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第9部 倒錯のイグニス
#167 偵察⑨
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「わかってると思うけど、使っちゃだめだよ。あの力」
ルナがもっくんに視線を向けようとするのをいち早く察して、杏里は釘を刺した。
ルナがその気になれば、この店は核ミサイルの直撃を受けたように、跡形もなく吹っ飛んでしまう。
それでは何の罪もないもっくんが、あまりに可哀相だ。
軟膏の蓋を開け、指先にひと塊、すくった。
それを自分の唇に塗りつけると、杏里は長い舌を出して、ぞろりと舐めた。
「杏里ったら、何してるの?」
ルナが驚きの声を上げた瞬間、杏里は爪先立ちしてルナの顔にそのぎらついた唇を近づけた。
抵抗するひまも与えず、ルナの唇に軟膏をなすりつける。
だしぬけにキスされ、フリーズしたようにルナが硬直した。
その隙に、ワインレッドのセーターをたくし上げ、ブラに包まれた形のいい胸をむき出しにする。
真っ白なブラを指で押し下げると、ピンクの乳首が突き立った。
「いやっ!」
ルナが身をよじって逃げるよりも早く、杏里はその先を唇でなぞり、右、左ともにたっぷりと軟膏を塗りつけてやった。
そのほんのわずかの間にも、杏里の唇は熱を持ち始めている。
唇がひりひりして、何倍にも膨れ上がったような感じがする。
まるで激辛の韓国料理を食べた直後みたいだ。
おそらくこれがロイヤルゼラチンの効果なのだろう。
が、幸いにも、軟膏の大部分は、ルナの唇と乳首に移ってしまっていた。
ハンカチで唇を拭い、ルナの様子をうかがった。
「杏里のばかっ!」
ルナが乱暴にセーターを引き下ろし、胸を隠した。
「どう?」
杏里は手を伸ばし、そっとルナの頬に触れた。
ルナはアクアマリンの瞳をいっぱいに見開き、光沢を放つ唇をわなわなと震わせている。
「気持ちよくなってきたら、遠慮なくそう言ってね」
杏里の指が、ルナの頬をなぞり、顎から首へと下りていく。
「なんなら、声を出してもいいんだよ。ここには、私たちしかいないんだから」
初め、ルナは口を一直線に引き結び、懸命に何かに耐えているようだった。
やがて目尻に透明なしずくがふくれ上がると、ツーッと糸を引いてシャープな頬を流れた。
「どうしたの?」
顎の下を人差し指の腹で撫でながら、杏里はねっとりとした口調でささやいた。
「もしかして、ルナ、感じてるんじゃないの? なのに、我慢してる?」
「だ、だめだよ…。こんなの」
幼児がいやいやするように、ルナがゆるゆると首を振った。
そのくせ、訴えかけるような眼で、杏里を見詰めている。
その瞳に色濃く浮かんでいるのは、悲しみ、そして、渇望だ。
「薬で、こんな気分になるなんて、間違ってる…」
「こんな気分って、どんな気分なの?」
ルナが小刻みに身体を震わせ始めたのを見て取って、杏里はその手をそっと握ってやった。
「あ」
ルナがぴくりと身悶える。
「だめだったら」
言葉とは裏腹に、ルナが杏里の手首を握り、ぐいと胸元に引き寄せた。
そして自分の胸に強く押しつけると、ふうっと深いため息をついた。
杏里の手を胸の谷間に挟み込み、肘の内側で押しながら、左右から乳房を押しつけてきた。
「ルナ、私がほしいんだ」
されるるがままにルナの乳房の感触をセーター越しに楽しみながら、意地悪な口調で、杏里は言った。
「ロイヤルゼラチンが効いてきたんだね? それで、私としたくてたまらなくなっちゃったんだ」
「ち、ちがう…」
顔を背けて否定しながらも、ルナは杏里の右手を放そうとしない。
「じゃあ、これはどうしたの? ジーンズのここ、染みができてるよ?」
杏里が空いたほうの手を伸ばし、ルナのぴっちりしたジーンズの股間に触れた瞬間だった。
「やめて! トイレ! トイレはどこ?」
ルナが弾かれたように飛びのいた。
「トイレなら、その奥よ。試着室の前の廊下の突き当り」
もっくんの言葉が終わらぬうちに、片手で胸を、片手で股間を押さえて飛び出していった。
乱暴にドアが開閉する音。
そして、水を流す音がそれに続いた。
「信じられない」
ルナが消えた廊下のほうに目をやって、もっくんがつぶやいた。
