激甚のタナトス ~世界でおまえが生きる意味について~【激闘編】

戸影絵麻

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第9部 倒錯のイグニス

#297 西棟攻略⑯

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 2階は1階とは逆に、手前が2年A組、そして廊下を右に進んだ奥が杏里の所属するE組という配置である。
 E組がラストというのが吉と出るか凶と出るか、今の段階ではわからない。
 クラスにふみと璃子が戻ってきている場合、相当苦戦を強いられることは間違いないからだ。
 とにかく、重人の支援が期待できない以上、ひとつひとつ地道に潰していくしかなかった。
 杏里ひとりなら、今更警戒するもなにもない。
 どうせ肉弾戦持ち込まねば埒が明かないのだ。
 だから、たいして何も考えずに、A組の引き戸を開けた。
 まず目に入ったのは、教室を細かく仕切った衝立の数々だった。
 衝立で、即席の迷路がつくってある。
 安物のお化け屋敷みたい、と杏里は思った。
 こんなところに誘い込んで、私をどうしようというのだろう。
 生徒たちはその迷路の中に隠れているのか、見たところ、人影はない。
 彼らを浄化するためには、このわざとらしい罠の中に踏みこむしかなさそうだった。
 狭い通路に入ると、オレンジ色の裸電球の中に、即席の壁に張り巡らされた写真の数々が浮かび上がった。
 どれも杏里のオナニー画像をプリントアウトしたもののようだ。
 通路の突き当りには椅子が置かれ、その上のノートパソコンに、オープニングセレモニーの動画が映っている。
 ここでもずいぶん人気だこと。
 苦笑するしかなかった。
 こうも行く先々で自分の恥ずかしい画像を見せつけられると、ただでさえ興奮気味の身体がまた潤ってくる。
 ノートパソコンの置かれた最初の角を曲がった時だった。
 ふいに背後に人の気配を感じ、振り向こうとしたところを、強い力で両手首をつかまれた。
 腕を捩じり上げられ、顔をしかめた瞬間、かちゃりと金属音が響き渡った。
 背中に回した腕が、動かない。
 どうやら手首に手錠を嵌められてしまったようだ。
「捕まえた」
 ひどく癇に障る甲高い声が、杏里の耳朶を打った。
「みんな、捕まえたぞ。”拷問室”に運ぶんだ」
 衝立が動き、陰からわらわらと生徒たちが現れた。
 ほとんどが男子だが、中には女子も混じっているようだ。
 全員が、下着もつけない全裸だった。
 男子はすべて性器を勃起させ、狂ったように手を伸ばして杏里につかみかかってくる。
 あっという間に、神輿のように担ぎ上げられた。
 何度も通路を曲がって、最終的に運ばれたのは、終点にある少し広めの空間だった。
 天井にレールが走り、そこから拘束具のついたワイヤが何本も下がっている。
「吊るせ」
 さっきの性別不明の甲高い声が、命令した。
「股を全開にしたまま、こいつを天上から吊り下げるんだ」





 

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