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第9部 倒錯のイグニス

#139 麻衣③

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 身体が宙に浮いた。
 麻衣に投げ落とされたのだと頭で認識した時には、すでに杏里は胸からマットに叩きつけられていた。
 自重で乳房がつぶれ、むき出しの乳首がこすれてちぎれそうにねじれるのが分かった。
「うう、くっ」
 それでも両手を突っ張って、懸命に立ち上がろうとする杏里。
 そこに、間髪を入れず、麻衣の肘が落下した。
 腰のくぼみに強烈なエルボードロップを喰らい、杏里の身体が激しく跳ね上がる。
「はは、ザマないね。プロレスをなめんな、このメス豚が!」
 杏里の背中で身体を反転させ、麻衣が両足を抱え上げた。
 束の間、乳が揺れ、裏側の柔らそうな部分までが露わになる。
 逆海老固めが決まったのだ。
「いやっ、放して! 痛いったら!」
 苦痛に顔をしかめ、ロープに向かって手を伸ばす杏里。
 いくらタナトスとはいえ、受けたばかりの苦痛を快感に変換できるようになるまでには、多少時間がかかる。
 その意味では、麻衣の攻撃は、あまりにも迅速だった。
 次から次へと痛みがやってくる。
 最初の痛みが快感に変わる頃に、更なる苦痛が加わるのだ。
 これでは打つ手がない。
 攻撃を喰らうたびに、体力だけが消耗していく。
 麻衣が渾身の力を込めて、杏里の腰を捻じ曲げる。
「エロいな、なんだこのユニフォームは。穴が開いて、あそこが丸見えじゃないか」
 せり上がった杏里の股間を目の当たりにして、麻衣が素っ頓狂な声を上げた。
「しかも、ぐっしょり濡れてるじゃんかよ。おまえ、痛めつけられて、興奮してるのか?」
 舐めて。
 その声を聴きながら、杏里は心の中で祈った。
 お願い、一度でいいから、そこを舐めて。
 そうすれば、私…。
 が、その願いも空しく、麻衣は杏里に苦痛を与えることを選んだようだ。
「うらあああっ!」
 杏里の背骨が気味の悪い音を響かせて軋み、鈍い痛みが下半身に広がっていく。
 ああ、せっかくのチャンスだったのに…。
 でも、ここは耐えなきゃ。
 奥歯を食いしばり、杏里はマットに頬を押しつけた。
 あう…ああ…。
 しばらく苦痛の時が続いた。
 どれほど時間が経ったのか。
 ばたんと、杏里の左足がマットに落ちた。
「ちぇ、つるつる滑りやがる」
 ふいに麻衣が吐き捨てるように言い、攻撃を右脚1本に替えてきた。
 滑り落ちた左脚をあきらめて、片逆海老固めに切り替え、杏里の下肢を斜めにひねり上げる。
 その手が、また滑った。
「く、これでもだめか」
 麻衣が舌打ちした。
 ようやく、身体の表面を覆った杏里の防護液が効いてきたようだった。
 摩擦が目に見えて減ってきたのに違いない。
 おかげで少し楽になった。
 耐えて。杏里。
 心の中で、自分に言い聞かせる。
 もう少し…。
 もう少しで、チャンスが巡ってくるはずだから…。
「こうなったら」
 腹立たしげにつぶやくと、麻衣は杏里を仰向けにして、両足を複雑な形に絡めてきた。
「気絶するまで、締めてやる」
 今度は足四の字固めである。
 右足を力任せに引っ張られた。
 それに従い、麻衣の股間が杏里の股の間に割り込んできた。
 来た。
 杏里は眼を見開いた。
 この時を待っていたのだ。
 力を抜き、麻衣にされるがまま、引き寄せられていく。
 すぐに、股間と股間が密着した。
 図らずも麻衣が看破したように、杏里の股間ではファスナーが開き、濡れた陰部がむき出しになっている。
 その肉の吸盤が、ユニフォームの上から麻衣の秘所にぴたりと貼りついたのだ。
 麻衣が力を入れるのに比例して、杏里の股間にはさざ波のように快感が広がっていく。
 リングで半強制的に勃起状態にさせられている陰核が、ざらついた麻衣のユニフォームにこすれてたまらなく気持ちがいい。
 待つほどもなく、蜜壺の中が湧き出した熱い蜜でいっぱいになり、”唇”のはざまから溢れ出すのがわかった。
「お、おい、こ、これは、なんだ?」
 驚いたように、麻衣が顔を上げた。
 戸惑いの表情で、杏里を見つめてくる。
 気のせいか、頬が赤い。
 目も心なしか、潤んできているようだ。
「ふふっ」
 杏里は妖艶に微笑んだ。
「くそ…」
 麻衣は力をゆるめようとしない。
 杏里の股間に己の股間を狂おしく擦りつけ始めたのだ。
「気持ち…いい」
 杏里はうっとりと、ささやいた。
「もっと、して。もっと、強く」
「な、なんだと?」
 麻衣の動きが速くなる。
 まるでオナニーを覚えたばかりの猿だった。
 荒い息を吐きながら、狂ったように杏里の股間に己の腰を捻じ込んでくる。
 だが、持久戦では杏里のほうが上だった。
「あうっ」
 激しさが最高潮に達したかと思うと、突然ひと声喘いで、麻衣の動きが止まった。
 麻衣はわずかに痙攣したようだった。
 チャンス。
 持ち前の身体の柔らかさにものを言わせて、杏里はおもむろに上半身を持ち上げた。
 両手を伸ばし、麻衣の頬をはさむと、躰をふたつに折り、ぐっと顔を近づけていく。
「お口を開けて」
 甘えるような声で、杏里は言った。
「そうして、舌を思いっきり、突き出すの」
「な、何を…?」
 尚も抵抗の意志を示そうとする麻衣の口に、有無を言わさず唇を押しつける。
 舌をこじ入れ、麻衣の舌に絡めて、力いっぱい吸ってやる。
 麻衣の足がゆるんだ。
 四の字固めが解けた。
 杏里は自由になった躰をフルに利用して、麻衣のやせぎすな肉体をしっかりと抱き締めた。
 杏里の汗と体液が、麻衣のユニフォームにじわじわとしみこんでいく。
「や、やめ、ろ…」
 麻衣が熱に浮かされたような口調で、つぶやいた。
 腕をほどくと、杏里は麻衣の肩を軽く押した。 
 麻衣がゆっくりとマットに倒れていく。
「仕上げだよ」
 仰向けになった麻衣の上にまたがって、杏里は言った。
 そのまま麻衣の腹から胸へと、己の濡れそぼった陰裂を這わせていく。
 杏里の尻が通った後に、ナメクジの這った軌跡のような虹色の皮膜ができる。
 終着点は、麻衣の口だった。
 杏里は、麻衣の顔の上に座り込んだ。
 半ば開いたままの麻衣の口に、むき出しの陰唇を押しつける。
 じゅるり。
 汁がほとばしった。
 麻衣の喉が鳴った。
 麻衣が白目を剥き、果てるのが、振動として伝わってくる。
「レフリー、フォールを」
 麻衣の顔の上に座り込んだまま、振り向きもせず、杏里は言った。
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