「純情だねえ。あれだけの美少女なのに、あの子、バージンに違いないよ。まったく、杏里ちゃんのセフレにしておくにはもったいないよねえ」
ルナがもっくんに視線を向けようとするのをいち早く察して、杏里は釘を刺した。
ルナがその気になれば、この店は核ミサイルの直撃を受けたように、跡形もなく吹っ飛んでしまう。
それでは何の罪もないもっくんが、あまりに可哀相だ。
軟膏の蓋を開け、指先にひと塊、すくった。
それを自分の唇に塗りつけると、杏里は長い舌を出して、ぞろりと舐めた。
「杏里ったら、何してるの?」
ルナが驚きの声を上げた瞬間、杏里は爪先立ちしてルナの顔にそのぎらついた唇を近づけた。
抵抗するひまも与えず、ルナの唇に軟膏をなすりつける。
だしぬけにキスされ、フリーズしたようにルナが硬直した。
その隙に、ワインレッドのセーターをたくし上げ、ブラに包まれた形のいい胸をむき出しにする。
真っ白なブラを指で押し下げると、ピンクの乳首が突き立った。
「いやっ!」
ルナが身をよじって逃げるよりも早く、杏里はその先を唇でなぞり、右、左ともにたっぷりと軟膏を塗りつけてやった。
そのほんのわずかの間にも、杏里の唇は熱を持ち始めている。
唇がひりひりして、何倍にも膨れ上がったような感じがする。
まるで激辛の韓国料理を食べた直後みたいだ。
おそらくこれがロイヤルゼラチンの効果なのだろう。
が、幸いにも、軟膏の大部分は、ルナの唇と乳首に移ってしまっていた。
ハンカチで唇を拭い、ルナの様子をうかがった。
「杏里のばかっ!」
ルナが乱暴にセーターを引き下ろし、胸を隠した。
「どう?」
杏里は手を伸ばし、そっとルナの頬に触れた。
ルナはアクアマリンの瞳をいっぱいに見開き、光沢を放つ唇をわなわなと震わせている。
「気持ちよくなってきたら、遠慮なくそう言ってね」
杏里の指が、ルナの頬をなぞり、顎から首へと下りていく。
「なんなら、声を出してもいいんだよ。ここには、私たちしかいないんだから」
初め、ルナは口を一直線に引き結び、懸命に何かに耐えているようだった。
やがて目尻に透明なしずくがふくれ上がると、ツーッと糸を引いてシャープな頬を流れた。
「どうしたの?」
顎の下を人差し指の腹で撫でながら、杏里はねっとりとした口調でささやいた。
「もしかして、ルナ、感じてるんじゃないの? なのに、我慢してる?」
「だ、だめだよ…。こんなの」
幼児がいやいやするように、ルナがゆるゆると首を振った。
そのくせ、訴えかけるような眼で、杏里を見詰めている。
その瞳に色濃く浮かんでいるのは、悲しみ、そして、渇望だ。
「薬で、こんな気分になるなんて、間違ってる…」
「こんな気分って、どんな気分なの?」
ルナが小刻みに身体を震わせ始めたのを見て取って、杏里はその手をそっと握ってやった。
「あ」
ルナがぴくりと身悶える。
「だめだったら」
言葉とは裏腹に、ルナが杏里の手首を握り、ぐいと胸元に引き寄せた。
そして自分の胸に強く押しつけると、ふうっと深いため息をついた。
杏里の手を胸の谷間に挟み込み、肘の内側で押しながら、左右から乳房を押しつけてきた。
「ルナ、私がほしいんだ」
されるるがままにルナの乳房の感触をセーター越しに楽しみながら、意地悪な口調で、杏里は言った。
「ロイヤルゼラチンが効いてきたんだね? それで、私としたくてたまらなくなっちゃったんだ」
「ち、ちがう…」
顔を背けて否定しながらも、ルナは杏里の右手を放そうとしない。
「じゃあ、これはどうしたの? ジーンズのここ、染みができてるよ?」
杏里が空いたほうの手を伸ばし、ルナのぴっちりしたジーンズの股間に触れた瞬間だった。
「やめて! トイレ! トイレはどこ?」
ルナが弾かれたように飛びのいた。
「トイレなら、その奥よ。試着室の前の廊下の突き当り」
もっくんの言葉が終わらぬうちに、片手で胸を、片手で股間を押さえて飛び出していった。
乱暴にドアが開閉する音。
そして、水を流す音がそれに続いた。
「信じられない」
ルナが消えた廊下のほうに目をやって、もっくんがつぶやいた。
「純情だねえ。あれだけの美少女なのに、あの子、バージンに違いないよ。まったく、杏里ちゃんのセフレにしておくにはもったいないよねえ」
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