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第9部 倒錯のイグニス
#275 恥辱まみれのセレモニー⑨
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100人のうめき声が地鳴りのように空気を震わせていた。
呪詛にも似たその響きの中、杏里はゆっくりと目を開けた。
指先をひらめかせ、乳首に突き立った針を1本ずつ抜いていく。
それをマットに落とすと、上体を起こし、身をかがめ、今度は尿道口と陰核に刺さった針を抜きにかかった。
抜く瞬間、またしても快感の疼きが沸き起こり、無意識のうちに甘い吐息を漏らしてしまった。
レスリング部のメンバーの身体でできたオブジェを崩さないように、慎重にマットの上に滑り降りる。
杏里が下りても、トモも、純も、咲良も、アニスも、小百合も、誰ひとりとして動こうとしない。
全員がきっちり浄化された証拠だった。
舞台の袖まで行き、観客席を眺め渡してみた。
あちこちでパイプ椅子が倒れ、死にかけた芋虫の群れのように、夥しい数の半裸の人間たちが床で蠢いている。
「まだ100パーセントじゃないが、ここはまあ、こんなところだな」
緞帳の陰から歩み出てきた璃子が、杏里の隣に立ち、同じように会場を見回して、つぶやくように言った。
「残党を始末する機会はまだあるさ。とにかく、ここからがイベントの本当のスタートだ」
「璃子、あなたは何者なの? このイベントの中での、あなたの役割は何?」
日頃の不満をぶつけるように、杏里は黒づくめの璃子に鋭い言葉を浴びせかけた。
「トリックスター? 審判? 陪審員? ふふ、いずれわかる時がくるさ。それよりほら、おまえの服だ。着替えたら、すぐに出発しろ。まずは1年生の教室のある東棟からだろう? ただし、1年生だからって、油断は禁物さ。わかってるとは思うけど、この学校の生徒は、みんな狂ってるから。あの美里の”毒”のせいで」
にやにや笑って、璃子が言った。
銀色の前髪の下で、三白眼が意地悪く光っている。
璃子が差し出したのは、楽屋で脱がされた”戦闘服”だった。
セーラー服とメイド服を融合させて露出度を限界まで高めたような、ドリームハウス特注のコスである。
愛液と汗でびしょ濡れになったレオタードを苦労して脱ぎ捨てると、全裸の上にコスチュームを着込んだ。
下着の替えは各棟の下駄箱にも隠してあるから、東棟に入った時に身に着ければ事足りる。
1年生の教室に赴く前に、このセレモニーで消費した分の媚薬も、補充しておく必要があるだろう。
そして何よりも重要なのは、重人を部室から連れ出すのを忘れないことだ。
ここから先はいわば死のロードのようなものである。
15の教室+職員室を、順繰りに浄化して回らなければならないのだ。
それにはどうしても重人の助けが必要だった。
重人の体力が、どこまでもつかは不安だが…。
「運が良ければ、クライマックスでまた会えるかもな」
あいさつ代わりに片手を上げ、璃子が舞台裏へと消えていく。
その先に、現実世界に迷い込んだモンスターのように醜悪なふみの巨体が一瞬垣間見えたような気がして、杏里はぞくりと身を震わせた。
その時、拡声器から大山の声が鳴り響いた。
「素晴らしいプレイの連続でしたね。まさに、オープニングにふさわしい、華麗なひと幕だったのではないかと思います。さあ、では、いよいよ本番スタートです! 笹原君、準備はいいですかあ?」
呪詛にも似たその響きの中、杏里はゆっくりと目を開けた。
指先をひらめかせ、乳首に突き立った針を1本ずつ抜いていく。
それをマットに落とすと、上体を起こし、身をかがめ、今度は尿道口と陰核に刺さった針を抜きにかかった。
抜く瞬間、またしても快感の疼きが沸き起こり、無意識のうちに甘い吐息を漏らしてしまった。
レスリング部のメンバーの身体でできたオブジェを崩さないように、慎重にマットの上に滑り降りる。
杏里が下りても、トモも、純も、咲良も、アニスも、小百合も、誰ひとりとして動こうとしない。
全員がきっちり浄化された証拠だった。
舞台の袖まで行き、観客席を眺め渡してみた。
あちこちでパイプ椅子が倒れ、死にかけた芋虫の群れのように、夥しい数の半裸の人間たちが床で蠢いている。
「まだ100パーセントじゃないが、ここはまあ、こんなところだな」
緞帳の陰から歩み出てきた璃子が、杏里の隣に立ち、同じように会場を見回して、つぶやくように言った。
「残党を始末する機会はまだあるさ。とにかく、ここからがイベントの本当のスタートだ」
「璃子、あなたは何者なの? このイベントの中での、あなたの役割は何?」
日頃の不満をぶつけるように、杏里は黒づくめの璃子に鋭い言葉を浴びせかけた。
「トリックスター? 審判? 陪審員? ふふ、いずれわかる時がくるさ。それよりほら、おまえの服だ。着替えたら、すぐに出発しろ。まずは1年生の教室のある東棟からだろう? ただし、1年生だからって、油断は禁物さ。わかってるとは思うけど、この学校の生徒は、みんな狂ってるから。あの美里の”毒”のせいで」
にやにや笑って、璃子が言った。
銀色の前髪の下で、三白眼が意地悪く光っている。
璃子が差し出したのは、楽屋で脱がされた”戦闘服”だった。
セーラー服とメイド服を融合させて露出度を限界まで高めたような、ドリームハウス特注のコスである。
愛液と汗でびしょ濡れになったレオタードを苦労して脱ぎ捨てると、全裸の上にコスチュームを着込んだ。
下着の替えは各棟の下駄箱にも隠してあるから、東棟に入った時に身に着ければ事足りる。
1年生の教室に赴く前に、このセレモニーで消費した分の媚薬も、補充しておく必要があるだろう。
そして何よりも重要なのは、重人を部室から連れ出すのを忘れないことだ。
ここから先はいわば死のロードのようなものである。
15の教室+職員室を、順繰りに浄化して回らなければならないのだ。
それにはどうしても重人の助けが必要だった。
重人の体力が、どこまでもつかは不安だが…。
「運が良ければ、クライマックスでまた会えるかもな」
あいさつ代わりに片手を上げ、璃子が舞台裏へと消えていく。
その先に、現実世界に迷い込んだモンスターのように醜悪なふみの巨体が一瞬垣間見えたような気がして、杏里はぞくりと身を震わせた。
その時、拡声器から大山の声が鳴り響いた。
「素晴らしいプレイの連続でしたね。まさに、オープニングにふさわしい、華麗なひと幕だったのではないかと思います。さあ、では、いよいよ本番スタートです! 笹原君、準備はいいですかあ?」
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