしくなったんだ」
ルナのマインドコントロールを解く時見たビジョンを思い出し、重人は言った。
あれに由羅がやられて敵の軍門に下ったりしたら、それこそ大変なことになる。
「ミラーグラス? なんだそれ? ま、いいや。眼を見なけりゃいいんだろ」
由羅は半ば外に身体を乗り出し、久しぶりの戦闘にうずうずしているようだ。
残り10メートル、と迫った時だった。
「あ」
ステアリングを握った塔子が、小さく叫んだ。
突然、マイクロバスのスライドドアが滑って、何か大きなものが路上に転げ落ちたのだ。
蜘蛛だった。
剛毛に覆われた、タランチュラを巨大化したような4本脚の蜘蛛。
それが路面でバウンドすると、やにわにジャンプしてフロントグラスに貼りついてきたのである。
蜘蛛には、本来の頭部の代わりに、人間の顔がついていた。
4本の脚でフロントグラスに貼りついて、スキンヘッドの若い男の顔がにやりと笑った。
「そういうわけか」
重人は納得した。
「やつらのボディガードは、変異外来種というわけだ」
「雑魚は任せる。おい、ルナ、起きろ」
由羅が片手を伸ばして、ルナの肩をゆすぶった。
「うちはバスに飛び移る。だからあのバケモンは、おまえが倒せ」
「私が?」
夢から覚めたように、ルナが身を起こした。
「いつまでもぼーっとしてんじゃねえよ! いい加減、目を覚ましやがれ!」
そう言い捨てて、由羅が車の屋根によじのぼった。
そこから10メートルの距離を、一気に飛び越えるつもりなのだ。
「前が見えないわ。ルナ、やるなら早く!」
塔子が叫んだ時、ルナのアクアマリンの瞳に力が宿った。
それと同時に、フロントグラスの蜘蛛男が、ふいに汚らしい血潮を噴き上げ、見えない手で引きちぎられたかのように、バラバラの肉塊となって四散した。
車はあと20メートルほどに迫っている。
スモークガラスで中は見えないが、重人には杏里の”気配”がありありと伝わってくる。
由羅はスライドドアを手動で開け、飛び移る準備万端だ。
アクション映画さながらのシーンだが、スーパーパワーを秘めた由羅ならやりかねない。
というより、疾走する車から車へ飛び移るなど、朝飯前に違いない。
「だけど、由羅、気をつけて。あのミラーグラスの男は危険だ。絶対に裸眼を見ちゃいけない。あいつは、おそらく僕と同じ、いやそれ以上の能力者だと思う。あいつの眼にやられて、ルナもヤチカさんもおかしくなったんだ」
ルナのマインドコントロールを解く時見たビジョンを思い出し、重人は言った。
あれに由羅がやられて敵の軍門に下ったりしたら、それこそ大変なことになる。
「ミラーグラス? なんだそれ? ま、いいや。眼を見なけりゃいいんだろ」
由羅は半ば外に身体を乗り出し、久しぶりの戦闘にうずうずしているようだ。
残り10メートル、と迫った時だった。
「あ」
ステアリングを握った塔子が、小さく叫んだ。
突然、マイクロバスのスライドドアが滑って、何か大きなものが路上に転げ落ちたのだ。
蜘蛛だった。
剛毛に覆われた、タランチュラを巨大化したような4本脚の蜘蛛。
それが路面でバウンドすると、やにわにジャンプしてフロントグラスに貼りついてきたのである。
蜘蛛には、本来の頭部の代わりに、人間の顔がついていた。
4本の脚でフロントグラスに貼りついて、スキンヘッドの若い男の顔がにやりと笑った。
「そういうわけか」
重人は納得した。
「やつらのボディガードは、変異外来種というわけだ」
「雑魚は任せる。おい、ルナ、起きろ」
由羅が片手を伸ばして、ルナの肩をゆすぶった。
「うちはバスに飛び移る。だからあのバケモンは、おまえが倒せ」
「私が?」
夢から覚めたように、ルナが身を起こした。
「いつまでもぼーっとしてんじゃねえよ! いい加減、目を覚ましやがれ!」
そう言い捨てて、由羅が車の屋根によじのぼった。
そこから10メートルの距離を、一気に飛び越えるつもりなのだ。
「前が見えないわ。ルナ、やるなら早く!」
塔子が叫んだ時、ルナのアクアマリンの瞳に力が宿った。
それと同時に、フロントグラスの蜘蛛男が、ふいに汚らしい血潮を噴き上げ、見えない手で引きちぎられたかのように、バラバラの肉塊となって四散した。
0
お気に入りに追加
32
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる