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第9部 倒錯のイグニス
#266 凌辱美少女争奪戦④
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校庭に出ると、早くも体育館から移動し始めた生徒たちの列が見えた。
みんな意外に礼儀正しく、2列になって即席のシアターに入っていく。
完成したシアターは、サッカーボールに似ていた。
六面体で囲まれていて、2階建ての建物ほどの高さがある。
その鏡張りの表面は、曇り空を映して鉛色に沈んで見える。
「こっちだ。こっちに裏口がある」
生徒たちに気づかれぬよう、璃子に続いて裏から近づくと、銀色の壁にそこだけ色の異なる部分があった。
「お姫様を連れてきた」
ドアを押し開け、中に璃子が声をかける。
と、大きな影が動いて、咲良がまん丸の顔をのぞかせた。
「待ってたよ。杏里」
手を引かれて中に引っ張り込まれると、そこは楽屋裏みたいな狭い部屋だった。
体育倉庫ほどの広さの殺風景な空間にソファが2脚置かれ、そこに思い思いの格好でレスリング部のメンバーが腰かけている。
全員、ビキニの水着そのままの、あの真っ赤なユニフォームに着替えている。
天然パーマの髪型にチョコレート色の肌がよく似合っている、異国のファイター、アニス。
驚くほど腕が長く、肩幅が杏里の2倍はありそうな、2年生の朝倉麻衣。
小麦色の肌がまぶしい、ボーイッシュな1年生。神崎トモ。
そして、バレーボールで鍛えた抜群のプロポ-ションを誇る、杉本純。
そこに、雄牛を思わせる巨体の持ち主、飯塚咲良が加わった。
1年生の権藤美穂の姿が見えないのは、紅白戦の時、変異外来種に身体を乗っ取られ、ルナに殺されたせいだ。
「杏里、元気そう」
長い脚を組み、両腕で膝を抱いた姿勢で、純が話しかけてきた。
その瞳に宿っているのは、かつて杏里を襲った時に浮かべていたあの色だ。
「いべんと、楽シミデスネ」
片言めいた日本語で、アニスが明るく言った。
「マタ杏里ト戦エルト思ウト、あにす、ドキドキシチャイマス」
「試合じゃないんだ。少しは手加減してやれよ」
麻衣が呆れたように口を挟んだ。
二人のボケと突っ込みに、1年生のトモがくすくす笑い出す。
「さて、全員そろったところで、簡単に打ち合わせといこう」
後ろ手にドアの鍵をかけ、凛子が言った。
「このセレモニーの目的は、いかに観客を性的に興奮させるかだ。だから、杏里以外の5人は、なるべくそれを意識した技をかけること。ダメージの大きさじゃなく、ビジュアル第一の技を選ぶんだ。杏里は杏里で、一切抵抗しない。このセレモニー中は、クリリングの争奪はないから、限界まで受け身で行くんだ。最後には小谷先生も参戦することになってる。せいぜいそれまでイカないように、ふんばるんだな」
そういえば、部屋の中に小百合の姿はない。
杏里はいつかの特訓を思い出し、不安な気分に陥った。
小百合はあの時浄化されたはず。
それなのにイベントに参戦するということは、もう新たなストレスが蓄積されたということなのか。
そう考えると、それは純も同じだった。
純のあの眼つき。
浄化前の彼女に戻っている。
浄化は完全なものではない。
結局は、一時しのぎにすぎないということか…。
「そろそろですよ」
ふいに奥の扉が開いて、半ば禿げた頭が中をのぞきこんだ。
「観客100人が、そろいました。君たちの出番です」
せかせかした口調で、教頭の前原が言った。
みんな意外に礼儀正しく、2列になって即席のシアターに入っていく。
完成したシアターは、サッカーボールに似ていた。
六面体で囲まれていて、2階建ての建物ほどの高さがある。
その鏡張りの表面は、曇り空を映して鉛色に沈んで見える。
「こっちだ。こっちに裏口がある」
生徒たちに気づかれぬよう、璃子に続いて裏から近づくと、銀色の壁にそこだけ色の異なる部分があった。
「お姫様を連れてきた」
ドアを押し開け、中に璃子が声をかける。
と、大きな影が動いて、咲良がまん丸の顔をのぞかせた。
「待ってたよ。杏里」
手を引かれて中に引っ張り込まれると、そこは楽屋裏みたいな狭い部屋だった。
体育倉庫ほどの広さの殺風景な空間にソファが2脚置かれ、そこに思い思いの格好でレスリング部のメンバーが腰かけている。
全員、ビキニの水着そのままの、あの真っ赤なユニフォームに着替えている。
天然パーマの髪型にチョコレート色の肌がよく似合っている、異国のファイター、アニス。
驚くほど腕が長く、肩幅が杏里の2倍はありそうな、2年生の朝倉麻衣。
小麦色の肌がまぶしい、ボーイッシュな1年生。神崎トモ。
そして、バレーボールで鍛えた抜群のプロポ-ションを誇る、杉本純。
そこに、雄牛を思わせる巨体の持ち主、飯塚咲良が加わった。
1年生の権藤美穂の姿が見えないのは、紅白戦の時、変異外来種に身体を乗っ取られ、ルナに殺されたせいだ。
「杏里、元気そう」
長い脚を組み、両腕で膝を抱いた姿勢で、純が話しかけてきた。
その瞳に宿っているのは、かつて杏里を襲った時に浮かべていたあの色だ。
「いべんと、楽シミデスネ」
片言めいた日本語で、アニスが明るく言った。
「マタ杏里ト戦エルト思ウト、あにす、ドキドキシチャイマス」
「試合じゃないんだ。少しは手加減してやれよ」
麻衣が呆れたように口を挟んだ。
二人のボケと突っ込みに、1年生のトモがくすくす笑い出す。
「さて、全員そろったところで、簡単に打ち合わせといこう」
後ろ手にドアの鍵をかけ、凛子が言った。
「このセレモニーの目的は、いかに観客を性的に興奮させるかだ。だから、杏里以外の5人は、なるべくそれを意識した技をかけること。ダメージの大きさじゃなく、ビジュアル第一の技を選ぶんだ。杏里は杏里で、一切抵抗しない。このセレモニー中は、クリリングの争奪はないから、限界まで受け身で行くんだ。最後には小谷先生も参戦することになってる。せいぜいそれまでイカないように、ふんばるんだな」
そういえば、部屋の中に小百合の姿はない。
杏里はいつかの特訓を思い出し、不安な気分に陥った。
小百合はあの時浄化されたはず。
それなのにイベントに参戦するということは、もう新たなストレスが蓄積されたということなのか。
そう考えると、それは純も同じだった。
純のあの眼つき。
浄化前の彼女に戻っている。
浄化は完全なものではない。
結局は、一時しのぎにすぎないということか…。
「そろそろですよ」
ふいに奥の扉が開いて、半ば禿げた頭が中をのぞきこんだ。
「観客100人が、そろいました。君たちの出番です」
せかせかした口調で、教頭の前原が言った。
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