激甚のタナトス ~世界でおまえが生きる意味について~【激闘編】

戸影絵麻

文字の大きさ
上 下
297 / 463
第9部 倒錯のイグニス

#297 西棟攻略⑯

しおりを挟む
 2階は1階とは逆に、手前が2年A組、そして廊下を右に進んだ奥が杏里の所属するE組という配置である。
 E組がラストというのが吉と出るか凶と出るか、今の段階ではわからない。
 クラスにふみと璃子が戻ってきている場合、相当苦戦を強いられることは間違いないからだ。
 とにかく、重人の支援が期待できない以上、ひとつひとつ地道に潰していくしかなかった。
 杏里ひとりなら、今更警戒するもなにもない。
 どうせ肉弾戦持ち込まねば埒が明かないのだ。
 だから、たいして何も考えずに、A組の引き戸を開けた。
 まず目に入ったのは、教室を細かく仕切った衝立の数々だった。
 衝立で、即席の迷路がつくってある。
 安物のお化け屋敷みたい、と杏里は思った。
 こんなところに誘い込んで、私をどうしようというのだろう。
 生徒たちはその迷路の中に隠れているのか、見たところ、人影はない。
 彼らを浄化するためには、このわざとらしい罠の中に踏みこむしかなさそうだった。
 狭い通路に入ると、オレンジ色の裸電球の中に、即席の壁に張り巡らされた写真の数々が浮かび上がった。
 どれも杏里のオナニー画像をプリントアウトしたもののようだ。
 通路の突き当りには椅子が置かれ、その上のノートパソコンに、オープニングセレモニーの動画が映っている。
 ここでもずいぶん人気だこと。
 苦笑するしかなかった。
 こうも行く先々で自分の恥ずかしい画像を見せつけられると、ただでさえ興奮気味の身体がまた潤ってくる。
 ノートパソコンの置かれた最初の角を曲がった時だった。
 ふいに背後に人の気配を感じ、振り向こうとしたところを、強い力で両手首をつかまれた。
 腕を捩じり上げられ、顔をしかめた瞬間、かちゃりと金属音が響き渡った。
 背中に回した腕が、動かない。
 どうやら手首に手錠を嵌められてしまったようだ。
「捕まえた」
 ひどく癇に障る甲高い声が、杏里の耳朶を打った。
「みんな、捕まえたぞ。”拷問室”に運ぶんだ」
 衝立が動き、陰からわらわらと生徒たちが現れた。
 ほとんどが男子だが、中には女子も混じっているようだ。
 全員が、下着もつけない全裸だった。
 男子はすべて性器を勃起させ、狂ったように手を伸ばして杏里につかみかかってくる。
 あっという間に、神輿のように担ぎ上げられた。
 何度も通路を曲がって、最終的に運ばれたのは、終点にある少し広めの空間だった。
 天井にレールが走り、そこから拘束具のついたワイヤが何本も下がっている。
「吊るせ」
 さっきの性別不明の甲高い声が、命令した。
「股を全開にしたまま、こいつを天上から吊り下げるんだ」





 

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語

六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

処理中です...