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第9部 倒錯のイグニス
#153 傀儡の正体②
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身体をくねらせながら、怪物が美穂の皮を脱ぎ捨てていく。
それは、さながら巨大な芋虫が脱皮するような有様だ。
びりびりに破れた皮の下から現れたのは、世にも醜い生き物だった。
肉色の長い手足と頸は、それ自体が体節を備えた蛆虫のようである。
頭髪のない丸い顔には、真ん丸の赤い目とイソギンチャクのような形の口が開いている。
丸裸の身体の胸から腹にかけてびっしりと隙間なく体表を覆い尽くしているのは、やけどの痕のようなクレータ状の吸盤だ。
その姿は、重人たちの力を借りて、いつか杏里が屠った美里の変異体に似ているようだった。
太い腸のような腕が伸縮して、じりじりと杏里の身体を引き寄せていく。
逃れるには、相手の力が強すぎ、また杏里自身の体調が悪すぎた。
まだ治癒が完全に終わっていない。
だから手足に力が入らないのだ。
身体の下に杏里を引きずり込むと、全身の吸盤を波打たせて、怪物が抱きついてきた。
杏里のふたつの乳房に、へそに、陰部に、それぞれ別々の吸盤が吸いついてくる。
そして、最後の仕上げとばかりに、丸い大きな口で唇を塞がれた。
ものすごい吸引力だった。
「ああ…ん」
身体中の体液を搾り取られるような勢いに、杏里は意識せず、恍惚となった。
たちまちのうちに乳首が硬く尖り、蜜壺から熱い汁があふれ出す。
リングに締めつけられた陰核は、すでにそら豆ほどのサイズにまで肥大してしまっている。
だが、それが、逆に功を奏したようだった。
「あふっ」
5秒と経たず、怪物が小刻みに震え始めた。
杏里の”エキス”を一度に吸い上げにかかったせいで、中毒症状を起こしたのだろう。
「ぐあ…」
真ん丸の眼球が、くるりと裏返った。
「ぐふっ」
怪物の口が離れ、いったん吸い込んだ杏里の唾液を、大量に吐き出した。
気がつくと、手首に巻きついた腕がゆるんでいた。
今よ!
腕を突っ張って、べりべりと吸盤をはがしていく。
剥がれる時、強く乳首を吸われて杏里は危うく声を漏らしそうになる。
それでもなんとか化け物の身体を押しのけると、匍匐前進するように杏里はリングの下から這い出した。
「杏里!」
手を伸ばしてきたのは、スリムな肢体の少女である。
黄金色の髪にアクアマリンの瞳。
ルナだった。
「どうした? そんなところで何をしている?」
杏里を引き起こし、その肩を抱きしめると、ルナが言った。
「こ、この下に、外来種が…。美穂の身体を乗っ取ってたの」
息も絶え絶えに、杏里は答えた。
ルナが来てくれた。
その認識に、安心感がお湯のように胸の中に広がるのがわかった。
「なんだって?」
ルナが綺麗な眼を見開いた。
その瞳に、理解の色が浮かぶのは早かった。
「わかった。後は任せろ」
杏里を引きずるようにしてリングから離れると、大きく足を開いて向き直り、腰のあたりで両のこぶしをぎゅっと握りしめた。
そうしてルナが、長い髪ごと首を素早く打ち振った瞬間だった。
目に見えない巨象の脚に踏まれでもしたかのように、中央からだしぬけにリングがぐしゃりと潰れた。
「わっ!」
「な、なんだ?」
リングの上でふたりがかりでふみを組み伏せていた純と咲良が、ふみの巨体と一緒に転げ落ちてきた。
それでもルナは念動力を止めようとしない。
ぐしゃり。
リングが次々と折りたたまれ、サイコロみたいな立方体へと変わっていく。
サイコロのそこここから血がにじんでいるのは、その中心に捕らえられたあの怪物が、ひしゃげ、挽肉に変えられた証拠に違いない。
