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第10部 姦禁のリリス
#2 ルナの変容
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思い出せない…。
なぜ?
どうして私はこんな所に…?
そもそも、ここはどこ?
そして…この女の人は?
水面下から浮かび上がるように自我が戻ってきて、ルナはようやく己の置かれた状況を認識した。
そうだ。この人は、七尾ヤチカ…。
確か、杏里の友だちの、女流画家だっけ…。
「気がついた?」
ショートカットの女が振り向いた。
「ここは?」
ルナはおずおずと周りを見回した。
ベッドのほかは最小限の調度類しかない、狭い部屋である。
「ここは私の家。このお部屋、狭いけど空いてるから、自由に使っていいわ」
「でも、どうして私はここに…?」
記憶の一部に霞がかかったようになっていて、肝心なことを思い出せない。
ルナはそのもどかしさにかぶりを振った。
「覚えていないのも、仕方ないわね」
ベッドの端に腰掛けたヤチカが、ため息をついた。
「あなたは杏里ちゃんを助けようとして、火事に巻き込まれた。杏里ちゃんは、ひとつの中学校を丸ごと浄化しようとしたの。でも、最後の最後で変異外来種に襲われて…」
そうだった。
杏里のことは覚えている。
私の愛した最強のタナトス。
そして私は、彼女を守る”騎士”、パトス…。
「それで杏里はどうなったの?」
「心配は要らないわ。駆けつけた委員会の処理班に回収されて、今は本部で療養中よ。だから彼女はもう安全。あなたは自分の体のことだけ、考えればいい」
「私の体…?」
ルナはしげしげと自分の身体を見回した。
見慣れぬ薄いネグリジェの下は、どうやら下着一枚のようだ。
小ぶりの乳房が透けて見えている。
「あなたは杏里ちゃんを助けようとして、変異外来種に襲われたの。その時、怪物の触手の一部が身体に入って…。一応、病院に運んで、応急処理は済ませてあるわ。あとは定期的な通院と療養だけ。あなたのマンションは敵に知られているし、その体調ではひとりで生活するのは無理だと思うの。だからしばらく、私があなたのお世話をさせてもらうから」
「でも、どうして、あなたが…?」
「私は委員会の嘱託会員みたいなものなの。杏里ちゃんつながりでね。何も心配することはないのよ」
「…」
すべてが納得できたわけではない。
が、取り立ててヤチカを疑う根拠もなさそうだった。
「またいつか、会えるよね…杏里に」
小声でつぶやくと、ヤチカがそっと肩を抱いてきた。
「もちろんよ。お互い、身体が回復したら、いつでも会えるようになるわ。だから、彼女が戻ってくる前に、あなた自身が元気にならなきゃ」
「そう…そうだね…」
でも、とルナは思う。
私はどこが悪いのだろう?
別に痛いところはなさそうだ。
ただ、頭の芯がぼうっとしているだけ…。
「汗かいちゃったでしょう? ただ、お風呂はまだ無理だから、私が身体を拭いてあげる」
ヤチカが言って、そうっとルナをベッドの上に横たえた。
そして、上からじっと見下ろすと、ささやくように言った。
「それにしても、ルナ…。あなたって、本当に綺麗な子ね。私、あなたみたいな美少女、初めてだわ…」
なぜ?
どうして私はこんな所に…?
そもそも、ここはどこ?
そして…この女の人は?
水面下から浮かび上がるように自我が戻ってきて、ルナはようやく己の置かれた状況を認識した。
そうだ。この人は、七尾ヤチカ…。
確か、杏里の友だちの、女流画家だっけ…。
「気がついた?」
ショートカットの女が振り向いた。
「ここは?」
ルナはおずおずと周りを見回した。
ベッドのほかは最小限の調度類しかない、狭い部屋である。
「ここは私の家。このお部屋、狭いけど空いてるから、自由に使っていいわ」
「でも、どうして私はここに…?」
記憶の一部に霞がかかったようになっていて、肝心なことを思い出せない。
ルナはそのもどかしさにかぶりを振った。
「覚えていないのも、仕方ないわね」
ベッドの端に腰掛けたヤチカが、ため息をついた。
「あなたは杏里ちゃんを助けようとして、火事に巻き込まれた。杏里ちゃんは、ひとつの中学校を丸ごと浄化しようとしたの。でも、最後の最後で変異外来種に襲われて…」
そうだった。
杏里のことは覚えている。
私の愛した最強のタナトス。
そして私は、彼女を守る”騎士”、パトス…。
「それで杏里はどうなったの?」
「心配は要らないわ。駆けつけた委員会の処理班に回収されて、今は本部で療養中よ。だから彼女はもう安全。あなたは自分の体のことだけ、考えればいい」
「私の体…?」
ルナはしげしげと自分の身体を見回した。
見慣れぬ薄いネグリジェの下は、どうやら下着一枚のようだ。
小ぶりの乳房が透けて見えている。
「あなたは杏里ちゃんを助けようとして、変異外来種に襲われたの。その時、怪物の触手の一部が身体に入って…。一応、病院に運んで、応急処理は済ませてあるわ。あとは定期的な通院と療養だけ。あなたのマンションは敵に知られているし、その体調ではひとりで生活するのは無理だと思うの。だからしばらく、私があなたのお世話をさせてもらうから」
「でも、どうして、あなたが…?」
「私は委員会の嘱託会員みたいなものなの。杏里ちゃんつながりでね。何も心配することはないのよ」
「…」
すべてが納得できたわけではない。
が、取り立ててヤチカを疑う根拠もなさそうだった。
「またいつか、会えるよね…杏里に」
小声でつぶやくと、ヤチカがそっと肩を抱いてきた。
「もちろんよ。お互い、身体が回復したら、いつでも会えるようになるわ。だから、彼女が戻ってくる前に、あなた自身が元気にならなきゃ」
「そう…そうだね…」
でも、とルナは思う。
私はどこが悪いのだろう?
別に痛いところはなさそうだ。
ただ、頭の芯がぼうっとしているだけ…。
「汗かいちゃったでしょう? ただ、お風呂はまだ無理だから、私が身体を拭いてあげる」
ヤチカが言って、そうっとルナをベッドの上に横たえた。
そして、上からじっと見下ろすと、ささやくように言った。
「それにしても、ルナ…。あなたって、本当に綺麗な子ね。私、あなたみたいな美少女、初めてだわ…」
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