388 / 463
第10部 姦禁のリリス
#34 美里再臨
しおりを挟む
長い黒髪に包まれたアーモンド形の小づくりな顔。
眼鏡の奥の眼はどちらかというと細く、通った鼻筋や薄い唇と相まって、見る者に無機質な印象を与える。
が、その細い首から下の肉体ははちきれんばかりにスーツを押し上げ、匂うような色気を醸し出していた。
丸尾美里。
杏里と同じ、タナトスである。
ただし、試作品として失敗作の烙印を押され、杏里と重人、そしていずなの3人の手によって数か月前、闇に葬り去られたはずだった。
パトスの攻撃性とタナトスの受容性をひとつの肉体に顕現させようとした結果、美里は心身ともに制御不能の怪物と化してしまったのだ。
外見に騙されちゃいけない。
匍匐前進のように地面に這いつくばり、少しずつ幼児たちの群れに接近しながら、重人は思った。
あのスーツの下には、ケロイド状に引き攣れた皮膚と、フジツボのような吹き出物に覆われた化け物の肉体が隠されている。
そして、その噴火口みたいな開口部からは、あの気味の悪い触手が…。
「どうしたの、ボク? それでも隠れてるつもりなの? 頭隠して尻隠さずとは、まさに今のあなたのことね」
スーツの上着を脱ぎながら、美里が近づいてくる。
白いブラウスを、熟れた果実のような乳房が中から突き上げ、今にもボタンが弾け飛びそうだ。
重人は懸命に這い進む。
美里に勝てるとしたら、由羅を自由にするしかない。
その由羅は、十人以上の幼児たちにもみくちゃにされ、すっかり姿が見えなくなってしまっている。
重人は手の届く距離まで幼児の群れに近づくと、大地を蹴ってその中に飛び込んだ。
両手を広げ、片っ端から幼児たちの身体に手のひらを押し当てる。
ヒュプノスとしての重人の特技は、他人の心を操ることだ。
手でじかに触れた相手を、一定期間、思い通りに動かせる。
果たして、重人が身体のどこかに触れるたびに、幼児たちがひとりまたひとりと、由羅の上から脱落していく。
やがて、重人の眼にも、仰向けになった由羅が見えてきた。
由羅は悲惨な状態に陥ってしまっている。
胴着の前は完全にはだけられ、首まで黒いブラジャーがずり上げられている。
その下から露出したそこだけ陽に焼けていない真っ白な乳房に、大柄な男児が蛭のように吸いついていた。
下半身も同様だった。
腰までめくれあがったミニスカートの下にあらわになったハイレグ気味の黒いショーツ。
その中に別の男児が手を突っ込み、性器を執拗にまさぐっているのだ。
「し、重人…早く、こいつらを」
懇願する由羅と、目が合った。
不思議なことに、由羅は熱っぽい、潤んだ瞳をしていた。
はっ!
重人は思わず吹き出しそうになった。
こんな状況なのに、どうやら由羅のやつ、感じてしまっているらしい。
「いつまでも遊んでるんじゃないよ」
最後のひとりを引きはがすと、重人は言った。
「由羅、君の相手はこんな子どもたちなんかじゃない。ほら、さっさと立って」
肩を貸して、立ち上がらせた。
周囲には、催眠状態にされた幼児たちが、昼寝の最中のようにごろごろ転がっている。
「ふたりいる」
重人の手を振り払い、服の乱れを直しながら、由羅が言った。
「年増の女が美里だろ? ってことは、あのジンガイみたいなのが…」
重人も気づいていた。
美里の斜め後ろに、背の高い、すらりとした肢体の少女が佇んでいる。
陽光にきらめく金色の髪。
アクアマリンの大きな瞳。
透き通るような肌。
女神のような顔立ち。
制服のブラウスとプリーツスカートがこれほどサマになる美少女は、他にいない。
「ルナ…」
呆けたようにその美貌に見とれ、ぽつりと重人はつぶやいた。
眼鏡の奥の眼はどちらかというと細く、通った鼻筋や薄い唇と相まって、見る者に無機質な印象を与える。
が、その細い首から下の肉体ははちきれんばかりにスーツを押し上げ、匂うような色気を醸し出していた。
丸尾美里。
杏里と同じ、タナトスである。
ただし、試作品として失敗作の烙印を押され、杏里と重人、そしていずなの3人の手によって数か月前、闇に葬り去られたはずだった。
パトスの攻撃性とタナトスの受容性をひとつの肉体に顕現させようとした結果、美里は心身ともに制御不能の怪物と化してしまったのだ。
外見に騙されちゃいけない。
匍匐前進のように地面に這いつくばり、少しずつ幼児たちの群れに接近しながら、重人は思った。
あのスーツの下には、ケロイド状に引き攣れた皮膚と、フジツボのような吹き出物に覆われた化け物の肉体が隠されている。
そして、その噴火口みたいな開口部からは、あの気味の悪い触手が…。
「どうしたの、ボク? それでも隠れてるつもりなの? 頭隠して尻隠さずとは、まさに今のあなたのことね」
