激甚のタナトス ~世界でおまえが生きる意味について~【激闘編】

戸影絵麻

文字の大きさ
上 下
83 / 463
第9部 倒錯のイグニス

#82 悪夢のチーム練習①

しおりを挟む
「大丈夫? 杏里? どうしたの? 何があったのさ?」
 純の声で、杏里は意識を取り戻した。
「ううん…」
 うっすらと目を開けると、メンバーたちが輪になって上からのぞきこんでいた。
 チョコレート色の肌とクリクリした目がトレードマークの、黒人少女アニス。
 肩幅が広く、腕の長い朝倉麻衣。
 雄牛を思わせる巨体の持ち主、飯塚咲良。
 中背ですらりとした肢体の、権藤美穂。
 そして、一番小柄な神崎トモ。
 その後ろで、ふみと璃子が身体を寄せ合ってにやにや笑っている。
「小百合先生も伸びちゃってるしさ。いったい全体、あなたたち、どんな練習してたわけ?」
 不審そうな純に、
「デスヨネ、アラアラ、マッタク、ドウシマショウ?」
 アニスが片言の日本語で同調した。
 体を起こして周囲を見回すと、なるほど、隣に小百合が大の字になってぐうぐういびきをかいている。
 杏里はどうやら、璃子に陰核をつままれて引きずり回された挙句、気絶して小百合の横に寝かされていたらしい。
「でも、なんか、この子、匂うね。お花の香りとチーズの匂いが混ざったみたいな、すごく変わった匂いがする」
 鼻をくんくんさせながら、不躾な口調で麻衣が言った。
「それにさ、このエロい恰好、なんなの? 乳首飛び出てるなんて、信じられないんだけど。だいたい、どうしてこんな微妙なとこに穴なんか開いてるわけ?」
 比較的麻衣と仲のいい咲良が、大きな体を乗り出して、杏里のレオタードをしげしげと見つめてくる。
「汗かいてるのかな? レオタードもべたべたに濡れてるしさ」
「小百合先生が、興奮のあまり噛みついて、つい穴開けちゃったとか」
 美穂がおどけてまぜっかえすと、同じ1年生のトモがくすくす笑い出した。
「かもねえ。案外、小百合先生、レズビアンだったりして」
「そういえば、名前に”百合”って入ってるもんね」
 メンバーたちにじろじろ見られて、杏里は穴があったら入りたい気分だった。
 よりによって、このタイミングでみんな押しかけてこなくても…。
 マットも衝立で囲まれた簡易更衣室も、どちらも杏里の垂れ流した淫汁でびしょ濡れなのだ。
 愛液の海はまだろくに乾いておらず、その正体が何なのかは女子であるならいずれ気づいてしまうことだろう。
「純と咲良で先生を保健室に運んで。あとのメンバーは、体育館に集合ね。校長から、レスリング部発足のお祝いに、新しいユニフォームが届いてる。みんなそろったら、それを配るよ」
 杏里を囲んでざわめいているメンバーたちに、璃子がてきぱきと指示を出した。
 新しいユニフォームと聞いて、杏里を除く全員が、やった、と感嘆の声を上げた。
 ほかのメンバーたちが出て行くと、いまだ床に腰をつけて座り込んだままの杏里の所に、ふみを従えた璃子が近づいてきた。
 マスクを取って、その逆三角形の小顔を外にさらしている。
「いつまでボーッとしてるんだ。次は体育館でチーム練習だよ。ペアをつくって、柔軟体操から組み手、固め技、タックルの練習だ。ちなみに、杏里、おまえの相棒はこいつだよ。本人のたっての希望でね」
 含み笑いをしながら璃子が言うと、その肩越しにふみがにたあっと笑ってみせた。
「杏里ちゃん、よかったねえ。これで、やっとふたりきりに、なれるねえ」
 杏里はその痴呆のような肉厚の顔を見上げ、げんなりとなった。
 璃子の次は、ふみ。
 きょうはまさに、最悪の一日だ…。
 心の底から、そう思ったのである。



しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

ナースコール

wawabubu
青春
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)

チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。 主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。 ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。 しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。 その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。 「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」 これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。

処理中です...