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第9部 倒錯のイグニス

#304 タナトスの矜持③

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 杏里の唾液の影響で、伊織の体内の神経細胞が分岐する。
 使わずにいたシナプスが活性化して、新たな回路を形成する。
 ドーパミンをはじめとするさまざまな快楽物質が分泌され、シナプスの受容器を刺激してはパルスを送る。
 その間にも、杏里の舌は盛んに蠢いている。
 半ばほどから蛇の舌のように二股に分かれると、一方でGスポットを攻め、もう一方でボルチオを愛撫した。
「あああっ」
 伊織の声が耳に届いてきた。
 快楽を知った女の声音だった。
 唇を伊織の大陰唇にぴたりと密着させ、杏里はあふれる愛液を飲み干した。
 両手を伊織の身体のラインに沿って上げていき、手探りで乳房をつかむ。
 今度は力を込めて乱暴に揉みしだきながら、人差し指と中指で乳首のつけ根を圧迫した。
「だめ、だめ、だめ…」
 呪文のようにうわ言を口走る伊織。
 杏里の鼻を、勃起したクリトリスが押し上げる。
 舌をもう一本分岐させ、クリトリスの根元に巻きつけた。
 そのままずるずる包皮を剥く。
 濡れた”亀頭”が現れた。
 逝きなさい。
 心の中でそう唱え、
 前歯を立て、軽く噛んでやった。
「はううっ!」
 蜜壺の中に多量の愛液が湧き出して、縁から溢れて杏里の顎を伝った。
 伊織の膝からすっと力が抜け、火照った身体が杏里の上にしなだれかかってきた。
 その壊れた人形のような裸身を抱きかかえ、杏里はゆっくりと腰を上げた。
 伊織はうつろな眼を宙にさ迷わせ、放心したように口を半開きにしている。
 その頬を両手で挟むと、杏里はねっとりと唇を合わせにかかった。
 執拗なディープキスで、伊織の理性の最後のひとかけらまで溶かしてしまう。
 白目を剥いてくたりと弛緩した少女の裸体を、周囲を取り囲む女生徒のひとりに押しつけた。
「他愛もない」
 手の甲で唇を拭って、つぶやいた。
「あんたたちのいう不感症なんて、この程度?」
 生徒たちは答えない。
 部屋の隅でオナニーに耽る少年と、裸で気を失ったクラス委員長を戸惑ったように交互に見つめるだけだった。
 杏里は椅子を引き寄せると、全裸のまま腰かけて、高く足を組んだ。
「さあ、次の挑戦者はだあれ? 私がイカせられなかったら、このリング、潔く進呈するよ。ニッパーなんて必要ない。私が自分ではずして、あげるから」
 しばしざわめいた後、生徒たちが杏里の前に一列に並び始めた。
 ざっと目で人数を数えてみる。
 ちょうど30人だった。
 杏里はうんざりして、心の中でため息をついた。
 でも、と気を取り直す。
 とにかく、地道にやればこのクラスはクリアなのだ。
 クンニとフェラチオだけで全員の浄化が完了するなら、こんな楽なことはない。
 今は、贅沢は言っていられない…。
 覚悟を決めて、杏里は目の前に突き出されたアンモニア臭い勃起ペニスを、すっぽりと口に咥え込んだ。

 
 
 
 

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