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第9部 倒錯のイグニス

#148 ふみ②

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 舌を噛み切られるのは、これが初めてではない。
 同じことを、本部での死闘の際、零にやられたばかりである。
 だが、あの時と異なるのは、感じる快感の強さだった。
 タナトスの場合、痛みが閾値を超えると、精神を守るために、自然とそれが快感に置換される。
 今の杏里は、その機能が性露丸によって倍化しているのだ。
 痛みがひどければひどいほど、快楽が強烈なものになる。
 だから杏里は、口から血を吐き出し続けながら、今にも悶絶しかねないありさまだ。
 千切れた舌先が疼いてたまらない。
 まるで口の中が膣になったかのような名状しがたい感覚に、後頭部が痺れたようになってしまっている。
「リクエストはないのかい? じゃあ、あたしの好みで行くよぉ」
 涎を垂らしながら、杏里の上に馬乗りになったふみが、胸に顔を近づけてきた。
「あふっ!」
 杏里が反り返って痙攣したのはほかでもない。
 ふみがいきなり、犬歯で右の勃起乳首を噛みちぎったからだった。
 乳首をくちゃくちゃと噛んで味わいながら、ふみがグローブのような手で杏里の傷ついた乳房を搾った。
 傷口から噴き出したのは、体液と鮮血の入り混じったピンク色の液体だ。
 乳首の痕に吸いついて、ふみがごくごくとうまそうにそれを飲み干した。
 乳房がしぼんでしまうほど、最後の一滴まで飲み尽くす。
 盛り上がっていた杏里の乳房は今やすっかり弾力を失い、胸板の上でスライムのように扁平になってしまっている。
 右の乳房が空になると、今度は左の乳首を噛みちぎり、同じことをし始めた。
 気の遠くなるような快感に襲われ、杏里は米つきバッタのように跳ね、のたうち、膣から淫汁を垂れ流した。
「うはあ、もう、ぐっちょぐちょだねえ」
 杏里の脚をMの字に立たせ、限界までこじ開けると、股の間をのぞき込んで、舌なめずりしながらふみが言った。
「何本でも入っちゃいそうだねえ。どうれ、試してみようか、1本、2本、3本…」
 ふみのカブトムシの幼虫みたいに太い指が、次から次へと杏里の膣に押し込まれていく。
 やがて5本の指すべてをめり込ませると、
「すごーい、まだ入るよ、ほら、ほら、ほらあ!」
 ついに手首までを膣に突っ込んで、勝ち誇ったように叫んだ。
 ただのフィストファックなら、杏里も経験済みである。
 それどころか、美里にはスカルファックまでされたことがあるほどだ。
 だが、ふみのフィストファックは、それだけでは済まなかった。
 杏里の股間にハムのように太い手首をめり込ませたまま、杏里の身体をその腕1本で持ち上げにかかったのだ。
「だ、だめ! 杏里、壊れちゃう!」
 あまりの荒療治に束の間意識が戻り、杏里は叫んだ。
 骨盤が悲鳴を上げた。
 身体の芯に、異物がみっしりと押し込まれている。
 杏里は今や、ふみの右腕に串刺しにされた案山子のようなものだった。
 口と両の乳房から鮮血を滴らせた、血まみれの肉でできた案山子。
 それが今の杏里だった。
 全体重が膣にかかり、丸太のようなふみの腕がずぶずぶと躰の中に分け入ってくる。
 括約筋が緩み、隙間からとめどなく淫汁が滴った。
 ふみの腕が透明な体液でべとべとになっていく。
 それをうまそうに舐め回しながら、ふみは片手で高々と裸の杏里を持ち上げる。
「杏里!」
 遠くで誰かが悲鳴を上げている。
 それが純の声なのか、ルナの声なのか、もう杏里にはわからない。
 ふみが腕を突き上げると同時に膣の中で手を開き、指が子宮壁を突き破る。
 その瞬間、すさまじいオルガスムスが、杏里の全身を貫いた。
 そして、ヒューズが飛ぶようにぷっつりと意識が途絶え、やがて深い闇がすっぽりと杏里を呑み込んだ。
 

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