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第9部 倒錯のイグニス
#191 邂逅③
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痛みを感じたのは、ナイフが肉に食い込む最初の瞬間だけだった。
全身の毛穴からローションのような防護液がにじみ出るのと同時に、それはすぐに快感に変わった。
男がナイフを抜いた。
と、弾けた脂肪層が見る間に再生し、傷口をふさいだ。
男の右腕が動き、第2撃が杏里の下腹に突き刺さる。
平らな腹をナイフの長い刃が貫き、切っ先が背中から飛び出した。
が、杏里は悲鳴すら上げなかった。
男の首に両腕を回し、その狂気に支配された顔を下からじっとのぞきこんだ。
「な、なんなんだ? おまえ」
男の瞳が揺れた。
サバイバルナイフで2度刺されても、悲鳴ひとつ上げずにしがみついてくる少女。
そんなありえない事態に遭遇して、明らかに動転してしまっていた。
右手を男のうなじに回し、左手でスカートのファスナーを下ろす。
パンティ一枚になった杏里の下半身に、男の下半身が当たった。
殺戮の興奮からか、男は激しく勃起している。
杏里の左手が、ズボンの上からふくらみを撫で上げた。
何度も撫でさすり、肉棒が強度を増したのを確かめると、逆手で握ってしごき始めた。
「や、やめろ! な、何する気だ?」
男が杏里の腹からナイフを抜いた。
音を立てて血が飛び散ったが、それも最初のうちだけだった。
腹と背中に開いた穴の周辺に驚くべき速さで新たな肉が盛り上がり、あっという間に傷口を塞いでしまう。
3撃目は来なかった。
その前に杏里の唇が男の唇を塞いだのだ。
男の首を抱きながら、ゆっくりと杏里は床に倒れこんでいく。
杏里にひきずられる格好で、仰向けになった杏里の上に、男がまたがった。
その時にはもう、杏里は大量の唾液を男の口腔内に送り込んでいた。
男の表情が変わるのがわかった。
殺人鬼の顔から、杏里にとってなじみ深い、セックスに飢えた雄の顔へと変貌していくのだ。
ここまでくれば、あとは何もする必要はなかった。
杏里は全身の力を抜き、人形のように仰臥した。
ナイフを放り出し、杏里の弾力のある乳房を、男が狂ったように揉み始めた。
「あう、あう、あう」
よだれを垂らしながら、獣のようにうめいている。
それだけでは飽き足らず、乳房を揉みつつ、今度は杏里の身体を唾液にまみれた舌で貪るように舐め始めた。
そうしながら、盛りのついた雄犬よろしく、ズボンの前のこわばりを杏里の秘所にこすりつけてきた。
揉みしだかれた乳房の頂で、杏里の薔薇色の乳首が大きく尖っている。
もみくちゃにされた拍子にその先端から透明な汁がほとばしり、湯気を立てて男の顔を直撃した。
愛液と同じ成分の催淫効果のある体液が男の眼の粘膜に吸収され、血流に混じって男の全身をめぐり出す。
「ああああっ!」
杏里の裸体を弄んでいた男が、ふいに叫んで硬直した。
ズボンの中に大量の精液をぶちまけて、杏里の上に棒のように倒れこんできた。
次の瞬間、杏里はするりと身体を入れ替えて、男の背後に立ち上がっていた。
レスリング部の練習が、実戦で初めて役に立った気がした。
男は床にうつぶせになり、尻を浮かせてひくひく痙攣している。
「大丈夫か? 君?」
複数の足音が響いたかと思うと、誰かが杏里の手を取った。
警官たちだった。
「犯人、確保!」
床に倒れた若者の手首に手錠をかけ、刑事らしき男が叫んだ。
「あなた、怪我は?」
杏里の裸身にバスタオルをかけながら、女性の刑事が訊いてきた。
「平気です」
杏里は汗でぬれた髪を額から払って、かぶりを振った。
あっけないくらい、簡単だった。
それより気になるのは、私のスイッチを入れたあの老人だ。
杏里は、遠巻きに己を取り巻く野次馬の列に目を向けた。
が、どんなに目を凝らしてきても、すでにそこにはあのつば広帽をかぶった老人の姿はなかった。
私の、産みの親…。
老人は、自分のことをそう呼んだ。
