激甚のタナトス ~世界でおまえが生きる意味について~【激闘編】

戸影絵麻

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第10部 姦禁のリリス

#41 背徳の宴①

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 杏里にはもはや時間の感覚がなくなっていた。
 裸でいるのも気にならなくなっていた。
 それはいずなも同じだったろう。
 すっかり回復したいずなを相手に、杏里は時の経つのも忘れてベッドの上で痴態の限りを尽くした。
 全裸で絡み合い、間断なく粘液の音を立てて、相手の身体の隅々を味わった。
 そうして、どれほどの回数、絶頂を迎えたのか…。
 涅槃の境地のなか、夢うつつのまま薄目を開けると、杏里といずなは大勢の大人たちに取り囲まれていた。
 井沢の横に、背の高い猫背の男が、両手を脇にだらりと下げて佇んでいる。
 そのふたりのほかには、老婆が3人。
 中央の一番背が低い老婆には、見覚えがあった。
「真布ばあさん…」
 剥き出しの乳房を左手で隠し、杏里はベッドの上に身を起こした。
 いずなはすでに起きていて、隣で杏里に身を寄せるようにして小さくなっている。
「杏里や、お久しぶりだね」
 矮小な身体にアンバランスに大きい顔。
 その中でもさらに大きいぎょろりとした目が杏里を見た。
「ばあさんたちが、浴場のあの仕掛けでは、物足りないというんでね」
 真布の横顔にちらと視線を投げて、井沢が言った。
「君たちをラボに送る前に、どうしても直接したいというんだよ」
「直接、したい…? 何をですか?」
 小首をかしげてたずねる杏里に、井沢の代わりに真布がよく通る声で答えた。
「あんたたちのおかげで、みんな元気になってね。この調子なら、自分でできそうなんだよ」
「自分でって…何を?」
 嫌な予感に、杏里の言葉の語尾が小さくなる。
「性行為だよ。今風には、レズビアンプレイとでもいうのかねえ」
「レズビアン、プレイ…?」
 杏里は目をしばたたいた。
 一瞬、我が耳を疑った。
 この老婆たちと、ここでレズ行為をしろというの?
「そういうわけで、とりあえず、我が委員会に最も貢献度の高い3人に来てもらうことにした。沼人形工房の真布ばあさんと、そのご友人のおふたりだ」
「りつと呼んでおくれ」
「あたしは、光代だよ」
 真布の両脇の老婆が、気味悪く眼を光らせて会釈した。
「君らにしても、浴場でいつまでもはりつけにされるよりはマシかもしれないな。ベッドの上でばあさんたちを満足させるほうが、ずっと楽だろうから」
「百足丸も手伝ってくれるしね」
 真布の言葉に、杏里はようやくもうひとりの男の正体を思い出した。
 百足丸。
 あの時。
 あの体育館の最後のステージで、杏里の陰部に”細工”をした謎の男だ。
「怖がることはない。百足丸は、いわば鍼灸師みたいなものだ。君らの身体中にあるツボを鍼で刺激して、性感を活性化させる係だよ。ふたりともチャクラの細工は済んでいるから、きょうはそのほかの部位を色々試してみたいそうだ」
 井沢の紹介に、百足丸と呼ばれた男がかすかに微笑んだ。
「それだけじゃない。器具の準備も万全だ。ばあさん相手じゃ燃えないと思って、あれこれ用意してあるからな」
「杏里ちゃん、私、怖い…」
 耳元でいずながささやいた。
 その手をぎゅっと握り締めると、杏里は早口でささやき返した。
「大丈夫、私がついてるから。それに、曲がりなりにもあなたはタナトスでしょ? 本来の任務に立ち戻ったと考えれば、これしきのこと、なんでもないはずじゃない?」

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