上 下
350 / 463
第9部 倒錯のイグニス

#350 破壊された美少女⑤

しおりを挟む
 まるでいたちごっこだった。
 ふみが杏里の乳房をむしり取る。
 それを咀嚼している間に、新たな乳房が生えてくる。
 杏里の両腕を右手一本でつかんで、ふみが杏里をつるし上げ、元に戻った乳房にかぶりつく。
 今度は噛みついたまま、むしゃむしゃ喉を鳴らして食べ始める。
 が、ふみが乳房を食べ尽くし、満足げに口を離すと、血まみれの傷口がすぐさま盛り上がり、やがて新しい乳房を形づくる…。
「ぐ…」
 ふみの様子に変化が訪れたのは、再生する杏里の乳房を10個以上食べた頃のことだった。
 杏里に背を向け、身体を丸めて床にうずくまると、はあはあ荒い息を吐いて自分の身体をまさぐり始めたのだ。
 全身から伸び出た触手がUターンして、ふみのぶよぶよの肉体にもぐりこんでいく。
 それが快感なのか、己の乳房と陰部を弄り回しながら、ふみが幼児のようなか細い鳴き声を上げ始めた。
「気持ちいいよォ…ふみ、もう、イキそうだよォ…」
 やっと効果が現れたのだ。
 その痴態を眺めながら、杏里は思った。
 ふみにはエキスだけでは足りなかった。
 タナトスの肉それ自体を食べさせることで、ようやく浄化への道が開けたのだ。
 が、肉襦袢を震わせながら自慰に耽るふみを眺めている杏里のほうも、無事では済まなかったようだ。
 肉体の損傷はもう元に戻っている。
 問題はそのことではない。
 度重なる乳房損傷で発生した快感が、全身の細胞という細胞を刺激して、立っているのもやっとの状態なのだ。
 ああ…。
 なんて…。
 なんて気持ち、いい…んだろう…。
 乳房にも乳首にも恥部にも陰核にも、どの性感帯にも最早触れる必要がないほどだった。
 新たに再生した乳房が、快感の発信源となって全身にパルスを送っている。
 媚薬を濃縮した血液が血管を奔流のように流れ、直立したまま、杏里は絶頂に達しようとしていた。
 身体の奥から灼熱のマグマが湧出し、膣の中にどろどろと溜まっていく。
 それはすぐに肉襞と肉襞の狭間からあふれ出すと、艶めかしく杏里の太腿を伝い始めた。
「杏里ちゃん、いきましょう」
 声がかかったのは、その時だ。 
 耳にするだけでオルガスムスに達してしまいそうなほど懐かしい、その声…。
 どこからか、パチパチと何かが爆ぜるような音が聞こえてくる。
 なんとなく焦げ臭い匂いがするのは、快感で神経がおかしくなっているからだろうか。
「ヤチカ、急げ。始まったぞ」
 見知らぬ男の声が、意外なほど近くで響いた。
「歩ける? 杏里ちゃん」
 腋の下から手を入れられ、その感触に杏里は甘い喘ぎを漏らした。
 強く抱き寄せられると、更に愉悦が高まった。
「どこへ…行くの?」
 やっとの思いで、訊いた。
 だが、ヤチカは答えなかった。

 

 

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

サンコイチ

BL / 完結 24h.ポイント:284pt お気に入り:74

悪役令嬢は双子の淫魔と攻略対象者に溺愛される

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:1,152pt お気に入り:3,002

アドレナリンと感覚麻酔

BL / 完結 24h.ポイント:49pt お気に入り:126

あばたとえくぼの異界怪奇事件帳

ミステリー / 完結 24h.ポイント:42pt お気に入り:7

運命のオメガバース ~英雄学園で出会った君と僕~

BL / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:41

臓物少女

ホラー / 連載中 24h.ポイント:85pt お気に入り:8

Vanishing Twins 

ミステリー / 完結 24h.ポイント:127pt お気に入り:11

処理中です...