スーツの上着を脱ぎながら、美里が近づいてくる。
白いブラウスを、熟れた果実のような乳房が中から突き上げ、今にもボタンが弾け飛びそうだ。
重人は懸命に這い進む。
美里に勝てるとしたら、由羅を自由にするしかない。
その由羅は、十人以上の幼児たちにもみくちゃにされ、すっかり姿が見えなくなってしまっている。
重人は手の届く距離まで幼児の群れに近づくと、大地を蹴ってその中に飛び込んだ。
両手を広げ、片っ端から幼児たちの身体に手のひらを押し当てる。
ヒュプノスとしての重人の特技は、他人の心を操ることだ。
手でじかに触れた相手を、一定期間、思い通りに動かせる。
果たして、重人が身体のどこかに触れるたびに、幼児たちがひとりまたひとりと、由羅の上から脱落していく。
やがて、重人の眼にも、仰向けになった由羅が見えてきた。
由羅は悲惨な状態に陥ってしまっている。
胴着の前は完全にはだけられ、首まで黒いブラジャーがずり上げられている。
その下から露出したそこだけ陽に焼けていない真っ白な乳房に、大柄な男児が蛭のように吸いついていた。
下半身も同様だった。
腰までめくれあがったミニスカートの下にあらわになったハイレグ気味の黒いショーツ。
その中に別の男児が手を突っ込み、性器を執拗にまさぐっているのだ。
「し、重人…早く、こいつらを」
懇願する由羅と、目が合った。
不思議なことに、由羅は熱っぽい、潤んだ瞳をしていた。
はっ!
重人は思わず吹き出しそうになった。
こんな状況なのに、どうやら由羅のやつ、感じてしまっているらしい。
「いつまでも遊んでるんじゃないよ」
最後のひとりを引きはがすと、重人は言った。
「由羅、君の相手はこんな子どもたちなんかじゃない。ほら、さっさと立って」
肩を貸して、立ち上がらせた。
周囲には、催眠状態にされた幼児たちが、昼寝の最中のようにごろごろ転がっている。
「ふたりいる」
重人の手を振り払い、服の乱れを直しながら、由羅が言った。
「年増の女が美里だろ? ってことは、あのジンガイみたいなのが…」
重人も気づいていた。
美里の斜め後ろに、背の高い、すらりとした肢体の少女が佇んでいる。
陽光にきらめく金色の髪。
アクアマリンの大きな瞳。
透き通るような肌。
女神のような顔立ち。
制服のブラウスとプリーツスカートがこれほどサマになる美少女は、他にいない。
「ルナ…」
呆けたようにその美貌に見とれ、ぽつりと重人はつぶやいた。
0
お気に入りに追加
32
あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。


どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)
チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。
主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。
ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。
しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。
その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。
「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」
これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。

女子切腹同好会
しんいち
ホラー
どこにでもいるような平凡な女の子である新瀬有香は、学校説明会で出会った超絶美人生徒会長に憧れて私立の女子高に入学した。そこで彼女を待っていたのは、オゾマシイ運命。彼女も決して正常とは言えない思考に染まってゆき、流されていってしまう…。
はたして、彼女の行き着く先は・・・。
この話は、切腹場面等、流血を含む残酷シーンがあります。御注意ください。
また・・・。登場人物は、だれもかれも皆、イカレテいます。イカレタ者どものイカレタ話です。決して、マネしてはいけません。
マネしてはいけないのですが……。案外、あなたの近くにも、似たような話があるのかも。
世の中には、知らなくて良いコト…知ってはいけないコト…が、存在するのですよ。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる