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第9部 倒錯のイグニス

#102 淫乱美少女動画③

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「準備完了ですよ」
 大山の長広舌をさえぎったのは、アフロヘアにバンダナを巻いた、短躯の小男だった。
 Tシャツにダメージジーンズ。
 若作りだが、ぽっこり出た下腹は明らかに中年の証拠だろう。
「ほう、この子がモデルさん? うは、こりゃすごい、なんてエロいんだ」
 サングラス越しに杏里を見て、口笛を吹きそうに唇を尖らせた。
 どうやらこの男、演出家のような役割らしい。
「お話がお済みでしたら、さっそく撮影に入らせていただきたいんですが」
 まだ話し足りなそうな大山相手に、ずけずけとそんなことを言ってのけた。
「お、おお。それもそうだな」
 大山が名残り惜しげに杏里の身体を放し、中央の席に戻っていく。
「わ、私、どうすれば…?」
 大人の男たちに見つめられ、杏里は落ち着かない。
「とにかくエロい動画を撮れってことなんで…。まず、その教壇にもたれかかってくれないかな」
 アフロの演出家が指図すると、脚立に立てたデジタルカメラで、カメラマンが杏里の動きを追い始めた。
「こう…ですか?」
 言われた通りにすると、
「もう少し腰を上げて、心持ち足を開いて…そう、いいね。パンティが見えてきた」
 杏里の制服のスカートは、タナトス仕様の超マイクロミニである。
 少しずり上がっただけで、下着のVゾーンがのぞいてしまうのだ。
「うん、そのまま、足を組んで。そして、ちょっとずつ、開いて。ああ、いいね、いい。うん。もう、モロ見えだよ。あ、そこで少し、パンティを引っ張り上げて、前を喰い込ませてくれないかな]
「こ、こう…ですか?」
 スカートと下腹の隙間に手を入れ、言われるがままに、指先で下着を上に引っ張った。
「そう、それでいい。筋が浮き上がってる。うはあ、しかし、なんてつるつるしてるんだ。そのパンティ、薄さといい、質感といい、センス抜群だね。しかも、見たところ、邪魔な陰毛の凸凹もない。ひょっとして、君、毎日お風呂で、下の毛を剃ってるのかな?」
「そんなこと…してません」
 杏里はますます赤くなる。
 穴があったら入りたい、とはこのことだ。
「へえ、じゃ、生まれながらのパイパンなんだね。素敵だ。理想のお股だよ。アンダーヘアなんて、醜いだけで、無いに越したことはないからね。それにしても、君って本当に14歳? そのへんの下手なAV女優やグラドルより、もう、ずっとずっとエッチじゃん」
「戸籍上はな」
 観客席から、大山が野太い声で、杏里の代わりに答えた。
「だが、心配はいらん。あるよんどころのない事情から、この子には何をさせても、児童ポルノ禁止法にはひっかからないのだ。もちろん、児童福祉法違反にもならんよ」
 笑いを含んだ口調である。
 屈辱で、杏里は耳たぶまで赤くなった。
「法律なんてクソですよ。俺はいい写真が獲れればそれでいいんです。その点、この子はまさしく1000年にひとりの逸材だ。たったこれだけのパンチラで、こんなにそそるなんて。みなさんも、内心、そう思ってますよね? ここにいる全員、今のですでに勃起しちゃったんじゃないですか?」
「減らず口はいいから、撮影を続けたまえ」
 最高齢らしき老人が、白い眉を寄せて顔をしかめた。
「はいはい、わかってます」
 男が茶目っ気たっぷりに頭を掻いた。
「では、次に、教壇の上に座って。あ、ちょっと高いから、手を貸すよ」
「ここに、座る?」
 杏里は自分のもたれている教壇に目をやった。
 由香からの高さが1メートル近くある教壇は、ひょいと腰かけられるほど低くない。
 しかも、上は面積が狭く、ひどく座り心地が悪そうだ。
「座って、何をするんです?」
「あれ? 聞いてないのかい?」
 男が杏里と大山を交互に見た。
「初めは、いつものようにすればよい」
 男のもの問いたげな視線に応えるように、重々しく大山が答えた。
「いつもの…ように?」
 嫌な予感を覚え、杏里は酒焼けしたような大山の赤ら顔を見た。
「隠さんでもいい。その成熟した身体、火照って火照ってオナニーなしではとてもやっていけないだろう。私ぐらいになるとな、大方の予想はつくんだよ。笹原君、君が毎晩、寝る前に鏡を見ながらオナニーに耽っていることくらいはな」
「そ、そんな…」
 杏里は口ごもった。
 否定の言葉は出てこなかった。
 大山の言葉は、まさに図星だったからである。



 

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