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第9部 倒錯のイグニス

#76 基礎訓練 応用編⑧

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 小百合は杏里のくびれた腰にしがみつき、訴えかけるように半ば口を開いている。
 彼女が何を望んでいるのか。
 その答えはすでに歴然としていた。
 筋肉の盛り上がった小百合の両肩に手をかけると、杏里は軽く前に押した。
 正座したまま、小百合が上体を仰向けに倒していく。
 小百合が身体をふたつに折り、後頭部をマットにつけるのを見届けると、杏里は無言でその上にまたがった。
 レオタードのクロス部分からはみ出た杏里の秘肉は、水を吸ったスポンジのようにぐっしょり濡れている。
 透明な糸を引くその”唇”を、小百合のむき出しの腹に押しつけた。
 そのまま、徐々に体を胸のほうへとずらしていく。
 杏里が動くと、その後にナメクジが這ったような銀色の筋ができた。
 充血した大陰唇が摩擦に反応し、淫汁を滴らせながら小百合の肌を這い進む。
 6つに割れた腹筋から岩盤のように発達した胸筋へとたどりつくと、コチコチに尖った小百合の乳首が陰核にぶつかった。
 ブラをずらして真っ黒な乳首を露わにすると、杏里はその上に膣口をかぶせ、円を描くように腰を動かした。
 肉食貝の外套膜のように小陰唇が開き、そら豆ほどの大きさの乳首にまといつく。
「ああう…い。いい」
 歯を食いしばって、小百合がうめく。
 淫汁で乳房をべたべたにすると、杏里は軽く腰を持ち上げて、小百合の顔の真上まで移動した。
「先生、これがほしかったんでしょう?」
 ねっとりした声で、ささやいた。
 がくがくとうなずく小百合。
 キスをせがむ幼児よろしく、海鼠のような紫色の唇を突き出している。
 慎重に狙いを定め、股の中央に開いた”穴”でそれを包み込むように腰をしずめていく。
 唇に触れたとたん、杏里のヴァギナがうねるようにうごめいた。
 大陰唇と小陰唇が独立した生き物のように開き、小百合の顔に覆いかぶさった。
 大量の淫汁がにじみ出し、見る間に小百合の頬を伝い落ち、耳の穴にまで入っていった。
 杏里のヴァギナに口をふさがれ、小百合がくぐもった声でまたうめいた。
 巨木のような腰が2度3度と跳ね上がったかと思うと、小百合のビキニパンティの前に黒い染みが広がり始めた。
 杏里は腕を伸ばし、小百合の肩をマットに押しつけた。
 頭の中で、「1」とカウントする。
「先生、フォールですよ」
 小百合は杏里の膣内に舌をつっこんだまま、気絶していた。
 白目を剥いたまま、ぴくりとも動かない。
 ”浄化”しちゃった…。
 軽い後悔の念とともに、杏里はゆるゆると腰を上げた。
 これで小百合は、一時的な記憶喪失に陥るに違いない。
 紅白戦を前に、まずいことをしてしまった、と思う。
 学園祭のイベントまでは、タナトスとしての活動は控えようと思っていたのに。
 だが、成り行きとはいえ、起こってしまったことはもう仕方なかった。
 とりあえず、勝ったのだ。
 小百合の教えてくれた方法で。
 これが果たして汎用性のあるものなのかどうかは、色々試してみないことにはまだわからない。
 それでも、少しだけ希望が見えた気がした。
 少なくとも、無様にやられっぱなしで終わることだけは、避けられるかもしれない…。
 マットの上に小百合を残し、更衣室代わりの衝立の陰に入った。
 と、そこに人影を見出し、杏里はびくんと身体を強張らせた。
 着換えコーナーの隅にある木製の丸椅子に、璃子が座っている。
 脱色したような銀髪の下から、鋭い三白眼が杏里を見た。
「やっちまったね」
 フッと薄く笑って、璃子が言った。
「さっそく、先生を使い物にならなくしやがった」
 組んだ足をほどくと、杏里の身体すれすれに立ち上がる。
「そ、そんな…私は、ただ…」
 杏里は得体の知れぬ恐怖を覚え、とっさに胸を両手で隠した。
「とぼけたってだめさ。わかったんだよ。笹原、おまえの正体が」
 鼻と鼻がくっつくほど顔を寄せてきて、璃子が言った。
「人の精を吸いつくす、現代社会に蘇ったインキュバス。おまえも美里も、そのタナトスってやつなんだろ?」
 璃子の息は、強いミントの匂いがした。






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