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第9部 倒錯のイグニス

#203 美里の影⑦

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 これまで、数々の背徳的な行為を目撃し、更に自分でも体験してきた杏里だったが、これほどまでに罰当たりな光景を目の当たりにするのは、これが初めての経験だった。
 バスの後部シートで、肌色の塊がいくつもうごめいている。
 園児服を脱ぎ捨てた、全裸の幼児たちである。
 シートの真ん中に、よく肥えた大柄な男児が、社長みたいな恰好でふんぞり返っている。
 その裸体に、左右から小柄な女児たちが、かしずくように取りすがっている。
 男児の胸に顔をつけ、乳首を吸いながら股間をまさぐっているのだ。
 杏里が驚愕したのは、男児の股間から立派な性器が立ち上がっていることだった。
 包皮こそかぶっているが、大きさだけでいえば、中学生のそれと比べても遜色がない。
 手での愛撫に飽き足らなくなったのか、やがて男児が幼女のひとりをバスの通路に四つん這いに這わせ、その幼い尻の間に己の肉棒を突き立てた。
 瞬間、泣き出しそうに顔をゆがめた幼女だったが、男児がゆっくりピストン運動を始めると、すぐに甘えたような声で喘ぎ始めた。
 もうひとりの幼女は背後から男児にしがみつき、しきりにその胸の乳首を指でまさぐっている。
 最近のいじめには、性的要素を含むものが多く、低学年化が進んでいると聞いたことがある。
 小学生の間での集団レイプも珍しくないという。
 その分、タナトスの出番が増えて杏里としては商売繁盛なのだが、今目の前で繰り広げられているのは、それをはるかに超える異常事態だった。
 3人とも、明らかに幼稚園児なのである。
 確かに主役の男児は小学校高学年並みの身体つきをしているが、それでも顔を見る限り、歳相応にあどけない。
 頭のてっぺんで髪の毛がアンテナのように尖り、栗のような愛嬌のある顔立ちをしている。
 いったい、誰がこんなことを教えたのだろう…?
 慣れた様子でセックスに興じる裸の幼児たちを眺めながら、杏里はほとんど放心状態である。
 どうしよう?
 ここの先生を呼んできて、止めさせるべきだろうか?
 いくらなんでも、幼稚園児がセックスだなんて…。
 と、幼女の尻を抱え、リズミカルに腰を動かしていた男児が、ふと顔を上げた。
 背ける前に、目が合ってしまった。
 幼女を突き転がし、男児が立ち上がった。
 濡れたペニスを振り立て、杏里めがけて突進する。
 そして、窓をスライドさせ、外に上半身を突き出すなり、妙に甲高い声で叫んだ。
「おっぱいだ! そのおっぱい、ボクに触らせて!」


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