「くそったれ」
最後に残った、一辺50センチほどの立方体をにらみつけ、吐き捨てるようにルナがつぶやいた。
それは、さながら巨大な芋虫が脱皮するような有様だ。
びりびりに破れた皮の下から現れたのは、世にも醜い生き物だった。
肉色の長い手足と頸は、それ自体が体節を備えた蛆虫のようである。
頭髪のない丸い顔には、真ん丸の赤い目とイソギンチャクのような形の口が開いている。
丸裸の身体の胸から腹にかけてびっしりと隙間なく体表を覆い尽くしているのは、やけどの痕のようなクレータ状の吸盤だ。
その姿は、重人たちの力を借りて、いつか杏里が屠った美里の変異体に似ているようだった。
太い腸のような腕が伸縮して、じりじりと杏里の身体を引き寄せていく。
逃れるには、相手の力が強すぎ、また杏里自身の体調が悪すぎた。
まだ治癒が完全に終わっていない。
だから手足に力が入らないのだ。
身体の下に杏里を引きずり込むと、全身の吸盤を波打たせて、怪物が抱きついてきた。
杏里のふたつの乳房に、へそに、陰部に、それぞれ別々の吸盤が吸いついてくる。
そして、最後の仕上げとばかりに、丸い大きな口で唇を塞がれた。
ものすごい吸引力だった。
「ああ…ん」
身体中の体液を搾り取られるような勢いに、杏里は意識せず、恍惚となった。
たちまちのうちに乳首が硬く尖り、蜜壺から熱い汁があふれ出す。
リングに締めつけられた陰核は、すでにそら豆ほどのサイズにまで肥大してしまっている。
だが、それが、逆に功を奏したようだった。
「あふっ」
5秒と経たず、怪物が小刻みに震え始めた。
杏里の”エキス”を一度に吸い上げにかかったせいで、中毒症状を起こしたのだろう。
「ぐあ…」
真ん丸の眼球が、くるりと裏返った。
「ぐふっ」
怪物の口が離れ、いったん吸い込んだ杏里の唾液を、大量に吐き出した。
気がつくと、手首に巻きついた腕がゆるんでいた。
今よ!
腕を突っ張って、べりべりと吸盤をはがしていく。
剥がれる時、強く乳首を吸われて杏里は危うく声を漏らしそうになる。
それでもなんとか化け物の身体を押しのけると、匍匐前進するように杏里はリングの下から這い出した。
「杏里!」
手を伸ばしてきたのは、スリムな肢体の少女である。
黄金色の髪にアクアマリンの瞳。
ルナだった。
「どうした? そんなところで何をしている?」
杏里を引き起こし、その肩を抱きしめると、ルナが言った。
「こ、この下に、外来種が…。美穂の身体を乗っ取ってたの」
息も絶え絶えに、杏里は答えた。
ルナが来てくれた。
その認識に、安心感がお湯のように胸の中に広がるのがわかった。
「なんだって?」
ルナが綺麗な眼を見開いた。
その瞳に、理解の色が浮かぶのは早かった。
「わかった。後は任せろ」
杏里を引きずるようにしてリングから離れると、大きく足を開いて向き直り、腰のあたりで両のこぶしをぎゅっと握りしめた。
そうしてルナが、長い髪ごと首を素早く打ち振った瞬間だった。
目に見えない巨象の脚に踏まれでもしたかのように、中央からだしぬけにリングがぐしゃりと潰れた。
「わっ!」
「な、なんだ?」
リングの上でふたりがかりでふみを組み伏せていた純と咲良が、ふみの巨体と一緒に転げ落ちてきた。
それでもルナは念動力を止めようとしない。
ぐしゃり。
リングが次々と折りたたまれ、サイコロみたいな立方体へと変わっていく。
サイコロのそこここから血がにじんでいるのは、その中心に捕らえられたあの怪物が、ひしゃげ、挽肉に変えられた証拠に違いない。
「くそったれ」
最後に残った、一辺50センチほどの立方体をにらみつけ、吐き捨てるようにルナがつぶやいた。
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