噓じゃないのかも。
身体の中心に残る性欲の疼きに耐えながら、ぼんやりと杏里はそんなことを思った。
全身の毛穴からローションのような防護液がにじみ出るのと同時に、それはすぐに快感に変わった。
男がナイフを抜いた。
と、弾けた脂肪層が見る間に再生し、傷口をふさいだ。
男の右腕が動き、第2撃が杏里の下腹に突き刺さる。
平らな腹をナイフの長い刃が貫き、切っ先が背中から飛び出した。
が、杏里は悲鳴すら上げなかった。
男の首に両腕を回し、その狂気に支配された顔を下からじっとのぞきこんだ。
「な、なんなんだ? おまえ」
男の瞳が揺れた。
サバイバルナイフで2度刺されても、悲鳴ひとつ上げずにしがみついてくる少女。
そんなありえない事態に遭遇して、明らかに動転してしまっていた。
右手を男のうなじに回し、左手でスカートのファスナーを下ろす。
パンティ一枚になった杏里の下半身に、男の下半身が当たった。
殺戮の興奮からか、男は激しく勃起している。
杏里の左手が、ズボンの上からふくらみを撫で上げた。
何度も撫でさすり、肉棒が強度を増したのを確かめると、逆手で握ってしごき始めた。
「や、やめろ! な、何する気だ?」
男が杏里の腹からナイフを抜いた。
音を立てて血が飛び散ったが、それも最初のうちだけだった。
腹と背中に開いた穴の周辺に驚くべき速さで新たな肉が盛り上がり、あっという間に傷口を塞いでしまう。
3撃目は来なかった。
その前に杏里の唇が男の唇を塞いだのだ。
男の首を抱きながら、ゆっくりと杏里は床に倒れこんでいく。
杏里にひきずられる格好で、仰向けになった杏里の上に、男がまたがった。
その時にはもう、杏里は大量の唾液を男の口腔内に送り込んでいた。
男の表情が変わるのがわかった。
殺人鬼の顔から、杏里にとってなじみ深い、セックスに飢えた雄の顔へと変貌していくのだ。
ここまでくれば、あとは何もする必要はなかった。
杏里は全身の力を抜き、人形のように仰臥した。
ナイフを放り出し、杏里の弾力のある乳房を、男が狂ったように揉み始めた。
「あう、あう、あう」
よだれを垂らしながら、獣のようにうめいている。
それだけでは飽き足らず、乳房を揉みつつ、今度は杏里の身体を唾液にまみれた舌で貪るように舐め始めた。
そうしながら、盛りのついた雄犬よろしく、ズボンの前のこわばりを杏里の秘所にこすりつけてきた。
揉みしだかれた乳房の頂で、杏里の薔薇色の乳首が大きく尖っている。
もみくちゃにされた拍子にその先端から透明な汁がほとばしり、湯気を立てて男の顔を直撃した。
愛液と同じ成分の催淫効果のある体液が男の眼の粘膜に吸収され、血流に混じって男の全身をめぐり出す。
「ああああっ!」
杏里の裸体を弄んでいた男が、ふいに叫んで硬直した。
ズボンの中に大量の精液をぶちまけて、杏里の上に棒のように倒れこんできた。
次の瞬間、杏里はするりと身体を入れ替えて、男の背後に立ち上がっていた。
レスリング部の練習が、実戦で初めて役に立った気がした。
男は床にうつぶせになり、尻を浮かせてひくひく痙攣している。
「大丈夫か? 君?」
複数の足音が響いたかと思うと、誰かが杏里の手を取った。
警官たちだった。
「犯人、確保!」
床に倒れた若者の手首に手錠をかけ、刑事らしき男が叫んだ。
「あなた、怪我は?」
杏里の裸身にバスタオルをかけながら、女性の刑事が訊いてきた。
「平気です」
杏里は汗でぬれた髪を額から払って、かぶりを振った。
あっけないくらい、簡単だった。
それより気になるのは、私のスイッチを入れたあの老人だ。
杏里は、遠巻きに己を取り巻く野次馬の列に目を向けた。
が、どんなに目を凝らしてきても、すでにそこにはあのつば広帽をかぶった老人の姿はなかった。
私の、産みの親…。
老人は、自分のことをそう呼んだ。
噓じゃないのかも。
身体の中心に残る性欲の疼きに耐えながら、ぼんやりと杏里はそんなことを思った。
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