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第9部 倒錯のイグニス

#242 嵐の予感⑲

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「おま〇こがだめなら、おっぱいでもいいのよ~ん」
 百足丸を組み伏せ、腹の上に座り込むと、ふみがブレザーの前を開けた。
 内圧ですでにはちきれそうになっているブラウスのボタンを、芋虫みたいな指でもどかしげに外していく。
 やがてピンクの趣味の悪いブラジャーが現れたかと思うと、それを両手で一気に押し上げた。
 飛び出したのは、バレーボールほどもあるふたつの肉の塊である。
 百足丸は巨乳が好きだ。
 その意味で、笹原杏里とは早く会って、一戦交えたいと切に願っている。
 しかし、さすがの百足丸も、これほどまでに巨大な乳房を目の当たりにするのは生まれて初めてだった。
 こ、これは…?
 百足丸は目を剥いた。
 今目の前で揺れている物体は、巨乳、爆乳などという陳腐な表現をはるかに超越した何かだった。
 そこには色気もロマンもなく、ただ常軌を逸した量の脂肪の塊が存在しているだけだ。
 しかも、ふみの乳房はなぜか染みだらけで汚らしく、おまけに乳輪が下品なほど大きかった。
 これは乳輪なんてかわいらしいものじゃない。
 まるでヤママユガの翅にある斑点だ、と百足丸は思った。
 それに、あの乳首の大きいこと。
 腐りかけた大粒のイチゴそっくりじゃないか。
「どう? 素敵でしょ? ふみのおっぱい」
 グローブをはめたような両手で乳房をすくい上げ、ふみがしなをつくった。
「くらえ」
 右手が自由になっているのに気づいて、百足丸は素早く鍼を突き出した。
 ずぶり。
 針状の爪が、右の乳房に突き刺さる。
 が、それだけだった。
 ふみは顔色ひとつ、変えていない。
「あれえ? 全然効かないけどォ?」
 不思議そうに短く太い首をかしげて百足丸を見た。
 だめだ。
 百足丸の顔から血の気が引いていく。
 脂肪層が厚すぎて、神経にまで鍼が届かない。
「ヤチカ、おい、なんとかしろ!」
 もう、こうなったら恥も外聞もなかった。
 凶器のような乳房を顔に押しつけようとするふみを懸命に押し留めながら、百足丸は叫んだ。
「おまえ、俺を見殺しにする気か?」
「聞きしに勝る破壊力ね」
 腕組みして、窓辺にもたれ、ヤチカがつぶやいた。
「この子、本当に人類なの? もしかして、優生種のできそこない?」
「ふみはれっきとした人間さ」
 ヤチカと対峙する位置で腕組みした凛子が、そばかすだらけの顔でにやりと笑う。
「人間の中ではおそらく最下等だろうけど、でも、ひょっとしたら、人類最強なのかもな」
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